コロナ禍の今こそ読んでほしい、江戸時代から伝わる『養生訓』の教えを猫写真とともに

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2021年01月28日 06:10  週刊女性PRIME

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『ニャン生訓』より(写真:沖昌之)

 江戸時代から続くロングセラー書『養生訓』をわかりやすく現代語訳して解説、さらに猫写真家・沖昌之さんの猫写真を組み合わせた新感覚の健康本『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)が話題! 著者の熊谷あづささんは、執筆を通して実際に『養生訓』のチカラを実感したといいます。時代を超えて令和の私たちに響くメッセージ、そして“癒され整う”簡単健康法とはーー。熊谷さんによる寄稿をお届けします。

現代人にも響く
江戸時代『養生訓』の教え

 『養生訓』という書物があります。

 今から300年も前の江戸時代に出版されたもので、著者は儒学者として名高い貝原益軒先生です。その題名のとおり、『養生訓』には心身の健康に役立つ方法がたくさん書かれています。現代でいえば、健康指南書というところでしょうか。
 
 私はもうすぐ50歳になるのですが、実は大学生のころに『養生訓』を読んだことがあります。ただ、つい最近までの私は、記憶のどこを探しても『養生訓』に出てくる言葉も教えも見つかりませんでした。あるのは“読んだことがある”という事実だけ。
 
 大学時代にも、風邪をひいたり悩みごとを抱えたりと心身の不調に見舞われたことがあるはずなのですが、“健康”や“養生”といった言葉は、当時の私の心にはさほど響かなかったようです。なぜかというと、自分のエネルギーは無尽蔵に蓄積されていて、泉のようにこんこんと湧き出るものだと信じて疑わなかったから。実際、アラサーのころまでは、全力疾走をして疲れても体力を気力でカバーできていました。
 
 しかし、30代半ばを過ぎてからは日に日に疲労感がたまり、いつも身体のどこかがスッキリせず、年齢を重ねるごとに体重が微増し、未婚である自分に焦り、フリーランスの将来に不安を覚え、40代を迎えるころには心身ともに絶不調の時期に突入です。そうなってようやく、若さという魔法はすでにとけ、自分のエネルギーは有限であることに気づきました。
 
 “健康”や“養生”といった言葉に関心が向くようになったのも、このころからです。
 
 頭痛や胃痛などで頻繁に病院を受診したり、軽度の不眠症で睡眠導入剤を処方してもらったり、軽いうつ状態で心療内科にお世話になったりと西洋医学の力を大いに借りるようになりました。また、ベリーダンスを習いはじめて身体を動かしたり、旬の食材を使った自炊をしたり、好きなミュージシャンのライブに足を運んで非現実の世界を楽しんだりと、普段の生活の中で心身のバランスをとることを心がけるようにもなりました。
 
 そうするうちに、自分の心と身体のクセのようなものが、おぼろげながらもわかってきたような気がします。とはいうものの、心身とのつきあい方との核となるものがなく、気になるアイテムや方法にむやみやたらに手を出しているような状態であったのも事実です。

心と身体に効く
「言葉」の数々

 そんな私が、50歳を目前にして約30年ぶりに巡り合ったのが『養生訓』です。あらためて読み直すうちに、「ここには今の私に必要な言葉が詰まっている」と実感しました。江戸時代に書かれた『養生訓』が令和の今を生きる私の心に大きく響いたのです。
 
 たとえば、「すべてのことに励み、続けていれば必ず効果は現れる。それは春に種をまいて夏によく手入れをすれば、秋に豊かな実りとなるようなものである」という教えです。仕事でも日常生活でも、「がんばっているつもりなのに、結果が出ない」、「もうやめたほうがいいのかもしれない」とくじけそうになる瞬間が訪れることがあるものの、この養生訓を読むと自分自身をほんの少し肯定できるのです。
 
 また、ダイエットを切望しつつも、おやつの時間や満腹感にこの上ない幸福を感じてしまう私にとって、「腹八分目にとどめるべし」、「間食してはならない」という主旨の養生訓は大きな戒めとなっています(ただ、なかなか実践できないのですが……)。
 
 このように、『養生訓』には心と身体に効く言葉がたくさん詰まっています。

 2020年9月に発売となった『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)は、現代人にも通じる『養生訓』の教えを厳選し、人気の猫写真家・沖昌之さんが撮影した猫の写真とともに紹介した一冊です。

 たとえば、崇高なものに対する畏敬の大切さを説いた養生訓には天を仰ぎ見るような猫のカット、踊ることで心身に気を巡らせることを述べたページにはまるで踊りの練習をしているような猫の写真を組み合わせるなど、見るだけでも楽しめる構成となっています。
 
 ちなみに、『ニャン生訓』の中で、私は現代語訳と解説をしております。タイトなスケジュールの中でやらなければならないことが山ほどあり、一時は一日24時間のうち20時間は『ニャン生訓』と向き合っているような日々でした。
 
 そんな状況に追い打ちをかけるかのように何度も原稿にダメ出しがあり、もともと自己肯定感が低い私は「あぁ、なんてダメな人間なんだろう……」と何度も心が折れそうになりました。
 
 そのたびに救われたのが、『ニャン生訓』でも紹介されている「己を愛せよ」の教えです。同じく、『ニャン生訓』に登場する“呼吸をゆっくりと行う”、“自分で按摩や指圧をするのもよい”という主旨の養生訓を参考に、強い焦りや不安を感じたときには、腹式呼吸やストレッチをすることで乗りきれました。はからずも、『ニャン生訓』の執筆をとおして、『養生訓』の言葉が秘める確かな力を実感することができたのです。
 
 実際、『養生訓』が300年の時を超えて今なお読み継がれている大きな理由のひとつには、身体のみならず心の健康にも言及していることが挙げられます。『養生訓』では、健康を維持するためには心の健康を保つことが何よりも大切だと考えられているのです。
 
 心身に不安を抱えてしまいがちなコロナ禍のさなか、『ニャン生訓』を通して『養生訓』の教えが届くことで、いろいろな不安を抱えている方の気持ちが少しでも癒されますように。

『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)
養生訓/貝原益軒 写真/沖昌之 現代語訳・解説/熊谷あづさ
価格:1500円(税別)

熊谷あづさ(くまがい・あづさ)
ライター。猫健康管理士。1971年宮城県生まれ。埼玉大学教育学部卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に医療・健康、食、本、人物インタビューなどの取材・執筆を手がける。ブログ:「書きもの屋さん」、Twitter:@kumagai_azusa、Instagram:@kumagai.azusa

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