『ONE PIECE』エースはなぜ生き急いだのか? ルーキー時代の軌跡から見えるもの

0

2021年02月23日 08:01  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

「ONE PIECE magazine Vol.11」

 「ONE PIECE magazine」 (集英社ムック)にて連載中の、ルフィの(義)兄であるポートガス・D・エースを主人公としたスピンオフ作品『ONE PIECE episode A』。最新話である第2話では、『ONE PIECE』本編にてお馴染みのレジェンドたちが次々と登場する。本編では深く語られることのなかったエースの人生が、いかに生き急いだものだったのか、その一端を垣間見ることができるものとなっているはずだ。


参考:『ONE PIECE』における“本物の仲間”とは? ウォーターセブン編の名シーンを考察


※以下、ネタバレあり


 『ONE PIECE episode A』とは、「ONE PIECE magazine」の“Vol.1”〜“Vol.3”にて連載された小説をコミカライズした公式スピンオフ作品だ。『三ツ首コンドル』などの石山諒がネーム構成を、『Dr.STONE』のBoichiが作画をそれぞれ担当している。そんな本作で描かれるのは、かつてエースが率いていたスペード海賊団の奮闘記と、船長であるエースの生き様だ。同海賊団の最初のクルーであるマスクド・デュースの視点によって、これらのエピソードは語られている。


 前回の第1話では、エースとマスクド・デュースの出会い、スペード海賊団の結成、そして船出までが描かれた。ここで分かったのが、エースがメラメラの実の能力者となった経緯だ。特殊な海流に囲まれた無人島に漂着し、出会ったふたり。食べ物も飲み物も得られない状況下で、両者とも飢餓状態に陥っていた。そんなおりに怪鳥が現れ、これをエースが撃退した際に手に入れた果物がメラメラの実だ。この“未知の果実”を食する場面だけでも、彼らふたりがそれぞれにどのような性格の持ち主であり、どのような関係であるのかが克明に描かれていたように思う。仁義を重んじるエース以上に、マスクド・デュースの生真面目さによって、エースは悪魔の実の能力者となったのだ。これは互いに大きな信頼関係が芽生えた場面でもあった。腕っぷしに自信のあるエースと、豊かな知識を持つマスクド・デュース。これからの航海に期待の高まる、痛快な幕切れの第1話であっただろう。


 第1話がさまざまな“誕生秘話”を描いていたのに対し、第2話はとんでもないスピード感で、エースたちが海賊として高みへ登っていく“ルーキー時代”が描かれている。本稿での詳述は避けるが、彼らは早くも新世界入り。しかも、シャンクス、ジンベエ、そして白ヒゲとの出会いが怒涛の勢いで展開する。本編でのルフィ率いる麦わらの一味の動向に比すると、あまりに省略しすぎではないかと思えるほどだ。物語の飛躍ぶりには驚きの連続である。


 もちろん、“紙幅が限られている”という事情はあるだろう。これは『ONE PIECE』本編ではない。いくらエースが重要な人物だとはいえ、彼をメインとした物語を長期連載するわけにはいかないはず。しかしこのスピード感や物語の飛躍ぶりには、必然性が感じられてならない。この一連の展開が示しているのは、エースがあまりに生き急いだ存在だったのではないかということである。


 エースがかつての海賊王ゴールド・ロジャーの息子だということはご存知のことと思う。そして彼が、世界的に悪名高いロジャーを父に持つせいで苦しんできたことも。だからこそエースは、かつてロジャーと肩を並べ、海賊王に最も近い男と目される白ひげを超えようとした。ここに彼は、自身の存在意義を見出そうとしたのである。その後エースが白ひげへの敗北を経て、白ひげ海賊団に加入するというのは周知の事実。次回の第3話では、エースが白ひげと対峙したその顛末が語られるようだ。当たり前のことだが、それぞれのキャラクターには登場するまでに各々が歩んできた道のりがある。彼らの存在のバックグラウンドだ。本作を読んで本編に戻ると、また『ONE PIECE』の世界の見え方は変わってくるだろう。


 それに私たち読者は、やがて訪れるエースの死をすでに知っている。それまでにはリアルタイムでキャラクターが死を迎えることのなかった『ONE PIECE』の世界において、多くの方が重大事件として記憶しているはずだ。『ONE PIECE episode A』でエースの人生に触れることで、彼の最期の見え方も変わってくるだろう。(折田侑駿)


    ランキングゲーム・アニメ

    前日のランキングへ

    オススメゲーム

    ニュース設定