『艦これ』も被害に! 海外で集英社になりすました削除申請発生… 日本コンテンツで同様事案も

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2021年02月26日 20:02  日刊サイゾー

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写真GettyImagesより
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 2021年1月15日、集英社は同社の海外向けのマンガ配信サービス「MANGA Plus」上で、海外を中心に集英社(Shueisha)名義でファンイラストなどに削除申請が相次いだ件について、それらは無関係の第三者によるものであるという声明文を公開した。

 この騒動を報じた「ねとらぼ」によると、「Shueisha」による削除申請はDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づいて、主に欧米圏のアカウントに対して行われ、1月8日頃には「Shueisha」がフランスのTwitterトレンド1位を記録。世界トレンドでも、上位を記録するなどしていたという。

 著作権侵害については「漫画村」(すでに閉鎖済み)などの海賊版サイト問題に関連し、出版社からの抗議・問題提起が続いていたが、今回の事例ではマンガ・アニメ本編の一部を抜き出した投稿だけでなく、ファンイラストやコスプレ写真なども著作権侵害に当たるとして、削除申請が出されていたという。つまり、節度ある範囲内で楽しんでいた人たちまでもが、「Shueisha」から攻撃を受けたということである。

 その後、集英社は前出のような声名を公開し、「現在は複数のSNSプラットフォームと協議して、この問題の対応策を検討中」と発表したことで騒動は一応の沈静化を見せた。

 第三者が誰なのか、どんな目的があったのかは今も不明のままだが、このような虚偽のDMCA攻撃は過去にも起きている。例えば人気ブラウザゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』の公式Twitterアカウントが2018年2月22日に突然凍結。後に運営元によって、同アカウントに使用しているアイコンの画像を、第三者が偽名で「自身が描いた」と主張したことで、DMCAに基づき凍結していたことが明かされた(凍結は同日中に解除)。

 ネットの匿名性を悪用した、かなり幼稚な嫌がらせにも思えるこの攻撃。高度に発達したネット社会で、どうしてこのようなことが起きてしまうのか? ここで論点になってくるのがDMCAの仕組みである。知的財産権に詳しい弁護士・弁理士・米国弁護士の牧野和夫氏は、この法律について次のように解説する。

「これはネットでの著作権侵害を受けて制定されたアメリカの法律で、前提としてアメリカのプロバイダーに適用されます。サイト管理者やプロバイダーに直接著作権侵害を申し立てれば、コピーコンテンツを削除できるというもので、著作権保護だけでなく、プロバイダーの責任を軽減するという目的もあります。場所を提供している以上、違法なコンテンツが掲載されるとプロバイダーも責任を負わされかねないわけですが、ネットの性質的に未然に防ぐことは不可能ですから」

 現在ではプロバイダーだけでなく、アメリカ発のグーグルや各種SNSなど、プラットフォームもDMCAを基に著作権保護を行っているわけだが、自助努力に限界があるのも事実だ。結果、DMCAの悪用が起きているということだが、削除そのものを否定することはできないと、Webコンサルティングを手がける株式会社JADEの辻正浩氏は語る。

「多くの団体・企業がDMCAを海賊版の排除に活用しており、明らかにDMCAは今のインターネットに必要な仕組みといえます。また、DMCAにおいては『ノーティスアンドテイクダウン』【編注:権利侵害を主張する者からの通知があった際、本当に権利侵害にあたるかどうかの判断をプロバイダーは確かめずに当該情報を削除しても、その責任を負わなくていいということ】という“たてつけ”であることから、まず削除が行われることは、本来の正しい運用となります。

 しかし、DMCAが成立した段階とはインターネットが大きく変化していることから、そのままの運用ではさまざまな問題が発生しているのが現状です。その問題に対して、各プラットフォーマーがそれぞれ独自の対応をしているわけですが、その対応は主にDMCAの申請に対する審査の仕組みとなります。法律でプラットフォーマーが削除するまでの期限が区切られており、かつ膨大な申請があることから、目視確認は非常に限定的にしか行えません。そのため、各社による人力での対応を超える部分については、それぞれの技術力による自動審査を行っています」

 このような背景もあって第三者によるDMCA攻撃が起こってしまっているわけだが、AIによる審査だけでなく、申請の容易さにも原因があると牧野弁護士は指摘する。

「権利者からの通知は形式的な書式が整っていれば、誰でも申請できます。私も仕事で真の権利者のクライアントから依頼を受けることがありますが、あまりに簡単で『なりすましを請け負う業者もいるのでは?』と思うほどですし、申請すれば簡単に削除されます」

 なおDMCAに基づく申請は、誰でもグーグルで確認することができる。2月19日現在、「除外がリクエストされたURL」は「5,021,518,718」で、以下、「指定されたドメイン3,148,175」「著作権者241,026」「申立団体235,875」と続く。いかに多くの申請が行われているかがわかる数字だ。

 しかし、以前と比べるとプロバイダー、プラットフォーム側の審査は向上しているようだ。

「自動審査の品質において、グーグルはこの5年で非常に大きく進歩しました。5年前は、DMCA申請はそのほとんどが素通りで受け入れられ、削除されていましたが、今はかなりの精度で審査が行われています。それは人間が稼働する体制としても、自動審査の技術力でも明らかに強化されていると考えられます。その精度はこの1〜2年でも一段と高まっており、今後さらなる改善が期待できます」(辻氏)

 いくらAIが進歩しても、間違いがゼロになることはありえない。だからこそ、DMCAそのものを改善していく努力も必要だと牧野氏は指摘する。

「現状では虚偽のDMCA申請を行った人が罰せられたというケースは聞いたことがないですし、ビジネス的な損害を被っても、損害の証明が難しいことに加えて、アメリカで裁判をしなければならないといった問題があります。

 だからこそ、今後は例えば即削除ではなくて(DMCAの利用を登録制等にして)権利者の身元を確認するなど、DMCAの運用基準を改善していくことも、視野に入れるべきかもしれません。DMCAが作られたときは、この法律が嫌がらせ、なりすましに使われるとは想定しなかったのでしょうが、今は相手が誰かわからず、コンテンツホルダーが泣き寝入りすることも多いのも事実です」

 新手の犯罪、迷惑行為が後を絶たないため、プロバイダーだけでなく法律も追いついていないということだが、そのため重要になってくるのはコンテンツホルダーや被害者、警察などの動き方のようだ。

「プラットフォーム側の改善は見られますが、それが急激に進むことはなく、まだまだ問題が続きます。この問題を減らすためには、コンテンツホルダーは泣き寝入りをせずに、犯人を罰するために自ら動いていただきたいと考えます。ぜひ、被害者にも警察にも動いていただきたいところです。また、企業がDMCAを悪用するケース(ユーザーからのネガティブな投稿の削除など)も多く、それらは主に悪評隠蔽を目的としますが、その意図を失敗に終わらせるため、悪用の事実を周知目的で拡散することが必要と考えます。DMCAの悪用に気軽に手を染めてしまう企業・人が多いことは確かですが、すでに大きすぎる代償を支払うことになった事例も多くあります。個人であっても企業であっても、そのような悪用を割に合わないリスキーなものにしていくため、戦う必要があります」(辻氏)

 ネット上での誹謗中傷が取り沙汰されている昨今だが、今後はこのDMCAによる虚偽申請という問題も、同じく社会問題として注目されていくだろう。

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