恋愛推奨、髪形フリー、先輩クン呼び。これが令和のサッカー部の新常識!?

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2021年03月03日 11:51  webスポルティーバ

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<美容室と提携するサッカー部>

 昭和・平成・令和と時代が変化していくのに伴い、部活動の在り方が変化している。とくに大きな変化が見られるのは高校サッカー界だ。




 代表的な例は、縦関係の変化だろう。昭和の部活動では、「〇〇先輩」と呼ぶのが当たり前。後輩にとって先輩ほど恐ろしい存在はなく、直立不動でありがたい話を聞くのが当たり前だった。

 だが、縦関係が緩やかなJリーグのアカデミーや、中学年代のクラブチームが全国的に広がっていったことで、高校サッカーでも変化が見られるようになった。今では、どのチームも「クン付け」で呼ぶのは当たり前。試合でのコーチングでは、呼び捨てである選手も珍しくない。ピッチに立てば上下関係はなく、同じチームの一員という意識が根付き始めている。

 髪形に関しても変化が見られる。以前の強豪校は、プレーに支障がでないようにと坊主頭やスポーツ刈りの選手が主流だった。また、決められたルールを守れなかった罰として頭を丸めるといった話もよく耳にした。

 しかし、坊主頭のチームのイメージが強い長崎県国見高校の、小嶺忠敏元監督(現・長崎総合科学大学附属高校総監督)も今は強制していない。印象に残っているのは、3年前の高校サッカー選手権だ。大会直前に風邪を引いたため、「不運を取り除くため、刈り上げたかった」とバリカンを手にとったMF鈴木冬一(現ローザンヌ)にチームメイトもつづき、6名が坊主頭となったのだ。

 小嶺監督が「俺がやらせたと思われるから、やめてくれよって言ったんです。(坊主頭を)楽しんでいるんですよ、彼らは。(彼らが)悪いことをしたわけではないんです」と苦笑いしていたように、部活動や青春の象徴として、坊主頭を楽しんでいるのが、今どきの選手と言えるだろう。

 髪形に関しては、興味深い取り組みを始めたチームがある。MF村越凱光(松本山雅FC)、DF川前陽斗(アスルクラロ沼津)と2年連続でJリーガーを輩出し、注目を集める福岡県の新興・飯塚高校だ。

 昨年末に福岡市にある美容室「メリケンバーバーショップ福岡」とパートナーシップを締結。今年1月から、Jリーガーのヘアカットも行なうヘアデザイナーの沼田有斗氏が月に1度学校を訪れ、希望する選手のカットを無料で行なう取り組みを始めた。

 ヨーロッパのプロサッカーチームでは、美容師がチームに帯同するのは当たり前。マンチェスター・シティではロッカールームでヘアメイクを終えてから試合に挑む。アメリカの大学では構内にある理髪店で、髪形を整えてから競技に励む選手が少なくないが、日本では例を見ない取り組みである。

 中辻喜敬監督は、その理由について、「似合った髪形にしたり、カッコいいユニフォームを着たり、見た目を良くすると気持ちが高まります。気持ちが高まれば、プレーが良くなっていきます」と話す。

<恋愛推奨。日曜日をオフに>

 多数のJリーガーを輩出する大阪府の興國高校では、恋愛を推奨しているのが特徴だ。理由について、内野智章監督はこう明かす。

「サッカーだけさせていると、サッカーしかできない人間になります。では、サッカーを辞めた時にどうやって好きな子とお付き合いをするの? って思うんです。社会に出たら遊びに歯止めがきかず、潰れてしまう選手も少なくない。プロになれるのは、3000人にひとりくらい。2999人はプロにならない人生を歩むのだから、幅広い選択肢の一つとしてサッカーがあるといった育て方をしなければいけないんです」

 内野監督は、幼馴染とゴールインしたリオネル・メッシ(バルセロナ)らの名前を挙げ、恋人がいながらもサッカーに打ち込む重要性を説いているという。

 サッカー部の多くが、週末の試合が明けた月曜日をオフに設定しているが、興國高校は公式戦が入らない限りは、日曜日に設定している。月曜日がオフだと夕方までは授業があるため、遊びに行ける場所は限られているが、日曜日が丸一日使えると選択肢は広がる上に、サッカー部以外の生徒とも予定が合わせやすい。

 過去にはUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の年間チケットを購入し、頻繁に通っていた生徒がいたのも、こうした取り組みのおかげだ。今年は2月14日のバレンタインデーが日曜日だったため、内野監督に「絶対にオフにしてください!」と直談判した選手がいたというのも微笑ましい。




 サッカーを頑張りながら、選手がひとりの高校生としての経験も積んでいくのがこれまでとの違い。そうしたお願いがしやすい指導者との関係性も、昭和や平成との違いだろう。

<ITの活用は当たり前に>

 ITを活用するチームが増えているのも、近年の流れだ。とくに積極的に活用しているのが、3年連続で高校サッカー選手権に出場中の徳島市立高校(徳島県)。6年前からコンディション管理を行なう「Atleta」というアプリを使っている。

 選手が撮影した朝・昼・夜の食事をアップロードするだけで、栄養素の過不足を分析してくれるほか、睡眠時間や疲労度・身体の症状を記録することができる。これらの情報を選手・スタッフが手軽に見られるのが、アプリの売りだ。

 以前は選手それぞれが紙に記入し、管理していたが、日を追うごとに量が増え、見る選手も管理する指導者も大変だった。だが、今はスマートフォンさえあれば管理できるため、遠征先でも手軽に記録できる。また、事前に身体の状態を把握できていれば、ケガの予防にもつなげることができる。導入してからは、選手のコンディショニングに対する意識も向上したという。

 また、昨年度からはゲーム分析ツール「SPLYZA Teams」も導入した。これまでは河野博幸監督がコメントをつけた試合動画をYouTubeにアップロードするなど手間暇がかかっていたが、こうしたツールでは、選手ごと、攻守別、良いプレー・悪いプレー、セットプレーなどを誰もが簡単にタグ付けでき、見たい場面が見られる。

 手軽さと便利さから高校サッカー界で広まっており、昨年度の高校サッカー選手権では全国に出場した13チームが活用していた。ラグビーやバスケットボールなど他競技でも使用するチームが増えている。

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 両アプリ共に手軽さがキーワードで、河野監督は「サッカーの練習とは別に時間を取ると、時間のロスになるので、効率よくいろんな作業を進めたい。アプリを使えば休み時間などちょっとした隙間時間に利用できるため、勉強は勉強、サッカーはサッカーと区切りをつけられるのがありがたいですね」とメリットを口にする。

 ITでは、昨年からクラウドファンディングを活用するチームも増えている。

 これまでは全国大会に出場する際は、OB会や保護者の寄付に頼っていたが、クラウドファンディングを活用すればより多くの人から資金を募れるためだ。

 沖縄県の那覇西高校では、昨年度の高校サッカー選手権にかかる費用をクラウドファンディングで募った。もともと沖縄県のチームは遠征に出るために飛行機やフェリーが必要で、他県のチームよりも金銭的な負担が大きい。加えて、昨年は新型コロナウイルス感染防止にかかる費用も増えた。宿泊は、コロナ禍でJリーグのチームを受け入れた経験を持つ感染対策が万全なホテルへとグレードアップ。部屋も密を避けるため、今までよりも少ない人数での部屋割りを余儀なくされた。

 当初は「Go Toトラベル」を活用し、選手の負担を減らそうと考えていたが、大会直前になり利用が停止されたのは誤算だった。ただ、チームの苦境が報じられると、チーム関係者だけでなく、県内外の有志からの支援が増え、想定を遥かに上回る金額が集まったという。

 平安山良太監督は「クラウドファンディングをやっていなかったら、選手権には行けなかった。支援を通じて、いろんな人から応援されているんだと改めて感じたし、今まで以上に選手が感謝の気持ちを持つようになったと思います」と口にする。遠征費に苦しむのはサッカー部だけではないので、今後は他競技でもクラウドファンディングを活用する沖縄県のチームが出てきそうだ。

 令和の時代に受け継いでいきたい伝統もあれば、新たな時代に合った取り組みもある。「先輩たちがやってきたから」との理由だけで、しきたりを守りつづけると不具合も生じる。反対に目新しい物に食いついてばかりでは、失う物もあるかもしれない。選手に必要な物は何か、取捨選択をすべき時代かもしれない。

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