春風亭一之輔が鬼に疑問「豆で撃退って? 『鬼滅の刃』見てみろ」

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2021年02月14日 16:00  AERA dot.

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写真春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「節分」。

【今週のお題のイラストはこちら】

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 今年の節分は2月2日だった。ん? そうか、いつもは3日だったな。今年の節分が2日である細かい事情を調べてみたのだ。なんか、たまーにズレるらしい。んー、よくわからん。1日くらいのラグは43歳にもなると気にせんよ。2月なら問題なし。節分さんもどうか気に病むことなく、2月2〜4日だったら遠慮なく節を分けてもらいたい。

 でも実際鬼たちは驚いたろうな。「えーっ? 節分って3日だろ? 1日早いなんて聞いてないよーっ!?」てなもんだ。でも人間の遥か上をいくはずの鬼だから、そんなことは事前にリサーチ済みだったかもしれないけどね。「2日はあんまり出歩かないようにしましょう、ステイホーム」と鬼都知事が鬼都民に呼びかけただろう、鬼CMで。主に鬼MX TVで。

 ん? でもよく考えたら、あいつら節分が2月3日ってわかってるはずなのに、なんで毎年その日に豆ぶつけられて逃げてくのだろう。毎年毎年、性懲りもなく。それならスケジュール帳に赤丸しとけばいいじゃないか。スマホのアラーム設定しとけばいいじゃないか。鬼政府も不要不急の鬼活動自粛を促して、テレ鬼ワークを鬼徹底、鬼国民に抜かりない鬼補償をすればいいじゃないか。

 そもそも鬼。豆で撃退されるってどういうことだ? お前らは人並み外れて強いから『鬼』なんじゃないの? 『鬼滅の刃』見てみろよ。鬼って無茶苦茶強くて、首を落とされないと死なないんだよ。それなのに現実の(?)鬼たちは豆。「ヒイラギにイワシの頭を刺したやつが玄関に飾ってあるので中に入れませーん」ってどういうこと? 「『鬼滅』はフィクションですからね〜」とか言いそうだな、鬼。マンガと一緒にしないでとか言うなよな、鬼。地獄絵図のなかじゃ亡者を頭からガリガリ齧ってるくせに。それなのにイワシの頭はNGって可愛いにもほどがあるだろ、鬼。

 われわれは今まで鬼を過大評価してたんじゃないか?

 イヌとサルとキジを連れたたった一人の若者に制圧され、宝物まで奪われたうえに泣いて謝る鬼。3センチの小人をのみ込んだと思いきや、腹の中から針で突かれて泣きだす鬼。人間と友達になる代わりに青鬼がいなくなり、真の友の大切さに気づき泣く赤鬼。来年のことを言われただけで涙を流して爆笑してしまう、笑いの沸点の異常に低い鬼。金棒を持たないとカチ込めないステゴロの弱い涙目の鬼。部活の合宿に行ってる間に、お気に入りの白Tシャツをジーンズと一緒に洗濯されて「染まっちゃったじゃんっ!(涙)」と泣いて怒る鬼。

 本当はこんなに泣き虫なのに、普段の強面イメージのためにちょっと泣いただけで「いやぁ、あの鬼さんが涙してるよ……あの鬼さんっ! ぜひオススメのコメントを頂きたいのですが!」と新作映画の試写会場で、映画配給会社の広報から声を掛けられる鬼。出したコメントは『全鬼が泣いた、オレの目に涙』。今年は全国の節分会が自粛になった。寄席の豆まきも中止。結果的にホッとしてるんだろう、鬼。来年はそうはいかないぜ、鬼。お互いに手指の消毒、マスク着用でな。待ってるよ、鬼。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

※週刊朝日  2021年2月19日号

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