“番長”三浦監督が目指す脱ラミレス野球の行方【白球つれづれ】

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2021年02月22日 20:12  ベースボールキング

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DeNA・三浦大輔監督
◆ 白球つれづれ2021〜第8回・三浦大輔監督

 監督が代われば、目指す野球も変わる。

 DeNA・三浦大輔新監督が、大胆なチーム改造に取り組んでいる。

 象徴的なシーンは13日に行われた中日との練習試合だ。3回、チーム一の俊足・宮本秀明選手が塁上に残ると、二盗を試みるが失敗。続く4回にも田中俊太、細川成也選手が二盗を刺される。それでもまだチャレンジは続いた。8回に伊藤裕季也選手がやっとセーフ。4度走って成功は1回と確率は悪いが、この時期だからやれることもある。

 伊藤裕が言う。「監督や青山さん(ヘッドコーチ)、小池コーチ(外野守備走塁担当)がアウトになっても構わないと言っていたし、チャレンジしようと」。

 その後も機動力野球への挑戦は続いている。21日の対ロッテ戦では8回に宮本が左前打で出塁。次打者・細川の時に暴投で一気に三進すると、前進守備の遊ゴロにもギャンブルスタートを成功させて生還した。これが“番長”の目指す野球の一端である。

 昨年まで5年間にわたり指揮を執ってきたA・ラミレス監督と言えば、豪快な攻撃野球が売り。昨季は、梶谷隆幸、佐野恵太、宮崎敏郎の日本人にT・オースティン、N・ソト、J・ロペス各選手が並ぶ打席は屈指の破壊力を誇った。一方で確率重視のデータ野球を標榜するが、外国人監督らしくバント、盗塁といった小技は好まず、大味な采配がBクラスに沈む要因との批判もあった。


◆ 潮流と必然の変革

 三浦新監督のスモールベースボールへの回帰は数字上からも必然と言える。

 昨年のチーム盗塁数「31」はリーグワースト。トップの巨人と阪神は「80」だから、実に50個近い開きがある。逆にチーム打率.266、同本塁打135本はリーグトップなのに、同得点516は3位と下がる。つまり、それだけ塁上を賑わしながらホームラン以外の「あと1点」が取れていなかったことがわかる。

 加えて、今季のチーム事情もある。攻撃陣では梶谷が巨人にFA移籍して、ロペスも退団。投手陣ではエース格である今永昇太や東克樹投手らが故障で出遅れ、井納翔一投手も巨人に移った。さらにオースティンらの外国人選手がコロナ禍で来日が遅れて開幕に間に合うかも不透明だ。こうした現状を踏まえた時、一発に頼るだけでなく、1点をどうもぎ取り、1点をどうやったら相手にやらないかの緻密さが求められる。

 昨今の日本球界では機動力が改めて見直されている。ソフトバンクの周東佑京、巨人の増田大輝、ロッテの和田好康士朗選手らが、何度か快足で試合の局面を変えた。そんな影響もあってか、昨年のドラフトでは日本ハムに、「あのサニブラウンに勝った男」五十幡亮汰や、ヤクルトには並木秀尊選手らの韋駄天男の指名が話題を集めた。

 DeNAに目を転じると、昨季31盗塁の内14個は梶谷が走ったもの。その梶谷が抜けているのだから事態は深刻だ。そこで指揮官が期待を寄せるのが昨季ファームでチーム最多15盗塁を記録した宮本。さらに巨人から梶谷の人的補償で移籍した田中俊太選手らに期待がかかる。

 沖縄キャンプでは、走塁だけでなくバント練習にも多くの時間が割かれた。通常の送りバントだけでなく、偽装スクイズやセーフティースクイズといった緻密な作戦の徹底も図られている。

 かつて巨人、ダイエーなどで指揮を執った世界のホームラン王・王貞治氏(現ソフトバンク球団会長)は、意外にも監督時代はバントやヒットエンドランを好んだ。ミスター三冠王の落合博満氏も中日時代は荒木雅博、井端弘和の「アライバコンビ」を中心とした守りの野球で栄冠を手にしている。三浦新監督にしても投手時代、相手にやられて嫌な作戦である、こつこつ1点を積み重ねる野球の大切さを知っているからこそのチーム大改造なのだろう。

 さて、問題は主力選手がスタメンに名を連ねた時にも緻密なスモールベースボールが機能するかである。過去に春先までは機動力野球を前面に押し出しながら、シーズン本番でいきなり相手捕手の強肩に屈すると盗塁のサインが極端に減ったチームを何度も見てきている。ベイスターズなら強力クリーンアップの前後を任される1、2番と下位打線がラミレス時代とどう違う野球が出来るのかが、上位浮上のカギとなるはずだ。

 新監督はどんな采配、用兵で新たな風を横浜にもたらすのか?

 そこのところ、ヨロシク!


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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