「無力」。“西の宮藤官九郎”お〜い!久馬が語る新型コロナ禍での苦悩と希望

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2021年02月25日 11:35  AERA dot.

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写真撮影:中西正男
撮影:中西正男
お笑いユニット「ザ・プラン9」のリーダー・お〜い!久馬さん(48)。関西を中心にあらゆる舞台や番組の脚本も手掛け“西の宮藤官九郎”とも呼ばれています。人気劇作家たちの新作をオムニバスで上演する舞台「リバー・ソングス〜大阪を流れていた6枚の枯葉〜」(大阪・ABCホール、2月27日、28日)でも演出を担当。プレーヤー、そして作り手としてエンターテインメントに関わる久馬さんですが、新型コロナ禍はその久馬さんに「無力」という言葉を使わせるほどのダメージを与えてもいました。その中で感じたもの。そして、そこから見出した希望とは。

【写真】「コロナ禍でイリュージョンの7割できなくなった」と語ったのはこの人

 無力というかね……。何もできないんだなと思いました。

 芸人の中には、特に劇場を持っている吉本興業の芸人には、どこかで「いつの世も、舞台をやっていれば大丈夫」という思いがありました。でも、今の世の中では、その舞台すら、ままならなくなってしまった。「舞台までアカンのか」と。

 この前、数えて見たんです。大小織り交ぜて、年間100本以上は何かしら台本的なものを書いている。ほぼ舞台です。

 仮に、この先1年、2年と舞台がまともにできなくなったら、僕、何をしたらいいんやろうというのが正直なところです。

 去年4月には「ザ・プラン9」の19周年イベントをやる予定だったんです。19周年にちなんで19人とコントをしようということで「130R」さんや「バッファロー吾郎」さん、友近、又吉(直樹)、「ロバート」とか人気者にもたくさん来てもらって開催するつもりだったんですけど、コロナ禍で延期になってしまいました。

 今は今年4月に開催予定の20周年イベントの打ち合わせをしてるんですけど、おそらくは19周年より先に20周年をやる感じになるかなと(笑)。

 19周年イベント、延期ではなくて中止にしてもいいと言えばいいんですけど、でも、それはなんか悔しいんですよね。

 たくさんのゲストに来てもらう流れにしていたこともありますし、なんか、このまま中止というのはイヤやなと。

 もう23年目なのに19周年イベントをやるとか(笑)、そんな流れがあっても、それはそれで面白いのかなと思いますし、何かしら形に。そして、できれば、そこにプラスアルファを乗せて開催できればなと思っています。

 あと、お客さんの感覚もすごく変わりましたもんね。隣の人がすごく笑っていたら、以前だったら「盛り上がってる!」という方向に気持ちがいってたのかなと。ただ、今は「飛沫が怖い……」となってしまう。

 そういう心のブレーキみたいなものが、以前とは違うところでかかるようになってますし、そのことで楽しみにくくなった部分もあると思います。
 先日、芝居を観に行ったんですけど、ゾンビのお話やったんです。コメディとかじゃなくて、シリアスな舞台なんですけど、その中で、ゾンビもマウスガードをして出てきたんです。

 そういうボケとかじゃなくて、出演者全員がマウスガードをつけないといけないという規定があってのことだったんですけど「どんなゾンビやねん!」と思うと同時に、もしかしたら、この先、舞台上のこういうことも気にならない“当たり前”になるのかもしれない。

 無意識の中の意識というか、そういう部分も確実に変化していってるんだろうなと。

 お芝居を書いていても「これはいつの時代の話なんだ?」という意識が、いろいろなところにチラついて邪魔になる感じはありますね。

 シチュエーションとしては明らかに今の時代を描いているんだけど、登場人物がマスクをしていないということは、2020年よりも前の話なのか……とか、そういう意識が濃淡は見る人によって違うでしょうけど、お客さんの頭の中にチラチラする。

 これがあるだけで、物語にスッと入りにくいですしね。邪魔といえば邪魔な感覚だし「この話はいつの話なの?」ということを変に突き付けられる流れはあるなと。

 そんな中ですけど「ザ・プラン9」としては、去年メンバーが3人から6人に増えましたし、先ほどもお話をしたように20周年も迎えます。

 僕の人生を振り返って、趣味とか全てを含めても、これだけ続いたものって「ザ・プラン9」だけなんです。コンビ時代も10年ほどで終わりましたしね。

 自分でも「20年も続いてるんや…」という驚きもありますけど(笑)、何よりメンバーに恵まれてきたというのが大きいと思います。本当に。

 別に僕が何かをしたわけじゃなんですけど、今のメンバーでいうと、浅越(ゴエ)もヤナギブソンもちゃんと食べられるようになりましたし、去年入った新しい3人(コヴァンサン、きょうくん、爆ノ介)が食べていけるようになったらなという思いはあります。
 なかなか舞台が難しい世の中ですけど、新しい3人がなんとかうまく独り立ちしていくというか前に進めるよう、何かできないかと考えています。

 ただ、一方で「落ち着くのがイヤ」という思いもあるんですよね。なので、新しい3人が食べていけるようになったら、またメンバーを増やすかもしれません。エエ加減にせぇと言われるかもしれませんけど(笑)。

 コンビもやって、ピンも、3人も、4人も、5人も、6人も経験してきましたけど、それ以降はまだ未経験ですし、実際、最終的には9人にしたいという思いはあるんです。

 今でも、例えば「5人時代が良かった」とか、以前の形に思い入れを持ってくださる方もいらっしゃるんですけど、いつか“阪神タイガース”みたいになったらなとは思ってるんです。

 1985年の“バックスクリーン3連発”の頃がすごかったという人もいれば、2003年の星野監督の時が良かったという人もいるし、今の阪神が好きという人もいる。いろいろな思い入れはあるけど、全部タイガースですから。

 本当に厳しい世の中になりましたけど、なんとかここを踏ん張って続けることで、いつか、いつか、そんな形になれたらなと。

 ……え、“西の宮藤官九郎”ですか?なんか、同期の「メッセンジャー」のあいはら君とか、一部の人がそんなことをシャレで言ってくれてるみたいですけど、わざわざこんなん言うのもアレですけど、何もかも全然違いますからね(笑)。

 一回だけ、劇場で前の方の席に宮藤官九郎さんが座ってらっしゃったんです。もちろん、しゃべることも何もなく、普通のオッサンとして「うわ、クドカンや!」と遠巻きに眺めてましたけど(笑)。

 向こうが偉大すぎて、全てが違いすぎますけど、それこそ朝ドラとか、いつかそんなお仕事もさせてもらえたらなとは思いますね。

 何にしても“西の宮藤官九郎”なんてことはおこがましいばかりですけど、周りがそう呼んでくれる分には、そら、ま、悪い気はしないですけどね(笑)。

                         (文:中西正男)

■お〜い!久馬(お〜いきゅうま)
1972年7月22日生まれ。大阪府出身。NSC大阪校10期生。同期は「メッセンジャー」「水玉れっぷう隊」「ジャリズム」ら。92年にお笑いコンビ「シェイクダウン」を結成するが、2000年に解散。01年にお笑いユニット「ザ・プラン9」を結成しリーダーとなる。メンバーの脱退、増員などを経て、現在は久馬、浅越ゴエ、ヤナギブソン、コヴァンサン、きょうくん、爆ノ介の6人。後藤ひろひと、わかぎゑふ、村角太洋ら6人の劇作家が綴った6つストーリーを久馬ら6人の演出家が演出するオムニバス舞台「リバー・ソングス」が2月27日、28日に大阪・ABCホールで上演される。

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