福祉現場から見た「第三者の目」の重要性とは? 障害者施設に設置される虐待防止委員会に期待すること

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2021年01月27日 17:02  おたくま経済新聞

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写真福祉現場から見た「第三者の目」の重要性とは? 障害者施設に設置される虐待防止委員会に期待すること
福祉現場から見た「第三者の目」の重要性とは? 障害者施設に設置される虐待防止委員会に期待すること

 知的・精神的な障害などがある人たちが利用する福祉施設では、障害者がケアを受けながら自立のための訓練や労働を行います。しかし、施設職員が利用者である障害者を虐待してしまうケースが後を絶ちません。厚生労働省は障害者施設でのより強い虐待防止策として、2022年度から事業所に虐待防止委員会設置を義務付けました。


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 ■ 障害者を支援するはずの施設でなぜ虐待が起こるのか

 2020年12月、愛知県東浦町の障害者施設で入所者に虐待をして重傷を負わせる事件で、元臨時職員が逮捕・起訴されたという報道がありました。またその元臨時職員はほかの入所者にも虐待をしていたとして再逮捕されています。


 職員による弱者である利用者への虐待……。極めて悪質な事件で許されるものではありません。その背景にはいったい何が起こっているのでしょう。


 厚労省の手引きというものがあります。そこには虐待が行われる背景について、「密室の環境下で行われること」と、「組織の閉塞性や閉鎖性」が指摘されているとしています。他の職員の虐待行為を発見した場合、見過ごすことは大きな過失です。きちんと職員同士が倫理観を持って、支援にのぞむことはきわめて重要なことです。


■ 福祉現場から見た「第三者の目」の重要性とは?

 筆者は4年間、福祉施設で働いて来ました。障害者施設の多くは職場の閉塞性が高くなりがちです。障害者福祉施設には、サービスを提供する使用者(=ヘルパー・介護福祉士などの職員)と、それを受ける利用者がいます。職員と利用者の人数の比率は、職員が少ないところが圧倒的に多いでしょう。


 職員の人数が少なければ少ないほど、職場の閉塞性は極めて高くなります。早い話が、情報を外部に明らかにすることなく、隠匿することも可能ということです。断っておきたいのは、すべての施設がそうでは無いということです。これはあくまでも筆者の経験から来る考えです。きちんと障害者支援を、熱意を持って行っているところがほとんどです。


 職場で情報共有が取れていない、一人の職員が虐待していることを他の職員が黙認すると、事件につながる可能性は大きく高まります。たとえ虐待を受けている利用者以外の利用者が声をあげても、物的な証拠が無いことや職員数人で、虐待がされているということを否定すると事実はうやむやにできるでしょう。


 そこで重要な存在が「第三者の目」なのです。厚労省の虐待防止委員会を設置することには大きな意味があると筆者は感じます。


 小さな福祉の職場は、非常に風通しが悪いです。職員が結束を固めれば、障害者支援に大きな力を発揮できます。ですが体質としてやる気が無くなれば、支援はおろそかになりがちです。そういった意味では委員会は重要な意義を持つと期待しています。


 また、虐待のなかには保護者等が発見することができる虐待もあれば、見つけることが難しい虐待もあります。


 筆者が感じたことですが、心理的虐待と性的虐待、支援の放棄は第三者の目の届かない閉ざされた現場で行われているので、証拠をあげることが難しいです。性的虐待に関しては、はずかしめを受けたという感情から保護者等に相談できないケースが大半を占めると考えます。


 虐待をすることは決して認められることではありません。ですが虐待が繰り返される理由に、障害者が自ら声をあげることが困難であるという、つらい事情もあるでしょう。どこに相談してよいのかわからない、誰かに相談することによって職員との関係が悪くなるのではないか、といった悩みを抱えている障害者は多いと筆者は考えます。


 また、虐待を受けていても自覚や認識が必ずあるとは限りません。結果的には虐待の事実は無いとされるケースはあるでしょう。そこで第三者となる、虐待防止委員会が重要になるのです。


■ 施設職員のメンタルヘルス管理の重要性

 虐待防止委員会が障害者支援に大きな意味を持つことは声にしてきました。ですが「第三者の目」は、障害者にとってのみ重要なことではありません。職員にとっても大切なことです。


 職員の職務は障害者支援の現場で、その都度障害者に対応するだけではありません。個人個人のサービスプランの作成、利用者の家族への対応などに時間がかかり、職員の心身に余裕が無くなることもあります。その結果、ストレスがたまって利用者にあたるということは考えられます。


 虐待は絶対にあってはならないことです。ですが、職員の心のケアは虐待と密接に関わっているでしょう。このケアをすることは、福祉に関わる人にとってとても重要なこととなります。


 厚労省の手引きには、虐待発生の理由として職員のストレスについてもふれています。職員のメンタルヘルスの把握には「職業性ストレス簡易調査票」等を活用することが考えられています。障害者虐待の理由の一つには、職員の心のケアがなされていないという実態があり、メンタルヘルスの把握だけではなく、これからは心のケアも重要になるでしょう。


<参考>
障害者福祉施設等における 障害者虐待の防止と対応の手引き(令和2年10月版)(PDF)
福祉新聞「障害者施設、虐待防止の取り組み義務化へ 22年4月から」
中日新聞「別の障害者にも暴行 東浦の施設虐待、容疑で被告再逮捕」


(室崎陽光/社会福祉士)


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