のんびり道路が大魔神のごとく急変!? ギャップ萌えすぎる県内最狭険道「千葉県道269号」をゆく

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2021年01月27日 16:49  ねとらぼ

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ねとらぼ

写真中央分離帯もある立派な道へ
中央分離帯もある立派な道へ

 「酷道(こくどう)」をご存じでしょうか。道幅が狭かったり、路面が舗装されていなかったり、そもそも通行止めだったり……。一般的な国道(国が政令で指定した主要道路)というイメージからはかけ離れた国道のことを愛情と敬意を込めて示す言葉です。それと同様に、そんな状態の県道(都道府県が管理する道路)にも愛称があります。「険道(けんどう)」と呼ばれます。



【画像】突然「険道」に変化する



 これまで筆者は「地図に載っていない県道」「普通車が通るのさえ困難な幅1.7メートル制限の県道」「平均勾配13.4%、鳥居のある激坂県道」などの険道を紹介してきましたが、日本には愛すべき険道がまだたくさんあります。



 今回は険道ファンの筆者が、“千葉県最狭県道”といわれる県道「千葉県道269号大鷲木更津線(以下、県道269号)」を、2020年10月までに訪れた記録とともに紹介します。



●千葉県最狭県道といわれる「県道269号」をゆく



 京葉工業地域の一角を形成し、千葉県第2位の面積を持つ「君津市」と、東京アクアラインの着岸地で交通の要所にもなりつつある「木更津市」。県道269号はそんな県内有数の都市同士を結ぶ一般県道です。“一般”県道とは何か、詳しくは「ご存じでしたか? 県道、実は“2種類”ある」をご覧ください。



 大きな都市同士を結ぶ道路ならば、しっかり整備されているはずなのでは……? と思うのですが、県道269号は「千葉県で最も狭い県道」といわれる険道です。



 では、木更津側の国道16号と交わる桜井交差点から県道269号を愛でていきましょう。



 ロードサイド店舗が立ち並ぶ国道16号の「アオカン」にも左折方向が県道269号と書かれていました。険道は標識などに記載がなく、存在を隠されていることが多くあります。これはちょっと意外でした。



 険道は、県道とは思えない険しさもある愛すべき道路のこと。旅行者などが「県道だからちゃんとした道のはず。こっちに進もう」と進んでしまうと困ることもあり得ます。そのため、あえて案内標識に記載しないケースがあるのです。



 最初は片側2車線(4車線)の整備された快走路。正面に大きなトンネルが見えてきますが、県道269号はその直前で右折。中央分離帯もある道を進みます。そのまま住宅街の中を突っ切っていきます。



 住宅街を抜けると「館山自動車道」と交差します。この辺りの道は2009年に新道へ切り替えられたそうです。まだ険しい要素はありません。千葉県で最も狭いと聞いて訪れたのですが、もしかしてもう過去の話なのでしょうか……?



●古い集落を通る、のどかで心が落ち着く風景がすばらしい



 もしかしてもう険道ではなくなってしまったの……? こう心配した矢先に少しずつ現れてきました。館山自動車道と2回目の交差をした直後、整備された2車線道の右カーブに差し掛かるところに左に細い枝道が。そう、整備された太い道を道なりに進むのではなく、県道269号はこの枝道へ行くのです。



 この枝道に入ると急に車線が狭くなり、行き違いに気を遣うくらいの道幅になります。



 でも、この程度の狭さの道はどこにでもあります。路面の舗装もちゃんとしていますし、生活道路として全く問題はありません。県道の標識もちゃんとありました。



 県道269号は歴史のありそうな集落の中を通ってゆきます。田畑など緑が多く、心が落ち着く風景です。



 集落を過ぎると、カーブの先で丁字路に。右折方向が県道269号です。小さいながらもアオカンがあり、ここにも「(県道)269」の文字が記載してありました。これまで何度か各地の険道を巡りましたが、ここまでしっかりと存在が記されてある険道はやっぱり珍しいかもしれません。



 右折すると再び走りやすい2車線道路に。さすがは千葉県(?)、県内で最も狭いと言っても、他の険道からするとフツーの道路じゃないか……と思っていました。そう、この時までは。



●ついに正体を現した険道269号 いよいよ本格的な険道に



 だんだん民家が少なくなってきました。



 「いよいよ道幅が少し狭くなってきたかな?」と思った矢先、一切の予告なしにいきなり完全1車線に。いままでの整備された道はどこへ……。県道269号、変わり身が早すぎます。なるほど、これが千葉県で最も狭い道かっ……!



 筆者が訪れた10月は草木も茂っている季節で、人同士でもすれ違うのがやっとな部分もありました。クルマで対向車が来たら……、正直あまり考えたくなく、来ないのを切に願うのがやっとなくらいの道幅です。



 それにしてもすごい展開です。まるでトトロが出てくる森の中に迷い込んだよう。先ほどまでのよくある住宅街の道の景色がうそのように、うっそうとした雰囲気に急変しました。



 さらに進むと、道の両側が崖になっている怖い箇所もありました。まるで山の尾根のよう。しかもガードレールはなし。直線ではありますがこの緊張感! さっきまでの市街地の道がウソのようです。



 尾根を抜けても道幅はずっと1車線。このあたりが市境です。おおむね県道の右側が君津市、左側が木更津市です。



 ちなみにですが、この場所は決して山奥というわけではありません。君津の市街地から直線距離で5キロほどしか離れていません。そんな早変わりの様相に再度びっくりしてしまいます。



●まだまだ続く細い道、県道が林道よりも過酷だなんて……



 さらに進むと、右側に君津広域水道企業団の第2接合井(地下水を集めるための埋設管施設)があります。



 地図ではここを左に曲がる道もあるように書かれていたのですが、トタンの板でふさがれていました。



 不法投棄禁止と書かれたトタン板の壁を横目に進んでいくと、右側にサバイバルゲームのフィールド施設が現れました。道幅は相変わらずの片側1車線ですが……。



 このあたりで道路が二手に分かれます。道幅はどちらも変わりませんが、県道269号は右。左手は林道の「鎌倉4号線」です。林道と大して変わらない道幅の県道、すごい道です。



 なお、前述したサバゲーフィールド施設のWebサイトでは、アクセス案内として「遠回りだが道幅が広い」と林道経由の道が推奨路として紹介されていました。県道269号……。



●恐怖の600+600メートル、迫り来る急勾配+急カーブの連続 そして……



 県道269号は狭い1車線のまま急勾配+急カーブの坂を下っていきます。おぉぉ、ジェットコースターのようにくねくね。ここからいよいよ危険なので、絶対に安全運転で。



 そんな坂を下り切っても、離合できる場所はほぼゼロでした。それどころか、路肩が崩れていた箇所すらありました。対向車が来ないことを祈りながら進みます。



 そんな恐怖の約600メートル。視界が開けて民家もいくつか見えてくると気持ちは少し落ち着きます。でもまだ半分。さらに急勾配+急カーブの下り坂がまだ600メートルほど続きます。



 第2弾の急カーブは先ほどと違い、滑り止め/速度抑制を図る段差舗装がなされていました。その分注意が必要ということです。



 坂を下りきると、狭い区間は間もなく終わりです。しかし「崩落注意」の標識もある通り、抜けるまでは油断してはいけません。



 最後に草木が作る「アーチ」を抜けると、スーっと2車線のおだやかな世界に戻りました。



 さっきまでの険しい道は幻だったのか……。走行距離にして約3キロ、怒濤(どとう)の激狭区間でした。



●いきなり「険道」に急変し、元に戻る、大魔神のような愛すべき険道



 大きな都市同士を結ぶ県道であるにもかかわらず、なぜ県道269号はいきなり「険道」になるのでしょうか。恐らくは「もっと経路が短い他のルートが既にある」からです。



 スタート地点だった桜井交差点を、県道269号のルートを使わずに直進し、国道127号と県道92号を使えば、距離にして約2キロぶん、Google Mapsのルート計算時間によると8分ほど早くこの最終地点の交差点まで着きます。



 行政としても、他に短く、早く着く、そして安全なルートが既にある以上、険しい区間を整備するならば……となり、“このまま残っている”のでしょう。また県道としては1本の道路ですが、現実的な役割は木更津市側と君津市側で分かれていると思われることも、“このまま”になっている理由かもしれません。



 県道269号は、短い距離で4車線の穏やか道路から1車線のジェットコースター路に急変する「ドラマチックな展開」がある愛すべき険道。他にルートがあるので無理して通行することは勧めませんが、とても魅力的な険道でした。



(少年B)


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