料金値下げの影響は「総合力」でカバー 日本は米国やインドとは違う――ソフトバンク宮内社長との一問一答(2021年2月版)

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2021年02月05日 19:53  ITmedia Mobile

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写真質疑に応じる宮内謙社長
質疑に応じる宮内謙社長

 既報の通りソフトバンクは2月4日、2020年度第3四半期連結決算を発表した。同日に行われた決算説明会では、Y!mobileにおける「iPhone 12」「iPhone 12 mini」の発売の発表や、宮川潤一次期社長のあいさつなどが行われた。



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 この記事では、説明会後に開催された質疑応答のうち、携帯電話事業に関連する主なやりとりを紹介する。



●携帯電話料金の値下げの影響について



―― 携帯電話事業についてお尋ねします。足元では事業の多様化が進んでいる様子はプレゼンテーションからも伺えますが、携帯電話料金の値下げ(に伴う収益への影響)が来期(2021年度)から効いてくると思います。どのくらいの影響を与えると見込んでいるのか、他の事業でどのくらい(影響を)カバーしようと考えているのか、数字で示せるイメージがあれば教えてください。



宮内社長 私たちはシミュレーションこそしてはいますが、それが実際に当たるかどうかは分かりません。相当コンサバティブ(保守的)に見てはいますが、少なくともコンシューマー(個人向け)の通信に関する営業利益は少し落ちると思います。



 一方で、(携帯電話事業における)競争は激しくなっています。ここまで料金が下がりましたから。MVNOの方々は大変な所だと思いますが、顧客数はまだかなり取れると思っています。顧客数の読みは、実際に(新しいプランを)やってみないと分からない部分もありますが……。



 ただ、会社としてはそんな言い訳はできません。「最大でこれくらい(収益が)落ちるだろう」と見越して、それに合わせてコストダウンを進め、アップサイドを取れる(好調な)法人事業やヤフー事業(※1)、数多くあるグループ企業で(収益を)調整していこうと考えています。



 ただ来期は、今期(2020年度)の後半のようにドバーっと伸びることはないと思っています。



(※1)ヤフー、ZOZOなど、Zホールディングス(旧ヤフー)傘下にある企業を示すセグメント区分



―― 「あらゆる成長領域で(料金値下げによる減収分を)をカバーする」とのことですが、来期以降において盛り上がりそうな領域はありますか。



宮内社長 先ほども話した通り、1点としては法人の伸びがあります。第3四半期までの単体では、前年度同期比で27%ほど営業利益が増えています。今後は5Gのネットワークも整ってくるので、法人分野でも(収益が)積み上がってくるものと思っています。



 公開会社(株式を上場している企業)なので細かいことは言えませんが、(子会社の)Zホールディングスも増益する予定です。持分法適用会社である(スマホ決済を提供している)PayPayについても(※2)、今は大赤字ですがそれが半分以下になる見通しで、それ(持分法に基づく業績への影響)が減るでしょう。



 営業利益も大切ですが、最終的な利益(純利益)の面では、私たちには「宝物」がたまってきています。私たちが出資している会社には「IPO(新規株式の売り出し)予備軍」が多く、SBペイメントサービスなど(業績面で)非常に順調なグループ企業もあります。(ソフトバンクグループの祖業の1つである)流通事業についても、この間まで50億円だった営業利益が200億円を超えるような世界になっています。



 デジタル化に関する需要は非常に旺盛です。そういうものを積み上げつつ、コストダウンを進めることで、少なくとも減益にならないように努力していかないといけません。これは宮川新社長が頑張らないといけないことですが、私たちの事業全体、トータルの「船」は波がいろいろあるにしても、デジタル化の波にはずっと乗れています。



 事業について、今までは「全部増収増益!」と言ってきましたが、これからは部門ごとに波があっても、それを(他の部門で)吸収できるようにすることが経営ではないかと思っています。そういう意味で、事業の多様化を進めてきた所です。



 細かい数字の答えとはなっていませんが、宮川(新社長)が5月あたりに来期の業績予想を発表するはずなので、そこまでお待ちください。



(※2)PayPayの出資比率は、ソフトバンクグループが50%、ソフトバンクが25%、ヤフー(Zホールディングスの子会社)が25%となっている



●楽天モバイルについて



―― ソフトバンクから楽天モバイルに転職した元社員が逮捕された件について、現在捜査中だとは思いますが、何が御社にとっての「機微な情報」だったのか、今後の対処方針と合わせて教えてください。



宮内社長 はっきりと言って、あってはならない話だと思っています。私たちの営業秘密が不正な手段で持ち出された、非常に重大な事案です。当社の営業秘密が楽天モバイルの事業に使われないようにするために、民事訴訟を提起することになっています。



 ネットワークの構築に関しては、ビー・ビー・テクノロジーの時代から含めると20年前から取り組んできたノウハウがあります(筆者注:携帯電話回線については、前身企業を含めると30年近い歴史がある)。「どこに基地局を建てるのか」ということは、結構大変な仕事なんです。(持ち出された内容は)ちょっと許されない内容じゃないかと思っています。



 この件については、捜査当局がきっちりと調べている所で、どういう状況か分かっていませんが、私たちとしては、このような対応を取る予定です。



―― 楽天モバイルの新料金プランについて、来年度(2021年度)以降の携帯電話市場や御社の競争環境にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。



 この新プランは小容量(10GB未満)や中容量(20GB前後)では、かなり競争力が高いと受け止められているようですが、御社として追加の施策を行う予定はあるのでしょうか。



宮内社長 楽天モバイルさんの「0円」という新聞広告を今日見かけて、一生懸命頑張られているなと思いました。



 私たちは5年前、総務省がMVNO(の成長)にかじを切った際に「ワイモバイル(Y!mobile)」というブランドを作ることでユーザー数を減らすことなく、どんどん増やせました。今度のY!mobileの料金プランは、4G(LTE)に加えて5Gにも対応します。(0円からというプランは)それなりの大きなインパクトがあるとは思いますが、(Y!mobileの新プランで)相当対応できると考えています。



 Y!mobileとソフトバンク(SoftBank)は、通信ネットワークだけではなく、(販売)チャネルという大きなインフラを持っています。(通信サービスは)価格だけではなくネットワーク品質も重要です。現在、4Gであれば(ソフトバンクとY!mobileは人口カバー率で)99%つながります。温泉でも、ゴルフ場でも、スキー場でも使えます。



 (携帯電話の)ネットワークというものは、(人口カバー率が)90%を超えた所からが大変です。彼らは「(2021年の夏までに)96%にする」って言ってますが、そこから99%に持って行くには兆単位のお金がかかります。私たちも(携帯電話事業に参入してから)10年ほど、「ゴルフ場でつながらない」「(長野県の)軽井沢で使えない」「(東京の)銀座のクラブじゃつながらない」とか、いろいろな人から言われてきました。日本でのネットワークは“きめ細かさ”が求められます。米国やインドとは違って“品質”が重要なのです(※3)。



 彼らはずっと「0円」でやってきています。本来であれば、もっとたくさんのお客さまが(ソフトバンクやY!mobileから楽天モバイルへと)行くはずですが、そうなってはいません。それは、お客さまの品質に対するこだわりによるものだと思います。



 これからは5Gのネットワークがやってきます。出てくる端末は(基本的に)全部5G対応になります。この5Gに、どこまで投資してネットワークを広げられるかという競争が始まっています。そういう意味では、私たちは(楽天モバイルに対して)相当な“利”を持っていると思っていますし、端末、お客さまサポート、コンテンツなど“総合力”も持っています。



 楽天にも頑張ってほしいですが、私たちも負けずに対抗できると思っています。



(※3)筆者注:米国は郊外のエリア整備が遅れている事例が多く、都市部でも屋内や地下で圏外になるケースも少なくない。インドはLTE回線が急速に普及したものの、複数のレポートにおいて通信速度が非常に遅いという結果が出ている


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