スーパーフォーミュラのホンダエンジン使用チームに異変か。参戦台数減の可能性も

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2021年02月10日 16:21  AUTOSPORT web

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2020年スーパーフォーミュラ第7戦富士 フォーメーションラップの様子
2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、すでにトヨタ、ホンダからTRDエンジン、M-TECエンジンの使用チームとドライバーが発表されており、2月1日の時点で残すシートは、M-TECエンジンを使用する3台だけとなっている。ただ、このうちのふたつのシートの席が、現段階で非常に難しい状況に置かれているようだ。

 2021年に向け、1月15日に発表されたスーパーフォーミュラに参戦するホンダ/M-TECエンジン搭載車両は5チーム9台。そのうち、TEAM MUGENの15号車、そしてB-MAX Racingの2台については、ドライバーは未定とされていた。しかし、そのうちの2台については、合同テストまで1ヶ月強となった状態でも、まだドライバーは決まっていない……というより、決められない状態なのだという。

 業界内の情報を総合すると、このチームはB-MAX Racingだ。ジュニアフォーミュラで積極的な活動を行い、全日本F3選手権/スーパーフォーミュラ・ライツでは多くの台数が挑戦しているB-MAX Racing。2017年からは、長年の宿願だった国内最高峰のスーパーフォーミュラに参戦を果たし、2017年は小暮卓史を、2018年は千代勝正を起用。2018年からはB-Max Racing with motoparkとしてルーカス・アウアーやハリソン・ニューウェイを起用した。

 チームは参戦初年度こそ、スーパーフォーミュラの経験あるドライバーを起用するべく小暮を選んだが、翌年の千代、アウアー、ニューウェイともにホンダの育成出身のドライバーではなく、他のM-TECエンジン使用チームとは一線を画している。多くの関係者によれば、チームはホンダに対してリース料を払いエンジンを使用していると言われており、これまでは他チームとは異なるスタンスでシリーズに臨んできたという。

 B-MAX Racingの組田龍司総代表によれば、2台のSF19は神奈川県綾瀬市のファクトリーで準備を整えられており、参戦の準備はできているという。しかし、チームは近年スーパーフォーミュラ・ライツとともに外国人ドライバーを数多く起用しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響を最も大きく受けているチームだ。希望するドライバーは数多くいても、来日が叶わない。

 そんななか、チームは2021年のスーパーフォーミュラに向け、ひとりドライバーに白羽の矢を立てたという。

 両者の思惑は一致し、チームはプロモーターに対しそのドライバー起用を告げたが、そのドライバーの起用は認められないという返事がエンジン供給メーカーから戻ってきたと言われている。理由は、他メーカーでスーパーGTに参戦するドライバーであるためだ。そのドライバーの速さを磨き、“敵に塩を送る”のは許されないからだ。とは言え、世界的なこのコロナ禍のなか、上位カテゴリーでさえドライバーのやり取りや共存に向けた努力がなされているのが実情であり、関係者すべてが協力してレース業界を盛り上げていく必要があるのではないだろうか。

 実際、今から外国人ドライバーを呼ぶ交渉は、タイミング的に不可能だ。コロナ禍の影響は大きく、現状入国もままならない。かといって、現在のフォーミュラ、特にビッグフォーミュラは力量に加えてバジェットも必要とされ、条件がそろっているドライバーは少ない。B-MAX Racingは、これらの事情により参戦体制はできていても、条件が合うドライバーが国内にはいない状況で、参戦そのものが危ない状況だ。

■このままでは“限られたドライバー”だけの国内トップフォーミュラに?
 スーパーフォーミュラは先述のとおりTRDエンジン、M-TECエンジンが使用される。ただ、近年はTRDエンジン使用チームには、トヨタの育成ドライバー、もしくはトヨタでスーパーGT等のシリーズを走るドライバーしかドライブできないと言われている。ホンダは以前千代がドライブしていたように、この点については寛容な部分があったようだが、この方針は変更されたようだ。

 B-MAX Racingは参戦当初から他メーカーの車両でスーパーGTに参戦しており、それを承知の上でエンジン供給メーカーから許可を得て参戦を開始した経緯があり、エンジン供給サイドの突然の方針転換によって大きな影響を受けてしまっているという。チームもこの点に関しメーカーの立場も理解したうえで、できる限りポテンシャルと、条件に合う外国人ドライバーの起用に努力をしてきたが、昨年からのコロナ禍のなか、外国人ドライバーが来日できないという事情があり日本人ドライバーの起用を打診したが受け入れてもらえない状況だという。

 M-TECエンジン、TRDエンジンはスーパーGT GT500クラスでも同型式のエンジンという名目だが、ここ数年でその実態はまったく違うものになっていると聞く。それでも、エンジンやターボの特性など他メーカーのドライバーが乗ることは技術流出の面からも好ましくないはずだ。また、先述のように、他メーカーのドライバーの速さを磨くことにもなる。

 これについては、もちろん理解することはできる。SFで使用される2リッター直4直噴ターボエンジンは、熱害など大きな困難を乗りこえて各メーカーが作り上げてきた。開発のための費用は決して安くないのは間違いない。そんなコストをかけて、他メーカーに利することをするわけにはいかないだろう。またホンダもトヨタも、スーパーフォーミュラにはシリーズパートナーとして協賛している。シリーズを盛り上げてくれている存在だ。

 ただ今回のケースを考えると、今後スーパーフォーミュラは両メーカーと良好な関係をもつチーム、両メーカーから他レースに参戦するドライバー、または因果関係がまったくないドライバーのみが参戦できるレースとなってしまうのではないか。フォーミュラとは、F1をのぞけば本来イコールコンディションでドライバー、チーム、エンジニアがその力で0.001秒を刻みとるレースであり、スーパーフォーミュラはその最高峰ではないのだろうか。

 日本にはトヨタ、ホンダ、ニッサンというメーカーがスーパーGTには参戦しており、ニッサンに所属してもトップフォーミュラで戦う力量があるドライバーはいる。すべてのトップドライバーによる“日本一速いドライバー決定戦”のようなシリーズは構築できないものか。ピュアなモータースポーツファンが本当に観たいものはなんだろうか。

 もちろん、ホンダ系チーム、トヨタ系チームとも、スーパーフォーミュラ参戦がチーム、ドライバーの力の向上に繋がっている部分もあるだろう。また、日本にはもうひとつ、ドイツには3つ、2リッター直4直噴ターボエンジンが存在するが、企業の方針もありそう簡単なことではない。また、もし仮にこれらのエンジンを供与もしくは購入し、バッジを変更して独自エンジンとして参戦したとしても、さまざまな問題を生むだろう。

 そもそも、フォーミュラというレースカテゴリーにおいて、技術競争が存在するべきなのかという議論もある。いまや、マルチメイクのパワーユニットを使う世界的なフォーミュラはF1、インディカー、ユーロフォーミュラ・オープン、そしてスーパーフォーミュラ、スーパーフォーミュラ・ライツくらいだ。

 こういったカテゴリーの中にはエンジン供給に関する利害は当然存在するが、いまやF1ですらチームからの要求があった場合はパワーユニットを供給しなければならないとする決まりがある。シリーズの盛り上がりを考えた場合、今後こういった規則は検討しなければならないだろう。

 このまま状況が打開しない限り2021年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は、参戦台数が2台減の18台になってしまう恐れがある。メーカーが支えてくれたからこそ今のスーパーフォーミュラがあり、またNREエンジンは非常に優秀なエンジンではあるが、一方で現行規定のなかでの弊害が生まれてしまっているのかもしれない。

このニュースに関するつぶやき

  • 2輪4輪問わず日本のモタスポはメーカー依存しすぎてる。日本のマルチメイクはメーカーへの忖度のたまもの。
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