音柱・宇髄天元が「遊廓」で戦うことが必然だった理由

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2021年02月27日 11:35  AERA dot.

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写真「音柱」の宇髄天元(画像は「鬼滅の刃」公式Twitterアイコンより)
「音柱」の宇髄天元(画像は「鬼滅の刃」公式Twitterアイコンより)
 週刊少年ジャンプに連載された『鬼滅の刃』の第2期アニメ化が発表された。第1期アニメ「竈門炭治郎立志編」、映画「無限列車編」に続いて、公開予定のアニメは「遊郭編」である。この「遊郭編」では、音柱・宇髄天元がメインキャラクターをつとめる。先行公開された第1弾PVの宇髄天元の「派手だろ?」の決めゼリフは話題となり、声優・小西克幸氏にも注目が集まる。宇髄天元は鬼殺隊の中で最も派手で華やかな隊士だ。 この宇髄天元が「遊郭」という“暗部”で鬼と戦うことには、実は大きな意味があったのだ(以下の内容には、既刊のコミックスのネタバレが含まれます)。

【写真】気持ち悪いのに憎めない…クセが強すぎる「上弦の鬼」はこちら

*  *  *
■鬼殺隊と鬼との「因縁」

『鬼滅の刃』では、鬼討伐部隊「鬼殺隊」の隊士たちが、おのおのの任務の中で、鬼との戦闘を重ねている。隊士たちと鬼たちは、一見すると、それぞれランダムに戦闘相手が決まっているように見えるが、注意深くその組み合わせを確認すると、それぞれの「因縁」がエピソードの中に盛り込まれていることがわかる。

 この「因縁」は、いろいろな切り口で語られるが、一番わかりやすいのは、鬼の総領・鬼舞辻無惨(きぶつじ・むざん)と、鬼殺隊の長・産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)の事例だろう。彼らは同じ血族であり、それを原因として「人間 対 鬼」の戦いを続けている。

 次に、はっきりとしている「因縁」は、身内を殺害した鬼が「かたき」として登場するケースである。主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の家族を殺した無惨の話。姉を殺した鬼・童磨(どうま)を討とうとする、胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ)の話などがあたる。

 では、アニメ第2期のメインキャラクター音柱・宇髄天元(うずい・てんげん)は、どうして「遊廓」に住む「鬼」と戦うことになったのか。

■「遊廓」という場所の特殊性

「遊廓編」では、遊廓のことを「男と女の見栄と欲 愛憎渦巻く夜の街」と説明している。闇夜に人が集う遊廓は、人の出入りそのものが多く、鬼がその身を隠すのにはちょうど良い。

「遊廓」には、ひと夜の「遊び」のために、男たちが遊女を買いに外からやってくる。しかし、遊郭で働く者たちは、基本的に遊郭の外に自由に出ることは許されていない。遊郭の内側にいる者は、借金、貧困、人身売買、親の死去などを理由に遊郭に売られてきた人間、すなわち遊郭で働かざるを得ない人間なのだ。

 この遊郭では、「美しさ」と「華やかさ」が重視される。そして、その「美しさ」さえも、権力者や金持ちによって買われ、搾取される対象になるのだった。

■誰よりも「美しい」柱・宇髄天元

 音柱・宇髄天元は、鬼殺隊の中でも屈指の美しさを誇る隊士である。美を競う場・遊郭に潜入する人物として、宇髄ほどぴったりな者はいない。宇髄が変装して遊郭に潜り込んだ時には、美しい男女を見慣れているはずの遊郭の者たちが、宇髄を褒めたたえている。

「もんのすごい いい男だったらしいわよ」「遣手婆(やりてばばあ)がポッとなっちゃってさ」「あの男すごい色男だったけど」という、遊郭内の者たちのセリフから、宇髄の美しさが「特別」であること、そしてそれが遊廓の“捜査”に良い結果をもたらしたことがわかる。

『鬼滅の刃』には美しいキャラクターが何人もいるが、とくに念入りに、相貌の美を説明されるのは、宇髄天元と胡蝶しのぶである。彼らの美に関する我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)の語りを確認してみると、「めちゃくちゃ可愛いんだよ 顔だけで飯食っていけそう」というのが、胡蝶しのぶである。宇髄については、「オメーの面だよ 普通に男前じゃねえか」と、嫉妬たっぷりに語っている。

 他にも、前述の胡蝶や冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)、甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)など美しい隊士がいるが、彼らがその「美しさ」を任務に直接的に活用しているシーンはない。しかし、宇髄は、自分の華やかな外見を「使って」、任務にあたっているところが異色である。

■元「忍」だった宇髄天元

 考えれば考えるほど、「遊廓編」のメインキャラクターは、宇髄天元以外にはあり得ない。「遊郭の鬼」は、突出した強さを持つ「柱」でないと対処不能であろうことが、予測されていた。つまり、「柱」が現場に向かうことは必然。

 では、宇髄以外の「柱」が、遊廓潜入をスムーズに行えたかというと、それもなかなか難しいだろう。捜査には「遊廓」のシステムへの十分な知識や経験が必須だったからだ。

 宇髄天元は、鬼殺隊に入隊する前は「忍」だった。そのため、遊廓など「夜の街」についても知識があったと推察される。実際に遊廓で本格的な任務にあたる前に、宇髄は「俺が客として潜入していた」とも話している。

 また、宇髄には「美しい妻」がおり、その妻も女性の忍(=くのいち)で、遊廓での諜報活動にぴったりの人材だった。彼らはその外見を生かして「遊廓」での任務にあたる。彼らは「自分の全て」を鬼退治・人助けのために「使う」のだった。なぜ彼らは、ここまでして、任務を遂行するのだろうか。

■「忍」としての苦難、「遊廓」という苦界

『鬼滅の刃』の設定は、大正時代である。宇髄が生まれた頃には、忍=忍者という生業は、すでに衰退・消滅期にあった。

<嘘じゃねぇよ 忍は存在する 兄弟は9人いた 15になるまでに7人死んだ>(宇髄天元/10巻・第87話「集結」)

 この短いセリフからですら、宇髄が忍として、いかに苦難に満ちた半生をおくってきたのか推察できる。

<死ぬのは嫌じゃなかった そういう教育を受けてきたから 「忍」だから 特にくのいちなんてのは どうしたって男の忍に力が劣るんだし 命を賭けるなんて 最低限の努力だった>(まきを/10巻・第80話「価値」)

 これは宇髄と行動をともにしている、女性の忍のセリフである。彼女たちもまた覚悟をもって戦っている。「心を殺す」ことに慣れている忍たちの苦難が、遊郭から逃げ出せない者たちの境遇と重なる。

■宇髄天元が「遊廓」で戦う理由

 この「遊廓編」は、遊女、遊郭で働く者、忍といった、「社会の闇に潜まざるを得なかった」者たち同士の、悲しい戦いの物語である。親、大人、環境に翻弄され、苦難の半生を生きた者たちが、どんな地獄を見て、その後、どのように自分の運命にあらがおうとするのかが描かれている。苦界から脱却できた者、苦界の中で一生を終えた者。

 宇髄天元と「遊郭の鬼」は、その身に持っている才・「美しさ」と「強さ」だけで、この苦界を生き抜こうとしたという点において似ており、「因縁」が深い。戦いの舞台に「遊郭」が選ばれたのは、このような必然性に満ちている。なお、作中には、懸念されているような、遊廓のシステムの美化は一切ない。

「遊廓編」のプロモーションビデオの「派手だろ?」という決めゼリフを幕開けに、業のうずまく暗い夜の闇を、音柱・宇髄天元がド派手に切りひらいていく。彼の華やかな戦いぶりと言動が、ともに戦う者たちと、それを見ているわれわれの気持ちを奮い立たせてくれる。アニメの公開が待ち遠しい。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。

このニュースに関するつぶやき

  • 宇髄天元が美的に見える顔の黄金比から離れているので美人とは言いにくい。顔面偏差値低すぎw
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  • 遊郭を子供に説明できないと炎上してるらしい。ところで銀魂も遊郭が舞台の話があるが、そのタイトル「吉原炎上」(笑)。
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