池上彰とヤマザキマリが語る「リーダーの条件」 自分の言葉で話せない首相から見えた

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2021年02月27日 08:05  AERA dot.

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写真ヤマザキマリ:漫画家、随筆家。1967年、東京都生まれ。コロナ禍前まではイタリア在住。著作に『国境のない生き方』など(撮影/写真部・加藤夏子)/池上彰(いけがみ・あきら):ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。著書に『なんのために学ぶのか』『池上彰の世界を知る学校』など(撮影/岸本絢)
ヤマザキマリ:漫画家、随筆家。1967年、東京都生まれ。コロナ禍前まではイタリア在住。著作に『国境のない生き方』など(撮影/写真部・加藤夏子)/池上彰(いけがみ・あきら):ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。著書に『なんのために学ぶのか』『池上彰の世界を知る学校』など(撮影/岸本絢)
 原稿を棒読みで自分の言葉で話せない日本の首相の姿に、落胆や不安を感じた人も多いことだろう。危機的な状況において、リーダーに求められるものは何か。AERA 2021年3月1日号で、池上彰さんとヤマザキマリさんが意見を交わした。

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*  *  *
ヤマザキマリ:日本は明治維新以降、画期的な民主化を進めていきますが、西洋的なスタイルの民主主義は日本の政治に向いていないのかもしれないというのが、今回のコロナ禍において見えた点です。

 昨年の春、各国の首脳が様々な宣言をしましたが、日本の首相の視線はなかなかカメラに向けられない。そもそも日本では人の目をじっと見つめて喋る習慣はないですからね。でもそのせいで、自分の言葉で話していない、自らの思いの言語ではないい、という印象を与えてしまっていた。

池上彰:別に西洋の民主主義じゃなくて日本は日本的な民主主義でいいんですが、あの言語化力のなさは、唖然としましたよね。

ヤマザキ:日本人に適応する民主主義をもっと見極めたらいいのかもしれない。だったら欧米と比べることもしなくなるでしょう。とにかく、日本は、言論力で、弁証法で、民衆を落ちかせるために何かを訴えるっていうのがあまり向いていないというのがわかった気がしています。

 ちなみにヨーロッパだと子どもの頃から、学校でも人前に立って、自分の考えを発言をするということが教育として根底にありますし、家庭の中でも人前で話すことに慣らされていくけど、日本ではそういう教育はさほど重要視されていませんよね。弁証法がそれほど必要ではない国民性だということを慮れば比べるのはナンセンスなんですが。

■真っ先に国民への激励

池上:今年に入り、菅首相が1カ月間の緊急事態宣言を発令しました。そこで記者から「1カ月で駄目だったらどうするんですか」という質問が出ましたが、菅首相は「仮定の質問にはお答えできません」って言ったでしょう。これ衝撃ですよね。

ヤマザキ:そうですね。

池上:「なんとしても1カ月でこの事態を収めたい。だから私は皆さんに訴えているんです」って説得すればいいのに、「仮定の質問にはお答えできません」って。見通しや努力目標を示して、そのゴールに向かってみんなを鼓舞していくのが政治家じゃないのかって思いましたよ。

ヤマザキ:はい、こういう危機的状況に陥ったときに、どんな国であろうとリーダーが真っ先にやらなきゃいけないのは、まず国民への激励だと思うのです。頑張って生きている民衆に対して、激励ができるか、安心させられるかどうか。「とにかくみんなで頑張ろう。何とかするから」っていうような精神性を、盛ってでもいいから発せられるかどうかが肝心ではないかと。

 ちなみに、優秀な古代ローマの皇帝に求められていたのは弁論のスキルでした。とにかく民衆を魅了できる発言ができるかどうかであり、それは今の政治家たちにも求められているものと言っていいでしょう。一国の首相が「お答えできません」「わかりません」というのは、不安の中でなにかにすがりたいと思っている民衆にとってはやはり心もとない。

池上:あの時、菅首相は「仮定の質問にはお答えできません」ではなく、あえてムキになって怒ってみせなきゃいけなかったと思うんです。あなたは何を言ってるんだと。1カ月に抑える気が、あなたにはないんですかと。みんなで全力をあげてやらなきゃいけないじゃないですかって。そう言って記者を叱りつければよかったのにと、私は思うんですけどね。

ヤマザキ:まああれこれ理想を掲げることでもないとわかっているんですが。

池上:それに、菅首相は官僚が用意した原稿をひたすら棒読みしたり、プロンプターを使っても慣れてないから、ひたすらプロンプターをにらんで話すわけですね。まるで横を向いて話をしているように見える。その一つ一つがものすごく反面教師として勉強になるんですよ。

ヤマザキ:なりますね。

■一喜一憂しない自分

池上:先日も東北で大きな地震が起きて、たくさんのけが人が出ました。緊急の会議が開かれて、最初に菅首相が発言しているんですが、冒頭、けがをされたりした方へのお見舞いの言葉ですら、原稿を見ながら話しているんですよね。

ヤマザキ:原稿を見ながら、っていうのは肝心な部分だけでいいから、できればやめてもらいたいですね。言うべきことが頭に入ってないのだろうか、と見ているこちらが不安になる。

池上:お見舞いをするときには、原稿などを読まずにカメラに向かって話せばいいんです。「とにかく東北の人たちも不安でしょうから、政府は全力をあげて、これから取り組みをいたします。どうか頑張ってください」というお見舞いの言葉の後に、その対策ですけどって、原稿を読めばいいんですよ。

ヤマザキ:そうですよね。まずは心からの言葉です。一国のリーダーたる位置にいる人が言うべき言葉っていうのは、心からの言葉であってほしいと思うわけですよね。

 なぜドイツのメルケル首相の演説に、みな心を掴まれたかというと、やっぱり彼女が自分の言葉で話しかけたからですよね。誰もが彼女を真似するべきとは全く思っていませんが、民衆が求めているリーダーとしての一つの例だとは思います。メルケルは「このような状況下で日々スーパーのレジに座っているあなた」「毎日スーパーの商棚を補充しているあなた」「医療に従事しているあなた」といふうに二人称を使った。二人称は直接言葉をかけられているような効果がありますし、疲れている人はしっかり受け止めるでしょう。激励をするのであれば二人称は効果的です。ただ日本では不向きかもしれない。

池上:日本は「皆さん」ですからね。皆さんって、ものすごく曖昧ですよね。

ヤマザキ:急に「あなた」と言われても「え、何? 馴れ馴れしい」と思うでしょう。私もきっとそう思う。だからせめてじっと画面を見つめて、手元の紙を読まずに「皆さん」でいいので自分の心を言語化した言葉で激励してくれたらいいのに、と思ってしまいます。

池上:メリハリをつければいいんですよ。原稿を見なければいけない大事なところは確かにあるし、言い間違えちゃいけないところはあるから、そこは見ればいい。そうじゃないところはやっぱり、まずは見ないで心からの言葉を発してからですよね。

 今回、コロナ禍という危機に陥ったからこそ、政府が何を言おうと何をやろうと、一喜一憂しないで自分を持たなければいけないということを強く思いました。政府はむしろ反面教師として、私たちに教えてくれているのではないでしょうか。

ヤマザキ:それはありますね。何度も言いますが、自分自身の頭で考えて、考えを言語化して、言葉に出し、話し合うっていうことしかないと思います。この不安のなか少しでも前に進んでいくには。

(構成/編集部・三島恵美子)

※AERA 2021年3月1日号より抜粋

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  • またテロ政党員が嘘を垂れ流したのか�ܥ����äȤ����� [中国経済が大幅プラスの予定ねぇ] https://ttensan.exblog.jp/28478226/
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  • 弁がたっても口だけの人も多いのが政治家だと思うがねぇ?ゼロコロナとか言ってる人とかwww
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