ピエール瀧の出演で「助成金」不交付、映画「宮本から君へ」訴訟が結審「司法のあり方問われる」

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2021年01月27日 18:31  弁護士ドットコム

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2019年公開の映画「宮本から君へ」の助成金を不交付としたのは、違法だとして、映画の制作会社が、独立行政法人「日本芸術文化振興会」に取り消しをもとめた訴訟が1月27日、東京地裁で結審した。判決日は未定。


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「宮本から君へ」は、漫画家の新井英樹さん原作で、池松壮亮さんと蒼井優さん主演の"すさまじい人間ドラマ"だ。原告によると、日本芸術文化振興会から2019年3月、助成金(1千万円)の交付内定の通知があった。



ところが、出演者の一人であるピエール瀧さんが同年6月、麻薬取締法違反で有罪(執行猶予付き)となると、日本芸術文化振興会は同年7月、「公益性の観点から適当ではない」として不交付としたという。



●不交付処分には「根拠がない」

この処分を不服として、映画制作会社「スターサンズ」が2019年12月、取り消しをもとめて東京地裁に提訴した。



原告側は、助成金の交付に関して(1)当時は「公益性を考慮すべき」とされておらず、処分に根拠がない、(2)内定を受けてから不交付となるケースが過去に例がない、(3)裁量権の逸脱濫用で、「表現の自由」の萎縮につながる――などと主張している。



この日の結審後、原告側は東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。スターサンズ社長で、映画のエグゼクティブプロデューサーをつとめた河村光庸さんは「いかに日本の行政が、映画など文化芸術活動をぞんざいに扱っていたか、浮き彫りになった」と訴えた。



●伊藤真弁護士「適切な助成があって、表現の自由が確保される」

日本芸術文化振興会は、弁護士ドットコムニュースの取材に「裁判の内容に関することになるので、コメントは差し控える」としているが、原告側によると、被告側は「行政裁量は広い」「薬物事犯を出した映画に助成金を交付したら国民からバッシングを受ける」などと主張しているという。



原告側の弁護団の一人で、憲法問題にくわしい伊藤真弁護士は会見で「行政の裁量をコントロールしないといけないときに、憲法は重要な役割をはたす。表現の自由は、私たちが生きていくうえで重要だ。どれだけ裁判所が重視してくれるのか。司法のあり方が問われる」と述べた。



さらに、伊藤弁護士は「今日の文化芸術の表現活動は、国家から干渉を受けないだけでは保障されない。適切な助成があって、表現の自由が確保される。『金を出すかわりに口も出す』ということになると、表現内容がコントロールできるようになってしまう」と付け加えた。


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  • 助成金目的でピエール瀧にモザイクをかけ音声を変えたら作品の質が低下する。そんな映画に助成金を出すのは無駄。文句を言わずに出せば良い、作品は無罪。
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