新型コロナ禍で奮闘する指導者兄弟(前編)

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2021年02月06日 10:14  ベースボールキング

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“野球ってこんなに面白いんや”と思ってほしい、国立大付属高野球部で奮闘する兄
新型コロナ禍では、アマチュア野球界も大きなダメージを受けた。選手も指導者も「野球ができない」現実に直面した。そんな中で「野球好き」の高校生、大学生をつくるために懸命に奮闘していた兄弟がいる。



兄、山口琢士は、25歳。奈良県立郡山高校でプレーした。郡山高校は奈良県下では「公立の雄」ともいうべき強豪校で、春夏それぞれ6回甲子園に出場。プロ野球にも千葉ロッテマリーンズの荻野貴司など多くの選手を輩出している。
山口兄は三塁手として活躍。しかし天理、智弁、奈良大附属のまえに敗退し、甲子園出場はならなかった。そして大阪教育大学に進む。

学生時代から野球部を指導
「教師にという気持ちはありましたが、大阪教育大野球部は、僕が入学したとき近畿学生野球連盟の一部リーグにいました。トップリーグで本格的に野球ができることが魅力でした。
そして国立大学で体育学をしっかり学びたかった。
大学では三塁手として2年ではベストナインに選ばれ、オールスターにも出場しました。このときに現ヤクルトの宮本丈選手(履正社高校−奈良学園大)とプレーできたのが思い出です。
大学は次のシーズンに二部に落ちましたが、僕は3回生の秋で引退をして指導者の道を歩むことにして、奈良女子大附属中等教育学校のコーチになりました。当時の女子大附属のキャプテンは幼馴染で、野球の技術指導ができる教員がいなかったので声をかけられたんです」

卒業後は教員になって東京都立高島高等学校に赴任。軟式野球部監督になるとともに、硬式野球部顧問も務める。

高島高校は東東京大会で2018年は5回戦、2019年は準々決勝まで駒を進めたが、いずれも東京都立小山台高校に敗退した。
昨年からは、故郷の奈良に戻って以前コーチをしていた奈良女子大附属中等教育学校高等部の監督になる。


じっくり子供たちを育てたい
「都立や県立などの高校は、数年おきに転勤があります。いろんな経験ができるのも良いかもしれませんが、僕としては一つの野球部をじっくり指導したかった。奈良女子大附属は国立ですから基本的にありません。それに中高一貫なので、中学から6年かけて野球部を強くすることができる。そう思って試験を受けて採用されました」

どの地方でも同じだが、国立大学の付属高校はその地域屈指の進学校になる。奈良女子大附属も同様だ。偏差値はトップクラス。子供たちは勉強をするために入学している。

「去年のキャプテンは京都大学、その前の2人は神戸大学に進んでいます。彼らは塾にも行っていましたし探究活動なんかもやっている。僕の高校時代は野球漬けでしたから違うなあと思いました」



部活は平日は午後6時まで、しかも運動部活動のガイドラインに則り平日に1日、週末に1日オフを設けている。
「私立の強豪校のような練習はできないんですから、その真似をするのではなく効率的に練習しないといけません。時間を区切って5分ごとにティー、素振り、バッティングと移っていく。20分やるとなればだれてきますが、5分なら集中できます。時間管理をマネージャー中心にさせています。うちはグラウンドが広いので、いろんな場所を使って同時並行で練習できるんです」

山口兄が目指しているのは強くなることだけではない。

「そのうえで”野球ってこんなに面白いんや”と思ってほしいんです。
高校時代に野球で頑張っていた子でも、大学に行ったらやめてしまうケースが多いんです。僕は大学でも、そして一生野球を好きでいてほしいと思っています」

野球部の活動をさらに有意義なものに
部員は高校が6人、中学3年は11人いる。一時期は連合チームで大会に出場していたが、来年以降は単独で試合ができる。

「実力的にはまだまだですが、中学に硬式野球の経験があるいい選手がいるんです。中学部にも監督はいますが、僕が見ることができるので、この世代で強くしていきたいと思います」

新型コロナ禍で、昨年は奈良女子大附属も満足に練習ができなかった。

「1回目の緊急事態宣言の時は、練習はできなくなりましたので、その間はオンラインで打撃指導をしました。6月から再開しましたが、今年に入ってまた隣の大阪で緊急事態宣言が出たので、活動を縮小しています。
率直に言って、野球部の活動は重視されていません。少し練習時間が超過すると学校から『やりすぎじゃないか』と言われてしまう。部活に対しては理解があるとは言えないですね。僕としては部活の意義、重要性を理解してもらえるようにしたいし、子供たちの学校生活にも還元できるようにしたいです」(取材・文・写真:濱岡章文)

*新型コロナ禍で奮闘する指導者兄弟(下)に続きます。

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