芳根京子「辞めてもいいんだよ」お芝居を楽しめる原動力

1

2021年02月11日 09:00  ドワンゴジェイピーnews

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ドワンゴジェイピーnews

写真写真

作品に対する真摯な思い、凛とした佇まいからくる清廉さと透明感――。女優・芳根京子にはデビュー当時からそんなイメージが漂う。誰しもが備えられるものではない特性は、大きな武器である一方、透明な水は、どんな色にでも染まるため、こうしたイメージを守ろうとする場合も多い。しかし芳根は20代前半にして、そんな透明な色をさまざまな色に変えることを“楽しめている”ようだ。


難役オファーに「すごく嬉しかった」

最新作となる映画『ファーストラヴ』で芳根が演じたのは、アナウンサーの面接試験を受けた当日、画家である父親を殺害した容疑で逮捕された女子大生の聖山環菜。環菜は動機について「そちらで見つけてください」と発言したことにより、美人女子大生が起こしたセンセーショナルな殺人事件として、マスコミに大きく取り上げられることになる。


なぜ父親を殺すような事件を起こしてしまったのか――という彼女の深い闇が物語のキーとなる。本作の話をマネージャーから聞いたとき、芳根は脚本と原作を読み「すごく嬉しかった」と当時の心境を述懐する。


この“嬉しい”という言葉の意味について「こういう難しい役を私に……と声を掛けてくださる人がいたんだ」と感激した気持ちだったという。


半信半疑で臨んだ現場だからこそ「その場で出てくる感情をすべて出した」

喜びの一方で、作品の肝になる人物、しかも一筋縄ではいかないキャラクターを演じるという大きなプレッシャーが芳根の心にのしかかった。それは芳根自身と環菜の取り巻く環境が、まったく違ったから。「原作を読んで、環菜という女の子は純粋に愛が足りない子だと思ったんです。シンプルに愛が欲しい子。私自身、家族の仲がすごく良く、環菜の境遇を完全に理解することはできなかったんです」。


しかし、理解はできなくても本を読んで「環菜という子が本当に救われて欲しい」と心の底から思った。演じる人物を「分かってあげたい」と強く思うことで、役を自身に取り込んだ。


現場でも「しっかり役を理解できているのだろうか」と半信半疑だった。だからこそ、あまり考えず「その場で出てくる感情を、我慢せず殺さず、すべて出そう」と臨んだ。


北川景子とはプライベートでも交流「いまでも連絡を取らせてもらっています」

芳根にとって新たなるチャレンジ。大きな助けとなったのが環菜のルポを執筆するために取材を申し込んだ公認心理師・真壁由紀に扮する北川景子の存在だった。

「私はあまり先輩に『ご飯行きたいです』などと言えないタイプなのですが、いまでも連絡を取らせてもらうなど、すごく心を開くことができた方。役柄への不安もあったのですが、撮影中はいろいろな悩み事が多くて、いっぱいいっぱいだったんです。あまり外に出しているつもりはなかったのですが、北川さんだけが声を掛けてくださり、気にしていただいたことで、救われたんです。北川さんの観察力って、環菜からするととても怖くて、そこもリンクして役作りの助けにもなりました」。

役とプライベートの両方で距離が縮まったことで、自然と北川の発する言葉に反応し、自身でも掴めていなかった環菜としての感情が溢れ出てきた。「改めてお芝居って一人でやるものではないなと気づかされた瞬間でした」。


役柄の幅を広げることの楽しさ

父親殺しの容疑者という難役。前述したように、芳根の透明感ある印象とはかけ離れているような人物だ。しかし近年、映画『累-かさね-』(2018年)で見せた負の感情に心を支配された女性や、ドラマ『チャンネルはそのまま!』(2019年)で演じたドジなぶっ飛びガール、『コタキ兄弟と四苦八苦』(2020年)のシュールなヒロイン・さっちゃんなど、多様な顔を精力的に見せている。


「ここ数年、いろいろな役をやらせてもらえるのが嬉しい」と目を輝かせると「作品を観て、自分では気づいていない自分が発見できるのは、とても楽しいことなんです」と笑顔を浮かべる。

充実した女優人生を突き進む芳根だが、デビュー当時は「そこまでやる気があったわけではなかった」とつぶやくと「スカウトでこのお仕事をするようになったのですが、当時は芝居なんてしてこともなかったし、女優というお仕事に強い思いがあったわけではなかったんです」と正直な胸の内を明かす。


そんななか、オーディションで連続ドラマ『表参道高校合唱部!』の主役の座を勝ち取る。この作品の現場を経験し「お芝居をもっとやりたい」と楽しさに気づいた芳根は、続く連続テレビ小説べっぴんさん』でもヒロインを務め「悪い意味ではなく、未来を信じて選んでくれた方のために“辞められない”と思ったんです」と、楽しさと責任感から、芝居を続ける情熱がさらに燃え上がったという。


「自分が笑顔になれないなら辞めてもいい」

とは言いつつ「いまは自分が苦しんで、毎日笑顔になれないならば『辞めてもいいんだよ』と自分に声を掛けています」と語る。「突っ走り過ぎてしまうタイプ」と自己分析した芳根。だからこそ「自分だけは自分の味方でいよう」と心に余白を持たせているという。

そんななかでも、新たな自分を発見できる役に巡り合えている現在は「芝居が楽しい」と実感できている。だからこそ「全力で突っ走れるところまで突っ走りたい。だってやりたいと思ったとしても、それがすべてできる世界ではないじゃないですか。こんな素敵なチャンスをいただけるんだから」と周囲に感謝を述べる。

コロナ禍で思うように動けなかったと振り返った2020年。お芝居への意欲も増しているなか、新たな面を見せることができた作品の公開とあって「こういう感覚をまた味わいたいです」とさらなる作品への出会いに思いを馳せていた。



映画『ファーストラヴ』は2月11日(木・祝) 全国ロードショー。


取材・文:磯部正和

撮影:稲澤朝博

スタイリスト:道端亜未

ヘアメイク:原田琴美



    ニュース設定