遅咲きの10番に「こんな選手いたのか」。セリエAでの絶妙パスがすごい

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2021年02月27日 11:41  webスポルティーバ

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サッカースターの技術・戦術解剖
第47回 ルイス・アルベルト

<遅咲きの名手>

 これだけの名手が、25歳まで日の目を見なかったのは意外である。

 12歳でセビージャの育成チームに入り、Bチームを経験してトップ昇格を果たしたのが18歳。ここまでは順調。しかし、セビージャではレギュラーポジションをつかめず、バルセロナBに貸し出された。




 2部リーグで38試合に出場して11得点、これはチームで二番目の得点数だった(1位はジェラール・デウロフェウ/現ウディネーゼ)。この活躍に目をつけたリバプールからオファーが来る。セビージャは移籍を決め、本人も承諾して20歳でプレミアリーグに挑戦することとなった。

 ところが、リバプールでの出場は9試合にとどまり、マラガ、デポルティーボ・ラ・コルーニャへ貸し出される。デポールでは好プレーを見せ、2016−17シーズンにラツィオへ移籍した。

 結局、所属クラブであるセビージャ、リバプールではほとんど活躍しないまま、貸し出し先のクラブでのプレーが認められて、次の移籍先が決まるというパターンを繰り返していたわけだ。

 ラツィオでも最初のシーズンは振るわなかったが、17−18シーズンからはシモーネ・インザーギ監督(イタリア)の信頼を勝ち取り、以後はラツィオに不可欠の存在として活躍中である。現在28歳、遅咲きの名手だ。

 ルイス・アルベルトの恩恵を最も受けているのはFWチーロ・インモービレ(イタリア)だろう。昨季は36ゴールを叩き出し、ヨーロッパの得点王になったインモービレに、チャンスボールを供給しつづけたのがルイス・アルベルトなのだ。

<ハードワークの10番>

 インザーギ監督のラツィオは、ちょっと珍しいシステムを使っている。3−5−2なのだが、インサイドハーフがふたりいる形なのだ。1990年代は、3−5−2と言えばこの形が多かったのだが、最近ではあまりお目にかからない。

 インサイドハーフは左がルイス・アルベルト、右がセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(セルビア)だ。ルイス・アルベルトは左のハーフスペースを中心に幅広く動き、味方からボールを預かっては捌き、2トップのインモービレ、ホアキン・コレア(アルゼンチン)に絶妙のパスをつなぐ。

 ドリブルも巧みで、クロスボールの質もすばらしい。セットプレーの精度の高さも文句なしだ。

 何と言っても、局面を的確に読める。相手の動き、味方の動きを一瞬でインプットし、正解をはじき出す能力が高い。プレーメーカーとしての演算能力の高さは、ヨーロッパでもトップクラスだと思う。

 言わば古典的な10番タイプなのだが、現代のゲームに求められている守備力や運動量も兼ね備えている。ラツィオのインサイドハーフは守備のスイッチとしての役割も担っている。

 相手のビルドアップに対して、ルイス・アルベルトは味方FWの左斜め後方にポジションをとる。相手が右サイド(ラツィオの左サイド)へボールを回すと、そこへルイス・アルベルトがプレッシャーをかけ、それがラツィオのプレッシングの合図になっている。

 自分の横までならルイス・アルベルトが対応して、MFが横へスライド。ルイス・アルベルトより後方へボールが出たら、ウイングバックが対応してDFがスライドする。ルイス・アルベルトの動き次第で、全体のプレスの仕方が変わるわけだ。

 これは右側のミリンコビッチ=サビッチも同じ役割を負っていて、ラツィオのインサイドハーフはテクニックとハードワークを求められている。ルイス・アルベルトは満点のプレーで応えていて、それゆえに外せないキープレーヤーになっているわけだ。

<錚々たる顔ぶれの92年組>

 ルイス・アルベルトのラストパスは、FWが「ここにほしい」と思っているところにピタリと出てくる。アウトサイドで少しカーブをかけ、あるいはインサイドで大きく曲げ、強弱長短を問わない精度。見えているターゲットが、センチメートル単位なのかもしれない。ごちそうをワゴンに乗せて運ぶようなパスだ。

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 テクニック、運動量、インテリジェンスを兼ね備えた逸材。にもかかわらず、ラツィオへ来るまでそれほどの評価を得られなかった。ルイス・アルベルトが埋もれてしまうくらい、ヨーロッパのサッカー界は人材が豊富だということなのだろう。

 ルイス・アルベルトと同じ1992年生まれは、錚々たる顔ぶれが並ぶ。ネイマール(ブラジル/パリ・サンジェルマン)、サディオ・マネ(セネガル/リバプール)、モハメド・サラー(エジプト/リバプール)、ソン・フンミン(韓国/トッテナム)が92年組だ。

 ルイス・アルベルトと同じMFのポジションなら、クリスティアン・エリクセン(デンマーク/インテル)、コケ(スペイン/アトレティコ・マドリード)、マルコ・ヴェラッティ(イタリア/パリ・サンジェルマン)、マリオ・ゲッツェ(ドイツ/PSV)、ジャック・ウィルシャー(イングランド/ボーンマス)、イスコ(スペイン/レアル・マドリード)、エリク・ラメラ(アルゼンチン/トッテナム)、ステファン・エル・シャーラウィ(イタリア/ローマ)、フィリペ・コウチーニョ(ブラジル/バルセロナ)がいる。

 28歳は、サッカー選手のキャリアのピークと言っていい。名前を挙げたMFたちは、いずれも若手のころから名を轟かせた天才だが、すでにピークアウトしたかに思える選手たちもいる。所属チームとの相性が悪くて停滞している選手もいる。

 ルイス・アルベルトは遅咲きだったが、キャリアピークに活躍できるチームに巡り合えた。選手として最高の時期に力一杯プレーできる場にいられるのは、幸運と言えるのではないだろうか。

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