【創刊99年企画】100年前から若返りとダイエットは人気 健康記事と世相

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2021年03月01日 17:00  AERA dot.

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写真鍛える三島由紀夫の写真が掲載されたボディービルの記事
鍛える三島由紀夫の写真が掲載されたボディービルの記事
 飽食の時代を生きる現代人にとって、健康や美容は大きなテーマ。だが、実は少なくとも大正時代から、そうしたジャンルへの関心は高く、週刊朝日の99年間を振り返ると、現在と同様に多くの記事を載せている。

【健康に関する主な施策とトピック この100年を振り返る】

 創刊した1922(大正11)年には、早速、若返りの極意を書いた連載「所謂(いわゆる)若返り法に就(つい)て」が登場。好評だったようで、「再び若返り法に就て」「新若返り法」と続く。

 この時代の記事について医療制度に詳しいニッセイ基礎研究所主任研究員、三原岳さんはこう分析する。

「大正時代は大衆化が進んだ時代。今に通じる価値観があったので、美容や健康など、暮らしを豊かにする記事が多かったのではないか」

 若返りというと美容のイメージが強いが、記事では加齢で動脈硬化が起こることを指摘、むしろアンチエイジングに近い内容だ。

「若(も)しお前さんが酒色に耽溺(たんでき)し、贅澤(ぜいたく)と怠惰の擒(とりこ)となつて、不規則な擒生活を續(つづ)けるならば、お前は生(うま)れながらに得たる天然の尊い権利を、塵芥(ごみ)箱の裡(うち)に捨てるやうなものだ」と忠告した上で、「朝起きたら伸びをし、深呼吸をする」「過食はしない」「頭と歯を清潔にする」。

 現代と、表現に違いはあるが、内容は変わらない。要は、不規則で不摂生な生活をしないように、ということだ。

 一方で、美を追求する女性に向けた記事も。翌年、「肉體(にくたい)美運動法」として前屈や腹筋運動、腕立て、背中を反らす運動などが載っている。

 ダイエット企画もすでにあり、記事では「安全に痩せる方法」を紹介(25年)。やせたほうがいいのは、「肥(ふと)っているとどうしても体を動かすのがおっくうになる」「通じが悪くなり、便秘が起こる」「血の巡りが悪くなって、骨盤に充血を起こす」からで、気になるやせる方法は、「食後1時間にレモン汁を搾って砂糖水に混ぜて飲む」。1日1個から始め、20個まで増やす。こうすると10〜15キロ体重が減るらしい。胃が痛くならないか気になるところだが……。

 昭和初期は、栄養に関する記事を連載。血液が酸化することを「酸過多症(あるいは酸毒症)」とし、予防法を紹介している。酸化はいつの時代も体によくないのだ。

 40年代半ば以降は、様相が一変する。

「戦時中は、健康な兵士と国民を作る政策が展開され、総力戦を担うための健康づくりが強調されました」(三原さん)

 例えば、42年の記事「勝ち抜く為に生活の切下げ」では、「大東亜戦争による大増税」のために生活の切り下げをする術について専門家が語り合う座談会を掲載。「食物の不足で却(かえ)って健康の向上」と、食糧不足を問題とせず、肯定する見出しを掲げた。

「戦後は、食糧難による低栄養を解消することに必死で、健康、若返りどころではなかったでしょう。47年には、一人の裁判官が闇米を拒否し、国の配給する食べものだけを取り続けた結果、栄養が足りず餓死したという事件もありました」(同)

 再び健康が注目され始めるのは、朝鮮動乱が起き、日本が軍需景気に沸く50年代になってからだ。

 51年には医師のコラムで「やせ方・肥り方」を指南。今でもはやっている「プチ断食(週に1度、日を決めて断食)」や、納豆による「腸活(腸内細菌をコントロールする)」などが採り上げられている。納豆は消化がよい割にカロリーが高く、太るためのお薦め食材、というところが興味深い。

 若返り法はより過激になって復活。52年の記事「ホルモン美容法」には、牛の脳下垂体の一部やホルモンの結晶を圧縮した錠剤をお尻などに埋め込む施術を採り上げた。俳優や女優もこぞって治療を受けていたようだ。

「皮膚に潤いが出て、身長が伸びた」「疲れがなくなった」といった女性の声のほか、

「精力の調子が良く、この前も年甲斐もなく〜」

 という65歳男性の声を紹介している。

「50年代半ば以降の高度経済成長期になると、日本のライフスタイルにも変化が出てきました。俗に言う“欧米化”です。51年には死因順位の第1位が、結核から脳血管疾患に変わりました」

 こう話すのは、生活習慣病の変遷に詳しい草津総合病院病院長で糖尿病専門医の柏木厚典さん。

 このころは、健康法も欧米化。「V字型の男性美」と紹介しているのが、ボディービルブーム(55年)。当時バーベルは1300〜1700円、ダンベル(20キロ)は4千円。週刊朝日は30円なので、かなりのお値段だ。

 ちなみに筋肉を付けるだけではダメで、柔軟性も必要とのこと。「田植えをする場合に、腰が十分に曲がらなければ、ちっとも能率は上がらない」からだ。

 そこから少し後になるが、72年のエアロビクスブームもアメリカからの輸入だ。「酸素の摂取量が毎分35ミリリットルを超える運動を1週間で6日間、一定時間続けると、脂肪が燃焼して筋肉が締まってくる」と紹介。これだけの酸素を摂取するには、1回15分の縄跳びを週に5日続けることに加え、ゴルフをワンラウンド、通勤時に心拍数が上がるほどの早歩きで歩く必要があるとしている。遊び半分ではこなせない。

 鍛える系の健康ものがブームになる一方で、深刻化していったのは肥満。60年ごろから脂肪摂取量がグンと増え、ぜい肉を蓄える日本人が続出した。

「日本人の総摂取エネルギー量は昔と今とであまり変わっていません。変わったのはその内容です。穀物が減って、脂肪と単純糖質が増えています。糖尿病の患者さんも、50年代は肥満の人は少なかったのですが、90年代以降は4割以上に増えています」(柏木さん)

 単純糖質とは、砂糖や果糖を用いたソフトドリンクなどのことをいう。

 記事もこのころから、高血圧や糖尿病、心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など生活習慣病や脂質の問題を扱うもの(「『過酸化脂質』─この中年デブ殺し真犯人の正体」「四人に一人は発病の素質 急増した糖尿病をどう防ぐか」など)が目立ってくる。

 こうした成人病やがんの予防として、みそ汁を推す。今も昔も体にいいものは変わらないということか。記事では「具材を多くすると栄養が増え、具が増えるぶん汁が少なくてすむ」とし、大豆製品は海外で注目されていることにも触れている。

 96年、成人病と呼ばれていた病気の一群は、生活習慣病に名称が変わる。

「肥満を背景として、これらの病気が低年齢化したためです。食生活や運動習慣、飲酒、喫煙などの生活習慣が発病に大きく関与することから、予防に努めることを重視するようになりました」

 と柏木さん。これらの病気には共通して内臓脂肪が作り出す悪玉物質のサイトカインが影響することがわかり、2005年にはメタボリックシンドロームという概念が登場した。

 週刊朝日は早い段階で「長寿」に注目している。興味深いのが1967年の記事「あなたも一〇〇歳まで生きられる」で長寿10原則を載せている。ちなみにこのときの平均余命(40歳の人が何歳まで生きられるか)は、男性73歳、女性が77歳(グラフ)だ。100歳以上は252人(当時の厚生省調査)。2020年は8万人超なので、300倍も増えている。

 10原則は、(1)生まれつきの素質(2)健康な食生活を送る(3)働く(4)睡眠や休息を取る(5)適度に運動する(6)円満な家庭(7)清潔にする(8)趣味を持つ(9)病気の早期診断を受ける、最後は(10)生きる意思を持つ、でなるほど納得だ。

「介護保険の創設に向けて、問題提起の一つとなった記事」と三原さんが指摘するのが、「老人病棟」シリーズ。記者がさまざまな老人病棟に潜入し、問題点をあぶり出すルポだ(1985年〜)。「ボケ老人をさらにボケさせる薬を人体実験してみました」では、入院患者を、ベッドに縛り付けるのと薬を使うの2本立てで自由を奪う病院を紹介している。介護保険制度が始まったのは15年後の2000年だ。

 健康ブーム関係では、「ヨーグルトきのこの正体はこれだ」(1994年)で過熱ぶりを紹介。「閣僚がこぞって信奉する野菜スープの『怪人』」(同)では、末期がんの患者を回復させるとうたったスープと、それを広めた人物を徹底追及する。

 2000年以降はダイエット法や長寿法、健康法が目白押し。超高齢社会となった世の中の関心が、健康や病気予防に向いたということだろう。(本誌・山内リカ)

※週刊朝日  2021年3月5日号

このニュースに関するつぶやき

  • コレは日本の雑誌の特集 でも、文明が始まってから人間は健康志向に事欠かない https://mixi.at/a4RJWQ5
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  • 大丈夫か? 朝日がいかに世間を煽ってきたかの歴史だったぞw
    • イイネ!22
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