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写真![]() 「宇宙人狼」として目下流行中の「Among Us」 |
皆さん人狼ゲームってご存じですか? 遊んだことあります?楽しいですよね、人狼。
これはちょっとした老害自慢なんですが、しんざきはもうかれこれ15年くらい人狼及び人狼系ゲームを遊んでおりまして、それなりの人狼歴があります。
初めて人狼ゲームを遊んだ、いわば人狼出身地はwebの掲示板を使って人狼を遊ぶ「人狼BBS」。
人狼BBSってゲーム内の1日が実時間と同様の24時間でして、その間ずっとBBS上で議論が続いてるんで、ハマってくるとそこらのMMOなんて目じゃないくらいの廃人ゲーになるんですよ。1日中人狼のことしか考えられない生活が1週間続くとか日常生活に支障が出るレベルで、すっかりゲームと現実の区別がつかない人狼脳になりまして、仕事の会議で「今のこの発言は黒いな……吊り占い希望の論拠に使えそうだからチェックしておこう……」とか思いながら発言をメモってたら、立派にポイントを抑えた議事録になって褒められたりしました。ビジネスに人狼は有用。
で、その後は色んな人狼クローンに手を出しつつ、「人狼BBS東京村」というオフ会を端緒にオフラインでの対面人狼ゲームにもハマりまして、人狼を遊ぶ集まりに参加させて頂いたり自分が開催したり、まあ吊ったり吊られたり食ったり食われたり、きゃっきゃ遊んでた訳なんです。
ところで最近、「SF人狼」とか「宇宙人狼」といった評判で名高い「Among Us」をようやく遊びました。前から気になってたんですが、稲作しながら兎や猪と戦うゲームに夢中になっててちょっと出遅れちゃったんですよ。
プレイしてみたらやたらめったら面白くって「これは推せるな……!!」と思った一方、これ言われてるほど人狼じゃないなーというか、人狼的な要素も持ちつつ全くの別物のゲームとして仕上がっているなーと感心したので、今日は「人狼プレイヤーから見た、Among Usと人狼の違い」を主要なテーマとしてつらつら書きたいと思った次第です。よろしくお願いします。
●「Among Us」ってこんなゲーム、という話
まず簡単に、「Among Us」についてご紹介してみたいと思います。知らない人用の予備知識ですので、「知っとるわ!!」という方は読み飛ばしてください。
ちなみに、筆者のプレイ環境がSteamで、Switch版は遊んでいないことはご了承ください。
Among Usは、要は「君たちは宇宙船乗組員だ! しかし、君たちの中に、任務を失敗させようとする妨害者が紛れ込んでいる! 妨害者を見つけ出して排除しろ!」というゲームです。分かりやすいですね。
ゲームが始まると、プレイヤーたちは宇宙船の乗組員の姿になって、色んな作業をこなしつつ生き残りを目指す「クルー」の勢力と、クルーたちを邪魔して乗組員を全滅させようとする「インポスター」の勢力に分かれます。当然「自分たちの中の誰がインポスターか」ということはクルーたちには分からないので、あの手この手でインポスターを見つけなくてはいけません。インポスターって「詐欺師」って意味らしいですね。
クルーはインポスターを全員船から追放するか、おのおのに割り振られた「タスク」と呼ばれる任務を全て達成すれば勝ち。
インポスターは、クルーたちを殺害していって自分たちの人数以下にするか、サボタージュ(妨害行為)によってクルーを全滅させれば勝ち。
ゲームが始まると、クルーたちはマップ上(宇宙船をはじめとして何種類かあります)に配置されて、それぞれ割り振られたいろんなタスクを片付けに、マップのあちこちをかけ回ることになります。
タスクは簡単なミニゲームになっていて、クリアしていくと達成度が上がっていきます。例えばボタンタッチだけで始まる「ダウンロード」のタスクでは、左上の緑ゲージが達成度を表しており、達成度ゲージがいっぱいになるとクルーの勝ち。
一方インポスターは、一見クルーと同じようにタスクを片付けているように見せかけて、実はサボタージュと殺害の機会をうかがっています。彼らは、宇宙船の通路を閉鎖して通行を妨害したり、リアクター(反応炉)を暴走させたり、あるいは近くにいるクルーを殺害したりすることができます。
ちなみにこの「タスクを片付ける」ターンの間は、プレイヤー同士は一切会話することができません。画面上で動く他プレイヤーの様子を見て、今何をしているのか推測することしかできないのです。
誰かが(クルーだとは限りません! もしかすると犯人の自作自演かも!)死体を発見して皆に報告するか、あるいは緊急招集ボタンを押すと、全員が集まる「議論ターン」が始まります。ここで初めて、生き残ったプレイヤー同士の意志疎通ができるわけですね。話し合いの後投票を行って、票があつまったプレイヤーが「追放」されます。追放によってインポスターが全滅すればクルーの勝ち。この辺は人狼と同じですよね。
便宜上、みんなでわちゃわちゃ宇宙船を移動してタスクを片付けるターンを「昼ターン」、議論をして誰を追放するかを決めるターンを「議論ターン」と呼びたいと思います。
●遊んでみると案外人狼じゃなかった、けど大変面白いですねこれという話
Among Usと人狼の大きな大きな違いは、2つの言葉で表現できるのではないかと思っています。
その2つとは、
「怪しさ、あるいは怪しくなさがグラフィカルに可視化される」
「ゲームシステム的な勝ち筋が複数ある」
という2つ。
まず1つ目、「怪しさ、あるいは怪しくなさがグラフィカルに可視化される」というのはどういう話かといいますとですね。
人狼って徹頭徹尾「議論」のゲームだから、基本的にどんな情報も「言葉」でしか出てこないんです。占い結果だって霊能結果だって、誰かが議論ターンで口にしないと皆に情報が伝わらない。この人の話の反らし方はちょっと怪しいとか、頑張って情報を出そうとしているから村側っぽいとか、「言葉」を介してでないと怪しさを読み取れない。これはこれで、慣れるとすごく楽しいんですが。
一方、Among Usってあくまで「昼ターンの、シンプルなアクションゲームの行動を元に議論ターンで議論する」ゲームなんです。なので、「誰がどこで何してたか」っていうのが、議論における直接の材料になる。
これがものすごーーーく分かりやすくって、かつ楽しいんですよ。
人狼って、慣れない人にとってはどうしても「何しゃべっていいのか分からん」「どこを怪しんでいいのか分からん」という問題がついて回るんですけど、Among Usの場合は「私はずっとAさんと一緒に行動してました(だから私とAさんは怪しくないよ)」とか、「Bさんの死体を見る直前にCさんを見ました(だからCさんが怪しいと思う)」みたいな感じで、「ゲーム画面上で見た情報」がそのまんま議論の材料になるんです。
この人はちゃんと真面目にタスクをこなしていたっぽいな、一方この人はなんかふらふらしてたな、とか(もちろんカムフラージュかもしれないし不慣れなだけかもしれない)。
この人はずっと単独行動をしていて、他の人から見られてないから怪しいな、とか。
あれ、この人はエンジンのあたりにはいなかったはずだけど、今話していることと食い違うな、なんか怪しいぞ、とか。
この人が見たっていう光景とこの人が見たっていう光景、矛盾してるよな。どっちかがウソついてるぞ、とか。
アクションパートの材料が、即議論と結び付く。だから、議論パートで「何喋っていいのか分からん」という事態が極めて起きにくいし、一方「議論パートで話す材料を探さなきゃ」っていう明確な行動指針が昼パートにも発生する。みんなそれに基づいてどう動けばいいか考えるから、無言の連携が生まれる。
こういう、いわば「昼パートと議論パートの相互作用」が発生するんです。
例えば、なるべく複数人で行動してアリバイを作っておこう、とか。この人がなんとなく怪しいからそれとなく様子をみておこう、とか。あ、今あの人とすれ違ったな、これ覚えとこう、とか。こういうことを考えながらプレイするのがめちゃくちゃ楽しい。慣れてくれば慣れてくるほど楽しいです。
一方これは、インポスター側にとっては、「議論を誘導して、自分を白く見せかけるのがかなり難しい」ということでもある。人狼であれば口先三寸でごまかすこともできた場面で、「いやあなたの発言、私が見た内容と矛盾してますよ?」と言われちゃうと、ひっくり返すにはかなりテクニックが必要です。そこはそれで腕の見せどころなんですが。
アクションゲームと議論が裏表になっているからこそ発生する相互作用。これがAmong Usの面白さの、一つの中核であることは間違いないと言っていいと思います。
そしてもう一つ人狼との大きな違いが、「ゲームシステム的な勝ち筋が複数ある」ということ。これがゲームとしてはめちゃくちゃ大きいんですよ。
クルーは、インポスターを全員見つけなくても、タスクを全て片付ければ勝つことが出来ます。だからインポスターはタスクが片付く前に行動しないといけないし、一方クルーも皆でずっと一緒にいよう、というわけにはいかない。どこかで個別にタスクを片付けにいかないといけないし、そうなるとどうしても他の人とはぐれる時間は出てきてしまいます。結果、インポスターに狙われるリスクが高まる。
タスクを実施中は絶妙に視界が狭まって、周囲で何が起きているのか分かりにくいというのもうまいところ。「タスクを片付けていたら、ふと気が付くと自分のすぐそばに死体が転がっていた」なんてめちゃくちゃ心臓に悪いシチュエーションですよね。
タスク自体、大体は初見でもあっさりクリアできる程度に簡単ですが、たまーに手間がかかるタスクもあります。一度スキャンしてしばらくしてから戻ってこないといけない医務室でのサンプル採取とか、妙に反応が悪くて何度もやり直しを強いられるカードリーダーとか。
一方、インポスターはサボタージュという妨害行動もできて、中には一定時間内に対処しないとクルーが全滅してしまう(当然クルーの敗北)なんてサボタージュもあります。なんなら、クルーを殺害し切らなくても、サボタージュで勝つという筋が狙える場合もあるんですよ。
サボタージュを行って皆が対処に行く隙にクルーを殺害したり、残りクルーの人数が少ないところで致命的なサボタージュを仕込んで一撃必殺を狙ったり。インポスターの戦術もいろいろです。ちなみに、クルーは死んだ後も幽霊になってタスクを遂行できますが、インポスターも死んだ後サボタージュを実行できます。派手に暴れた後は、生き残った仲間のためにひたすらクルーの足を引っ張りまくるのもまた一つの戦術。
とにかくこの「タスク vs サボタージュ」という構図も絶妙で、隙をつこうとするインポスターと逃げ切ろうとするクルーの行動の駆け引きが無言のうちに繰り広げられる、これもまたAmong Usの面白さです。
また、インポスターはクルーには使えない「vent(通気口)」という移動手段を使ってワープすることもできます。普段はクルーと一緒に行動しながら、一瞬の隙をついてventで瞬間移動、他の場所にいたクルーをキルして何食わぬ顔で戻ってくる、なんて戦術が決まったら脳汁が出ます(ただし出入りしているところを見られたら一発アウト)。
このへん、「昼ターンがアクションゲームになっているからこその駆け引きとテクニック、そして議論の深み」については、人狼とはまた全く異なった味わいである、と言ってしまっていいでしょう。
●設定の小回りが利いてすごい、という話と、唯一の問題点
ところでこのゲーム、もう一つすごいところは、「ものすごーーーーく設定の小回りが利く」ということです。
例えば、インポスターには殺害のクールタイムというものがありまして、2人も3人も続けて殺すことは出来ないようになっています。1人殺したらある程度待たないといけないんですね。
そのクールタイムを短くしたり長くしたり。あるいは、タスクの数と量、追放したプレイヤーの正体を表示するか否か、クルーやインポスターの視界の広さから足の速さから、とにかくありとあらゆる項目を設定でいじることができます。
結果、プレイヤーの習熟度や人数によって細やかに設定を変更できて、うまくゲームのバランスを取りやすいんですね。7人中インポスターが1人というのはちょっとインポスターが不利だから、キルのクールタイムを短くしてクルーにハンディつけよう、みたいな調整が非常にしやすいわけです。
この設定値を使ってAmong Usの中で全然違う遊びをする、なんてことも出来ます。例えば「ハイドアンドシーク(かくれんぼ)」なんてのがありまして、インポスターの視界を最小にして、クルーには最初からインポスターが誰かを開示してしまう。で、議論パートはなしにして、インポスターはクルーがタスクを全部遂行する前にクルーを殺しきれば勝ち、とか。同じシステムを使って全く違うゲームをすることもできる。
そういう「遊びの小回りが利く」ところも、Among Usの特長の一つだと思います。
フレーバー自体非常によくできていて、「密閉された宇宙船で殺人者たちとの生き残りゲーム」という時点でSFファンも垂ぜん間違いなしですが、例えばどこかの惑星の調査基地っぽいマップであるとか、「ふらふらとその辺を回っているだけで楽しい」という側面もあります。SFファンにも十分お勧めできるフレーバー。
と、ことほどさように「人狼っぽくて、けれど人狼じゃない」Among Usの面白さを多少はお伝えできたかなーと思うんですが、唯一問題点がありまして、それは
「野良だとあんまり議論が機能してない」
ということなんです。
特にSteam版だとまだ議論パートの日本語対応がされてないこともあって、チャットでの議論がろくに成立しないことは全く珍しくありません。「Blue」とか「I'm not inposter」とか一言だけしゃべってあとはずっと無言、という人の多いこと。しゃべって! もっとしゃべって!
こればっかりは「ボイスチャット万歳」としか言いようがなく、可能な限り事前に人を集めてdiscordでのボイスチャットなんかと連携して遊ぶとめちゃくちゃに面白いんですが、ここが若干ハードルを高くしてしまっていることは否定できないでしょう。
とはいえ面白いことは大保証できますので、特に人狼系ゲームが好きな人は、仲間を誘って遊んでみてはいかがでしょうか…!! と。めちゃ楽しいですよ……!!!! と。
そんな全力オススメ記事だったわけです。よろしくお願いします。
取りあえずインポスターでクルーを殺害して回るのがとても楽しいので、がんばってインポスターを練習したいと思います。見掛けたら追放しないで見逃してください。
今日書きたいことはこれくらいです。
【ライター:しんざき】
SE、ケーナ奏者、キャベツ太郎ソムリエ、三児の父。ダライアス外伝をこよなく愛する横シューターであり、今でも度々鯨ルートに挑んではシャコのばらまき弾にブチ切れている。好きなイーアルカンフーの敵キャラはタオ。
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