女優いとうまい子さんが「老化学」研究 50代から早稲田大学博士課程へ

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2021年03月03日 11:35  AERA dot.

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写真仕事と両立する研究生活は大変だが、「仕事が気分転換になるときもあります」(写真/小野田尚武)
仕事と両立する研究生活は大変だが、「仕事が気分転換になるときもあります」(写真/小野田尚武)
 45歳で早稲田大学に入学。現在は博士課程で「老化学」の研究を続け、企業と共同で介護予防ロボットの開発にも取り組む、女優のいとうまい子さん。『早稲田理工 by AERA 2021』のインタビューで、56歳の今もなお、学び続ける理由を聞いた。

【別カット】50代には見えない!聡明な瞳にかわいらしさも
*  *  *
 私は高校卒業と同時に芸能界に入り、たくさんの方たちに支えられて仕事を続けてきました。デビューから10年20年と時が経つにつれ、お世話になった方たちに恩返しがしたい、社会の役に立ちたいと考えるようになったんですね。ただ、恩返しをしようにも、自分の知識も経験も少なすぎて、何をしたらいいのかわからないままでした。

 そんなときある仕事がきっかけで、「予防医学」に関心を持ちました。今後高齢化が進み、医療財政が厳しくなる中で、病にかかってから治療するのではなく病にかかりにくい体をつくり健康を維持する予防医学は、重要になっていくはず。その知識を身につければ、恩返しにつなげられるかもしれない。受け売りの知識ではなく、きちんと勉強してみたかった――というのが、大学を志した大きな理由です。大学以外でも学ぶことはできますが、今まで経験したことのない「大学」への憧れもありました。

 ただ、仕事を続けながら毎日通学することはできません。いろいろ調べたところ、早稲田大学人間科学部のeスクール(通信教育課程)に予防医学を扱う健康福祉科学科があると知り、背中を押されたような気がしました。

■運動習慣を働きかけるロボットが完成

 初めて経験する大学の勉強はすごく楽しかった。医療資格を持つ教員から実践的な話を聞く機会もあり、視野が広がりました。なじみのない分野の授業もありましたが、振り返ってみると無駄なものはなかったですね。統計学もその一つで、いま大学院で老化学の研究をする中で、統計の大切さを実感しています。

 eスクールは、毎週日曜日の午後11時59分までに課題のレポートを提出しなければ欠席扱いになってしまうため、想像以上にきつかったです。ロケ先にパソコンを持ち込んで授業を受け、レポートを仕上げたこともありました。

 3年次からは、ロボット工学のゼミに所属。実は予防医学のゼミに入れるものだと思っていたのですが、担当教授がその年度で退職することになって新規のゼミ生の受け入れを停止するというんですね。困り果てて同級生に相談したところ、ロボット工学の教授のゼミは人気があるよと。ロボットをやろうなんて考えたこともありませんでしたが、調べてみるとロボットの活用範囲は広い。そこで教授に「予防医学とロボットを融合させたら、いろいろなことができると思う」と熱弁をふるい、ゼミに入れていただきました。

 さっそく取り組んだのが、「ロコモ予防ロボット」の開発です。運動習慣がロコモティブシンドローム(運動器の障害や衰えで要介護になるリスクが高まる状態)を防ぐことは多くのデータから明らかなのに、簡単な運動でも毎日続けるのは難しい。それを促すための装置を作ろうと。

 ゼミの2年間で作ったロボットは課題が山積みで完成とはいいがたいものでしたが、国際ロボット展で展示したところ、ある企業の方が「いい取り組みだから、この先修士に進んで研究を続けるなら協力しますよ」と声をかけてくださったんです。

 それまで大学院がどのようなところなのかすら知らなかったのですが、この一言がきっかけで、大学院への進学を決意。修士課程で、定期的にスクワット運動を呼びかけるロボット「ロコピョン」を完成させました。

 現在は博士課程の5年目。ロボット工学から領域替えをし、「老化学」の研究をしています。これも成り行きで、「修士課程を修了したあとももう少し学びたい」と考えていたのですが、ロボット工学の教授は博士課程を受け持っていなかったんですね。

 しかしちょうどそのころ、老化学の教授が早稲田に着任。博士課程も受け持つと知って、ロコモや抗加齢を考えるなら老化学の研究室で細胞レベルまで踏み込んで研究を進めたくなり、教授に掛け合いました。「カロリー制限をすると長寿になる」という過去の研究に基づき、マイルドな食事制限をすると細胞にどのような遺伝子が発現するかといったことを、マウスを使って調べ、論文を執筆しています。

 ロボットの研究も継続中。新たに声をかけていただいたAIベンチャー企業と共同でロコピョンとは異なる介護予防ロボットの開発に取り組み、実用化を目指しています。

 今は老化学もロボットも研究が面白くて、・壮大な趣味・になりつつあります。博士課程まで学び続けてきましたが、私が望んだのは「大学に入学しよう」と思ったことぐらい。その後は自然と道が開け、その流れにあらがわずに進んできただけ。今後思わぬ方向に行く可能性もある。ゴールが見えないからこそ楽しくて、学び続けたいと思うのかもしれません。

#プロフィール
いとう・まいこ/1983年アイドル歌手「伊藤麻衣子」としてデビュー。現在はドラマ、情報番組、バラエティー番組などに多数出演。2014年早稲田大学人間科学部eスクール健康福祉科学科卒、16年同大学院人間科学研究科修士課程修了、現在博士課程在籍。ロボット工学などを通してロコモティブシンドロームの予防を研究している。

(構成・文/熊谷わこ)

このニュースに関するつぶやき

  • この人はインターネット関係もかなり昔からやっていて、1995年に自身のドメイン mai.co.jp を取得してしまったのがすごい。特に .co.jp ドメインは自分で会社を興さないと取れないし。
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  • ご本人が老化しない理由も解明して頂きたいものですね(笑)
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