「女性活躍」は経済政策で男女平等に興味なし──夫婦別姓に女性議員まで反対! 自民党に根付く男尊女卑思想

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2021年03月01日 12:03  日刊サイゾー

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 日本の衆議院議員の女性比率は、世界の193カ国中165位(2019年発表の調査)。2020年12月には、「選択的夫婦別姓」の文言が第5次男女共同参画基本計画から削除され、自民党の女性議員も同制度の反対に回った。先の安倍政権は「女性活躍」を喧伝したが、男性優位の社会を維持する政治は今も変わらない──。(サイゾー21年1月号「男性学」特集より一部転載)

 結婚する際に夫婦別姓か同姓かを選べる「選択的夫婦別姓制度」。その法制化は20年以上も議論が続いてきたが、2020年12月に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画案では、自民党内の反対派に配慮する形で、その文言自体が削除された。

 夫婦の姓を同姓とすることを法律で義務付けている国は、国会答弁で「我が国のほかには承知していない」と認められるほど、世界的に稀有なもの。自民党内の反対派の「家族の絆が壊れ、子どもに悪影響が及ぶ」という声や、その反対派に女性議員まで加わっている状況には、違和感を覚える人が多いだろう。

 そして日本の女性国会議員比率(衆院)は、世界の193カ国中165位で、G20諸国で最下位(19年発表の列国議会同盟の調査)。中央省庁の最高幹部(事務次官や局長)を占める女性の割合も5%以下と、男性が政治の権力を握る状況が続く。

 諸外国ではコロナ禍においても女性リーダーの活躍がニュースとなる中、なぜ日本の政治では圧倒的な男女格差が温存され、男性支配が継続しているのか。本稿では、政権与党の立場を維持する自民党の「政治とジェンダー」の問題に焦点を当て、有識者の声を参考にその背景をひもといてみたい。

 まず、近年の自民党においては、第二次安倍政権で「女性活躍」の推進が大々的に喧伝されたことが記憶に新しい。「すべての女性が輝く社会」なるキャッチフレーズも相まって、「女性のための政策を推進した政権」というイメージを持っている人も多いかもしれない。だが、東京都立大学の教授で、福祉国家論、社会政策論、ジェンダー政策などを研究する堀江孝司氏は、「安倍政権の女性活躍推進政策はあくまで経済政策でした」と話す。

「少子高齢化の進む日本において、第二次安倍政権では『女性の労働供給を増やすこと』を経済政策の柱のひとつとしていました。それは経済界の意向とも一致していたので、『女性活躍』という言葉を使い、その政策を推進したのです」

 堀江氏が論文中で引用した経団連の「2014 女性活躍アクション・プラン」には、「女性の活躍推進は、女性のための施策ではない。……人口減少社会においては、あらゆる人々の能力が最大限活用されなければならない」という文章まである。安倍政権の女性活躍推進政策は、実態としては経済のための「女性活用」推進政策だったわけだ。

 そして多くの人が指摘しているように、その女性活躍推進の施策の実施後も、女性の雇用者の半数程度が非正規雇用という状況は改善が見られない。そして安倍前首相が14年に宣言したのは「20年までに女性管理職比率30%以上」という目標だったが、20年時点でも10%程度。ジェンダー平等の観点から本気で目標達成を目指していたとは到底思えない数字で、達成年限は先送りになった。

「ただしマスコミもジェンダー不平等への関心は薄く、『女性活躍』というキャッチフレーズばかりを無批判に広めたことの効果は大きなものがあったと思います。安倍政権の女性活躍推進政策は専門家・研究者の評価は低いですが、10年後、20年後の世の中では、『安倍政権が掲げた女性活躍推進政策が、女性の地位向上のきっかけになった』といった認識が広まっている可能性もあるでしょう」(堀江氏)

 メディアの問題については、「安倍さんがジェンダー平等や男女共同参画にむしろ否定的な立場の議員だったことが報じられていないのも、大きな問題」と堀江氏は話す。

 男女平等や男女共同参画、ジェンダー運動などの流れに反対する運動・勢力は、「バックラッシュ」と呼ばれるが、安倍前首相はその中心にいた人物。第一次安倍政権の成立前年の05年に発足した「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」において、安倍前首相は座長に就任。夫婦別姓や、男女共同参画条例、男女混合名簿などに異議を唱えていた。

「そうした過去があったので、安倍さんは首相在任中も『男女共同参画』『ジェンダー』といった言葉を国会の答弁でほとんど使っていません。『女性活躍』という曖昧なキャッチフレーズを掲げたのも、大臣のポスト名に『女性活力・子育て支援担当大臣』『女性活躍担当大臣』という名称を使ったのも、そうした言葉を避けるためだと考えられます」(堀江氏)

 なお安倍前首相が座長に就任したプロジェクトチームにおいて、事務局長を務めたのは山谷えり子参議院議員。今回の選択的夫婦別姓についても反対側に回った自民党議員だ。文化人類学とフェミニズムの研究者で、日本の右派勢力の動向にも詳しいモンタナ州立大学社会学・人類学部の山口智美准教授は、「今回の選択的夫婦別姓に反対している議員には、日本会議とともに夫婦別姓反対活動を長年続けてきた人が多い」と話す。

「自民党では選択的夫婦別姓に反対する議員たちが、家族や地域社会の絆を重視する議員連盟『「絆」を紡ぐ会』を20年11月に立ち上げましたが、中心メンバーの高市早苗さんや、山谷えり子さんは日本会議と関係の深い議員です」(山口氏)

 今や多くの人が知る存在だが、日本会議は右派・保守系の団体としては国内最大級の組織。2015年時点で国会議員の約4割が参加していたことや、安倍前首相と思想が近く、安倍内閣の大半がその参加者だったことなどをご存じの方も多いだろう。なお日本会議の結成は97年だが、その前身団体の頃から、夫婦別姓への反対活動は始まっていたという。

「日本会議のウェブサイトに活動の歩みが記載されていますが、95年には『家族の絆を守り夫婦別姓に反対する国民委員会』が設立され、夫婦別姓法案の反対運動を始めています。翌年には『夫婦別姓に反対する地方議会決議相次ぐ(281議会)』との記載がありますが、地方議会の決議を次々と出していくのは、日本会議の典型的な運動法です」(山口氏)

 その後も夫婦別姓に反対する活動はズラリと記載されているが、90年代後半には「新しい歴史教科書をつくる会」の活動も活発化した。

「草の根保守運動に励む人たちは、そちらに力を入れすぎたせいか、男女共同参画社会基本法(99年施行)には目立った反対活動を行いませんでした。そして全会一致で同法が成立してから慌て始めたのか、男女平等や男女共同参画の流れに反対する『バックラッシュ』が始まったんです」(山口氏)

 その中では01年9月には日本会議内に「日本女性の会」という組織も誕生。「日本の家族を守る運動」や、夫婦別姓法案への反対運動などを断続的に行っている。

「『日本女性の会』が大きな集会を開くと、そこに国会議員の支援者として現れるのが高市さんや山谷さんたちでした。彼女たちはもう15年以上も夫婦別姓への反対活動を続けていますし、民主党政権で福島瑞穂さんが男女共同参画の内閣府特命担当大臣だった時期にも、法案の上程すらさせていません」(山口氏)

 ここまで説明してきた流れで、「『女性活躍』を叫んできた自民党が選択的夫婦別姓に反対するのはなぜなのか」「なぜ女性議員にも反対側に回る人がいるのか」は理解できただろう。

 無論、日本会議などの保守系の団体の家族観が、自民党の政策に与えた影響は非常に大きい。その具体例と言えるのが、「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない」という文言が加わった改憲草案24条や、国家が求める家庭像や親像を提示し、その実現を責務として国民に求める「家庭教育支援法」など、安倍政権が成立を目指してきた法案だ。

「『家庭教育支援法』はイデオロギー政策といえるものですし、第二次安倍政権下で行われた三世代同居への対応を支援する施策なども、イデオロギー的にしか意味をなさないものでした。そうした政策の背後には、日本会議をはじめとする保守系の支持団体への配慮が見受けられます」(堀江氏)

 自民党はときに経済的な利益や社会的な問題の解決よりも、「支持団体への配慮」を優先し、政策を決定していたわけだ。

「その点でいうと、婚外子の相続差別の違憲判決が13年に出た際に、高市早苗さんが『子に罪がないと言われればぐうの音もでない』とコメントしつつ、『悔しい判決だった』と述べていたのが象徴的でした。高市さんは選択的夫婦別姓についても“家族の絆”を重視する立場から反対の姿勢を示していましたが、おそらく自民党の政治家の中には、自分たちの理屈に無理があると気づいている人も多いのではないでしょうか。選択的夫婦別姓について、『家族が壊れる』という意見もありますが、夫婦別姓により家族が崩壊したという報告は特にないわけですから」(堀江氏)

 さらに、自民党の「家族の絆」を重視する政策態度は、単純に復古的なものではない点にも注意が必要だ。

「早川タダノリさん(『まぼろしの「日本的家族」』などの編著もある編集者・著述家)などがよく書かれていることですが、自民党の家族観はネオリベ的な自助の考えと深く結びついています。そのコアとなっているのが、79年に故大平正芳首相が掲げた『家庭基盤の充実』の政策です。右派の論客として知られる八木秀次氏や高橋史朗氏も、その考えをモデルにすべきだとたびたび提唱しています」(山口氏)

 家庭基盤の充実を掲げた演説で大平首相は「家庭は社会の最も大切な中核であり、充実した家庭は日本型福祉社会の基礎であります」と述べ、「各家庭の自主的努力」「日本人の持つ自立自助の精神」といった言葉も使っていた。そして自民党が同年に発表した「家庭基盤の充実に関する対策要綱」では、「老親の扶養と子供の保育としつけは、第一義的には家庭の責務であることの自覚が必要」との言葉もあった。つまり日本型福祉社会とは、個人・家庭の自助努力を第一として、福祉予算の削減を目指す社会とも考えられるのだ。

「『まずは自助に任せる』『家のことは家でやるべき』という考え方ですね。そうした日本型福祉社会では『介護も家で』となりますし、誰が介護するのかといえば、女性がすることになる。つまり『家族の絆』を重視する自民党の政策の根底にあるのは、性別役割分業とネオリベ的な考え方が合体した思想なわけで、その考え方は自民党の改憲草案24条にも、菅首相の政策理念である『自助・共助・公助』にも通底しています」(山口氏)

 自民党が「家族の絆」の言葉のもとに掲げる政策は、「男は仕事、女は家庭」という男性稼ぎ主モデルを前提としているものともいえ、そこでは女性が家族のケア労働を引き受けることが想定されている。なお近年の自民党は、経済政策として「希望出生率1・8」を掲げたり、婚活支援に取り組んで「企業子宝率」という指標を作ったりと、女性の結婚・妊娠の支援には比較的熱心。「男女共同参画社会の実現」という表向きの目標とは裏腹に、女性を「家族」の中に閉じ込めておきたい……という本心も透けて見える気がしてならない。

 このように自民党が取り組んできた政策は、結果として男性優位の社会を維持するものが目立つ。女性活躍推進政策が実態としては単なる経済政策で、一部ではむしろ女性の貧困問題を深刻化させるものだったことからもわかるように、議員の大多数はジェンダー平等の問題には無関心なのが実情だろう。だが最近は、その状況にも小さな変化が見えはじめている。

「例えば稲田朋美さん(衆議院)は保守派として知られた政治家ですが、近年は未婚ひとり親世帯への支援についても積極的な発言をしていますし、夫婦別姓についても独自の制度の新設を提案するなど、一定の理解を示していますよね。その行動については『彼女が首相の立場を目指しているからではないか』という分析もメディアで出ています。夫婦別姓制度への態度の変化は保守層から非難を浴びているようですが、稲田さんは選挙に強い政治家なので、特定の支持団体の意向をそれほど気にせずに意見を述べられる余地があるのでしょう」(堀江氏)

 また20年3月8日の「国際女性デー」には、橋本聖子女性活躍担当大臣がメッセージを発表。新たな男女共同参画基本計画については「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの取り組みを強化する基本計画にしたい」と表明した。

「橋本さんは日本会議国会議員懇談会のメンバーではありますが、彼女のコアな支持層が道徳的保守勢力だけではないということもあるのかもしれませんし、『SDGs』の17の目標のひとつに『ジェンダー平等』が入っているので、その言葉を使いやすくなった面もあるのでしょう。またバックラッシュの時期に『ジェンダーフリー』という言葉を行政が使わなくなり、『ジェンダー』という言葉の使用自体が避けられてきたという歴史が、今や忘れられつつあるのも大きいと思います」(山口氏)

 そのように自民党内の議員の態度に変化が見られるのは、安倍政権から菅義偉政権へと変わったことも大きいだろう。

「菅さんは安倍さん以上にネオリベの色が強く、規制緩和の推進派ですが、安倍さんのような“伝統的家族観”は持っていないように見えます。また『やってる感を出してるだけ』とも言われますが、不妊治療の保険適用など細かな政策は進めている。選択的夫婦別姓についても、『実現すれば政治的利益がある』と踏めば、そちらに動く可能性もゼロとは言えません」(堀江氏)

 しかし、表向きで「ジェンダー平等」という言葉を使っている自民党の政治家が、本当にジェンダー平等に熱心に取り組んでいるかというと、そうではないケースも多そうだ。

「内閣府の男女共同参画局のホームページを見ると、『男らしさの縛りを解きほぐす』というコラムが掲載されていたり、『「“おとう飯”始めよう」キャンペーン』というページがあったりと、意識改革の部分での努力は見受けられます。それはそれで大切なことだと思いますが、制度改革が進んでいないのが問題です。キャンペーンを行うだけで制度を変えないのは、『制度が問題なのではない。市民の意識が低いのが悪いのだ』という政府の言い訳にも感じられます」(山口氏)

 意識改革ばかりを訴えて、具体的な制度改革が遅々として進まない状況は、新型コロナウイルスの対策にも重なる悲しい状況だ。

 なお海外では、選挙における候補者や議席を男女に一定比率で割り当てるクオータ制が広く用いられており、下院議会で同制度を導入している国は100カ国を超える。ジェンダーギャップの解消のために選挙制度にもメスを入れているわけだが、男性ばかりの自民党の議員が身を切る改革を行う可能性は、選択的夫婦別姓の導入よりもさらに遠い先だろう。一方で選択的夫婦別姓について実施された意識調査では、若い世代ほど「賛成」が多くなるなど、世の中の意識は変わりつつある。ジェンダー平等の問題についてはそうした世論の変化に寄り添いつつ、マスメディアも根気よくアジェンダ設定を行っていくことが求められるのだ。

(取材・文/古澤誠一郎)

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  • 社会が疲弊していては活躍の場が限られる。男女はすでに平等であり、その平等を利用していないだけだ。加えてLGBTなどと言う個人の性的嗜好まで捩じ込もうとするら嫌われるんだよ。 https://mixi.at/a4RVw7Y
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  • 夫婦別姓と男女平等を絡めないで。
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