一之輔、「おしゃべりおじいさん人形」と遊ぶ!? ヨシローの政界裏話?

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2021年02月28日 16:00  AERA dot.

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写真春風亭一之輔・落語家
春風亭一之輔・落語家
 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「失言」。

【今週のお題のイラストはこちら】

*  *  *
 通販で「おしゃべりアカチャン人形」みたいなやつを買ってみた。「おはよう」「いいてんきだね」「おやすみなさい」……ありきたりのことしか言わず、刺激が足りない。

 アカチャンと真逆のものは……お爺さんか。なんと「おしゃべりおじいさん人形」を発見。しかも数種類。みな胸にバッジを付けている。税込み5980円なのに「おしゃべりアソウくん」だけ税込み7980円。どうやら衣装が他の人形より高級らしい。キザなハットにトレンチコート。付属品でライフルまでついてきた。スイッチを入れるとダミ声で「え〜、シモジモのみなさ〜ん」。8千円近く払わせといて「シモジモ」とはなんだ! 「お前はそんなに偉いのか!?」と返すと「どこの社だ?」とこちらをペンで指してきた。しまいにゃ「おたくらとは民度が違いますから(笑)」……なんだ、こいつ!? 即、返品。

「おしゃべりガースー」。スイッチオン。なんだこれ? 無表情かつ話がたどたどしい。これ……立場上、無理してしゃべってるだけじゃないか? 原稿を取り上げたら黙りこくった。なんか見なきゃしゃべれないのか? 可哀想になって「お話、苦手なの?」と優しく聞くと、ジロリとこちらを睨んで「その指摘には当たらない」だってやがら。クーリングオフだ!

「おしゃべりニカイさん」。ずいぶん古い型だな、この人形。マスクから鼻が丸出し。付属品の「だんまりセイコちゃんと家来一同」を横に並べると話し始めた。「むにゃむにゃごにょごにょはにゃはにゃ」。なに言ってるかわからない。時折、声を張ってると「怒ってるの?」とわかる程度。でも目に見えない力があるようで、並べておくとガースーは気の毒なほど下を向いて黙っている。人形焼に似てるね、ニカイさん。

「おしゃべりカトウかんぼうちょーかん」。この中では若い。スラスラとソフトなおしゃべり。ただ、基本薄ら笑いなところがちょっと気になる。頭が大きくて不安定で腰がグラつく。「なにかご質問は?(笑顔)」と聞かれたので、思いつくままに質問すると「その件に関してはコメントする立場ではないと了解している」だと。「じゃあ、どういう立場?」と聞くと「今日はまだご飯食べてないので」「ご飯のあとはどうしますか?」と矢継ぎ早にご飯の話ばかりしはじめた。「ご飯論法」ってそういうことじゃないだろ。明らかにプログラムミス。正直、一番タチが悪いぞ。

「おしゃべりヨシローくん」。『信頼と実績』と謳い文句にあるが、疲れた表情。「どうしたの?」と聞くと「最近いろいろありまして……」とざっくばらんに話してくれた。娘にも孫にも怒られて辞任。「一生懸命尽くしてきたのに、何故ここまできてこんな憂き目に遭わねばならないのか!」からの、あれやこれやの政界裏話。面白い。めちゃくちゃ面白い! ダントツでヨシローくんじゃないか。「ヨシローは人たらし」という噂を聞いてはいたが。説明書を見ると『必ず一人でお楽しみください』とある。なるほど。無難かも。今までお疲れ様でした、と人形を抱きしめた……。

 ……そんな夢を見た。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中

※週刊朝日  2021年3月5日号

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