「ヤクザの裁判」は死刑もアリ! 重罰化がますます進む時代を元極妻が考える

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2021年02月28日 19:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

神戸地方裁判所 写真ACより

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

連載が100回に

 おかげさまをもちまして、この連載が100回を迎えました。読者の皆様と、私のような立場の者に書かせてくださる編集部の皆様に、この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

 ヤクザはもう絶滅危惧……といわれながら、何かとお騒がせ案件も続いているので、元極妻として思うことはたくさんあります。今しばらくお付き合いいただけますと幸甚です。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。

殺人事件でスピード判決

 さて、記念すべき第100回は、私のテーマでもある、ヤクザの裁判です。以前ちらっと書かせていただいた兵庫・尼崎での神戸山口組幹部の射殺事件の実行犯の初公判は、2月8日に即日結審、19日が判決と、スピード裁判でしたね。

 実行犯が起訴内容を認めているということで早かったようですが、まあちょっと早すぎる気もしましたね。しかも公判では「俠(おとこ)として死にたかった」と言ってたのに、即日控訴しましたから、カタギさん的には「アレレ?」かもしれません。

 でも、これは全然アリだと思います。未決勾留のほうがラクだから。未決囚なら、差し入れ屋からお菓子や缶詰などを差し入れてもらったり、自分で買ったりして食べられるし、私服だし、原則として手紙と面会も毎日1回ずつOKです。

 刑が確定してしまうと、自由がまったくなくなります。刑務所から支給される物しか食べられなくなり、手紙や面会の回数も制限されます。男性は丸刈り&舎房着(囚人服)ですしね。特に、獄中(なか)では食べることはすごく重要です。シャバでは甘い物を食べない人でも、「自由に食べられない」ってなると、食べたくなるようです。

 今回の事件は、一審が短かったので、二審、最高裁も長くはかからないのでしょうが、未決囚として過ごす時間が少しでも長いといいですね。

 この事件については、先に書いた通り実行犯の「偽装破門説」があるほか、高価な自動小銃の入手法をめぐって疑問も報道されています。偽装じゃないとしても、破門された組員が「個人的に」数百万円の自動小銃を買えるのか、ということですね。

 銃の入手法や組織的関与については、一審公判廷でも検察側が追及していましたが、裁判官は認定しませんでした。被告人が「言えない」と言っている以上、確認は難しいからです。当たり前ですが、裁判所は、起訴された内容を審理します。この場合は「人殺し」の裁判で、そこは弁護側とも争いがないので、銃の入手法の解明とか細かいところはやりたくないのでしょう。

「ヤクザなら推認でも死刑」

 21世紀に入ってしばらくは、尼崎の事件のような裁判が大半でした。いいか悪いかは別にして、実行犯が罪を認めれば、裁判長も「ほんとは兄貴分がやったんじゃないの?」「親分の命令じゃないの?」とかは聞かずに審理していたんです。刑期も短かったですしね。ところが、最近は「親分の指示」を強引に結びつけることが増えている気がします。もちろん明確な殺人教唆は別ですが、直接的な証拠がなくても、組織的な犯行と結論づけたいようです。

 たとえば、今年1月の工藤會のトップの裁判ですね。構成員による殺人事件の関与を裏づける直接証拠はなかったのに、「推認」だけで総裁に対して死刑が求刑されたのです。もともと警察と検察は、最初から死刑を求刑する気満々でしたから、たくさんの間接証拠を出して「ヤクザだからやってるに決まってる」と「推認」したんですね。

 さすがに死刑は初めてでしたが、この裁判をきっかけに「推認でも死刑」と「より重罰化」が普通になっていくかもしれません。日本の刑事裁判は、「日本国憲法の下、被告人の人権保障を全うしつつ、適正かつ迅速な裁判を実現するための様々な規定が設けられて」いるそうですが、「ホンマかいな?」と思う裁判のほうが多いなとは思っておりました。これからも増えるかもしれませんね。 

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