「Xperia PRO」は約25万円の価値あり! 5Gミリ波通信からHDMIライブ配信まで徹底検証

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2021年03月03日 12:12  ITmedia Mobile

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写真ソニーモバイル製「Xperia PRO」は、業務用映像機器としての機能を持ったスマートフォン。カメラとHDMIで接続し、ライブ配信やマスターモニターに沿った性能の高性能外部モニターとして利用できる
ソニーモバイル製「Xperia PRO」は、業務用映像機器としての機能を持ったスマートフォン。カメラとHDMIで接続し、ライブ配信やマスターモニターに沿った性能の高性能外部モニターとして利用できる

 ソニーモバイルから、映像制作者向けのAndroidスマートフォン「Xperia PRO」が発売された。実売価格が25万円前後(税込み)のSIMロックフリーモデルで、ソニーストアや家電量販店などで購入できる。



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 大きな特徴は、スマートフォン初のHDMI入力端子を搭載し、5Gミリ波(28GHz帯)に対応したこと。販売対象はプロの映像制作会社や報道局、カメラマン、ユーチューバーなどを想定した、価格と機能ともに異色の“Pro”モデルだ。



 ただ一般的なスマートフォン利用者からすると、これだけではなぜ実売価格25万円なのか、何が “Pro”なのかピンと来ないだろう。この記事では最初にXperia PROの概要を紹介し、後半で5Gミリ波の速度測定や、“Pro”らしいHDMI入力やライブ配信用途を紹介する。



●Xperia 1 IIをベースに、5Gミリ波や映像機器としての便利さを追求



 ソニー製品でプロモデルといえば、製品名に“Pro”を冠した一般向けの上位モデルと、映像・音響分野などの“プロ向け業務用製品”がある。Xperia PROはその中間、どちらかといえば後者の業務用製品寄りで、特別な用途での安定した動作に重きが置かれたモデルだ。



 スマートフォンとしての基本仕様は、ベースモデルの「Xperia 1 II」とはほぼ同等。6.5型で比率21:9の4K(1644×3840ピクセル)有機ELディスプレイと、ハイエンドプロセッサのSnapdragon 865を搭載。カメラは広角(24mm相当)、超広角(16mm相当)、望遠(70mm相当)の1200万画素トリプルカメラだ。防水(IPX5/IPX8)・防塵(じん)(IP6X)仕様で、指紋認証や4極イヤフォン端子も利用できる。



 ハードウェア周りの特徴として、後述する5Gミリ波対応とHDMI入力端子に加えて、登録した機能をサイドボタンで起動できるショートカットキーが追加された。よく利用するアプリを登録し、ワンタッチで起動できる。ストレージ容量は512GBに増量された。



 Xperiaシリーズ独自の機能は、一眼デジタル風の操作と絵作りのカメラ「Photography Pro」、業務用シネマカメラ風撮影が可能な「Cinematography Pro」、ゲームアプリの支援機能「Game enhancer」ともに利用可能だ。これらの機能の詳細はXperia 1 IIのレビュー記事を参照してもらいたい。



 新たに、後述する「外部モニター」と、テザリングとHDMI入力利用時に限り本体が熱くなっても動作を続ける「パフォーマンス持続モード」を搭載。5Gミリ波とHDMI入力に合わせて、内部の放熱設計も強化されている。



 一般のスマホ好きなら「パフォーマンス持続モード」有効時のベンチマーク結果も気になるかもしれない。そこで、AnTuTuベンチマークを実行。Game enhancerはパフォーマンス優先に設定し、パフォーマンス持続モードはUSBテザリングで有効にした。



 結果はスコアが微妙に上積みされた程度で、あまり違いは見られない。Xperia 1 IIなど他のSnapdragon 865搭載モデルとほぼ同等だ。もともと搭載チップをオーバークロック動作させる機能ではないので妥当な結果といえる。



 Xperia PROでは省かれた機能もある。Xperia 1 IIに搭載されていたおサイフケータイ向けのFeliCa(NFCは搭載)と、ワイヤレス充電は搭載されていない。また、Xperia 1 IIはAndroid 11へのアップデートが開始されつつあるが、Xperia PROの初期OSはAndroid 10だ。



●実測1.7Gbps超え 高速な「5Gミリ波」に対応



 ここからは、Xperia PROの“Pro”らしい機能について見ていこう。「5Gミリ波の高速データ通信」「HDMI対応の外部モニター」「HDMI対応のモバイルライブ配信デバイス」の順に紹介していく。



 Xperia PROは5Gミリ波(28GHz)とSub-6(3.7GHz帯、4.5GHz帯)の両方に対応。ミリ波はSub-6よりもさらに高速で、対応したスタジアムでのスポーツやイベント報道においては、写真や動画のアップロードに役立つことが期待される。



 だが、ミリ波はスマホへの搭載や直進性が高く、エリア拡大が難しい周波数帯だ。このため、現状はほとんどの5Gスマホが対応しておらず、エリアも都心や主要施設のごく一部をスポット的にカバーする程度という点は留意しておこう。2月時点でXperia PROが対応している5Gミリ波はauとドコモ(ソフトウェアップデートが必要)のみだ。



 5Gミリ波対応のため、Xperia PRO本体も最適化された設計となっている。具体的には本体の放熱設計を見直し、本体上下左右のアンテナで360度全方向の電波を受信可能にしている。本体の外装も、電波を阻害しないよう梨地仕上げ風の樹脂素材を採用している。



 4G LTEの対応バンドが多く、SIMロックフリーのデュアルSIM対応という点も見逃せない。対応バンドはiPhone 12シリーズ並みに多く、国内外で利用しやすくなっている。通常は海外渡航の多い報道や映像制作者にとって、データ通信から普段使いの通話まで使いやすい。



 さらに、通信状況を確認できる「Network Visualizer」アプリを搭載。5Gミリ波と接続した場合に限り、どの方向の電波を受信しているかまで表示される。子画面表示にも対応し、ファイル転送やライブ配信時のモバイルデータ通信のトラフィックを確認できる。ただし、Wi-Fi接続時はトラフィックが表示されず不便に感じた。



 では、5Gミリ波とSub-6の違いを見ていこう。auの回線を利用して品川シーサイド近辺で速度をチェックした。



 ミリ波のエリアでは下り1.7Gbps以上、上り300Mbps以上と、4Gはもちろん5G Sub-6とは桁違いの速度を記録した。これだけの速度が出るなら、容量制限を気にせず写真の送信やライブ配信を利用しやすい。5G Sub-6も、下り400Mbps前後、アップロード30Mbps前後と十分高速だ。ミリ波と比べると遅いように見えるが、日常利用では十分すぎる速さだ。



 Xperia PROではソニーの最新ミラーレス一眼「α1」や「α7S III」などにUSBテザリングで接続し、撮影しながら報道局のサーバなどにFTPでアップロードする、または後述するライブ配信での用途が想定されている。



 実際のところ、αのUSBテザリング撮影だけなら内蔵Wi-Fiや有線LAN、他社スマホの5Gでも利用できる。だが、後述するHDMI外部モニターや、USB Type-C/USB 3.1(Gen1)対応、ミリ波を含む5Gと対応バンドの多い4Gを1台で同時に利用できる機器はまずない。プロが予算を問わずベストな撮影支援機能とデータ送信機能を持ったスマホが欲しいときに、Xperia PROのデータ通信機能は最高の選択肢といえる。



【訂正:2021年3月4日18時00分 初出時に「USB 3.1(Gen2)対応」としていましたが、正しくは「USB 3.1(Gen1)対応」です。おわびして訂正致します。】



●HDMI入力対応、高性能な小型外部ディスプレイとして使う



 Xperia PROはソニーモバイルが世界初をうたう、microHDMI(D端子)入力端子を搭載したスマートフォンだ。Xperia PROのディスプレイをHDMI接続の外部ディスプレイとして利用できる他、後述するライブ配信にも活用できる。外部モニター機能について触れる前に、microHDMI端子とディスプレイの仕様について紹介しておこう。



 ディスプレイは6.5型の比率21:9で、解像度1644×3840ピクセル表示に対応。映像制作に使われるソニー製マスターモニターに沿った表示の「クリエイターモード」を搭載し、色温度D65で色域BT.2020、HDR、10bit表示が可能だ。輝度は簡易輝度系による計測だが最大630カンデラだった。ベースとなったXperia 1 IIにも同じクリエイターモードが搭載されているが、Xperia PROは1台ずつ色の調整をかけた上で出荷される。



 microHDMI(D端子)の入力仕様は、4K(3840×2160)、60p/30p/24p※、YCbCr 4:2:2 8bit/10bitまたはRGB 8bitに対応(※24pはソフトウェアアップデートにて対応)。色域はBT.2020/BT.709対応で、HDR(HDR10/HLG)入力にも対応する。ハードウェアとしては音声入力にも対応。HDCPには対応していない。



 仕様上は、業務用シネマカメラやα1、α7S IIIなどを含め、ほとんどの4Kムービー収録機器のHDMI映像に対応できる。手持ちのムービーカメラやデジタルカメラやPCを4K 60pも含め問題なく表示できた。PlayStation 4もHDCP設定を外せば表示できる。ただし、PlayStation 5だけはHDCP設定や各種設定を変えても一瞬しか表示されなかった。想定外の用途だろうが、同じソニーブランドの製品だけに気になるところだ。



 続いて、外部モニター機能について触れていこう。ホーム画面から「外部モニター」アプリを起動し、HDMI端子につないだ機器の映像を表示できる。音声のモニタリングや再生には対応していない。Androidアプリとして動作しているので、バックグラウンドでテザリングや写真の送信など各種アプリを動かせる。画面の表示設定はタッチ操作で変更でき、グリッドラインやフレームラインの表示の他、上下回転、拡大表示、表示する色域や解像度などを変えられる。



 実際利用した印象だが、撮影中のカメラ出力を編集用の高色域モニターと同様の表示で常時確認できるのはかなり便利だ。カメラ内蔵モニターと比べ、明らかに明るく鮮やかで高繊細。デジカメ内蔵モニターの微妙な表示に惑わされず、効率的に撮影を進めやすくなる。6.5型かつスリムサイズで、ここまでの高解像度と色再現性、幅広い入力に対応した製品は他にまず存在しない。



 だが気になる点もあり、本体の価格や利用用途を考えるとHDMIの音声再生とレベルメーターは欲しかった。可能なら、LUT(輝度階調のデータを任意の階調に補正するデータ構造)対応や輝度レベル表示も追加してほしいところだ。なお、画面輝度は専用のフィールドモニターほど明るくないので、日中屋外では工夫して遮光フードを装着した状態で使いたい。



●HDMI接続したカメラ映像をYouTubeライブで配信



 一番Xperia PROらしい機能が、HDMI端子に接続したムービーカメラでのライブ配信だ。ただし、利用にはちょっとした知識が必要となる。



 「YouTubeライブ」や「ニコニコ生放送」「ツイキャス」など、各種動画配信サービスやクラウドに高画質な映像を配信する場合、Google Playストアで公開されているRTMP(ライブ配信プロトコル)に対応したライブ配信アプリが必要だ。ライブ配信各社の標準アプリではXperia PROのHDMI入力や細かい設定を利用できないことが多い。特にYouTubeはチャンネル登録数1000人を超えないと標準アプリのライブ配信を利用できないので、お試し配信にはRTMP対応のライブ配信アプリが必須となる。



 Xperia PROのHDMI入力を詳しく説明すると、Androidアプリにとっては複数搭載されているカメラの1つという扱いになっている。このため、全カメラを扱えるアプリでしか



HDMI入力を利用できない。例えば、「LINE」や「Zoom」のビデオ通話は標準カメラとインカメラしか選べずHDMI入力を利用できない。



 その上で、動作を確認できたRTMP対応のライブ配信アプリが「Streamlabs」や「Larix Broadcaster」「Astra Streaming」などだ。映像入力は前述の通り4K 60pまで可能で音声入力にも対応しているが、実際の配信サイズやフレームレートはアプリやライブ配信サービス次第となる。また、アプリ側もXperia PROのHDMI入力を想定していないからか、表示の上下の向きが固定されるなどの挙動が見られた。今後の双方の対応に期待したい。



 この中だと、配信に慣れた人ならLarix BroadcasterがHDMI入力の指定をしやすく、音声のレベルメーターもあり素直に利用できた。初心者がYouTubeライブを配信するならログインが楽なStreamlabsで、VideoSetteings→Switch beeteen all cameraをオンにして使うことをお勧めする。



 外出先でのモバイルライブ配信だが、現状大半の通信エリアは4G止まりだ。期待できる上り速度は50〜10Mbpsあたりなので、コマ落ちを極力減らした安定配信を実現するにはビットレート10〜5Mbpsあたりの設定が無難だ。これだけのビットレートがあれば、フルHD 1080pやHD 720pで見栄えのする映像を配信できる。ライブ配信時のバッテリー消費は1時間で23%だったので、単純計算で4時間ほど持つことになる。



 この他、アプリによってはより深い活用もできる。より圧縮効率の高いHEVC(H.265)をSRTやHEVC over RTMPで配信する実験にも便利だ。宅内など同一ネットワーク内なら「NDI HX Camera」アプリを使い、PCのビデオミキサーアプリ「OBS」や仮想Webカメラへ簡単に映像を配信できる。外出先からVPN越しに配信できれば便利に使えそうだ。



●映像機器としては薄型軽量かつ高性能、比較対象のないモデル



 映像機器としてXperia PROに注目している人向けに補足すると、製品としての立ち位置は下記のようになる。バッテリー内蔵の薄型軽量ボディーに、マスターモニターに沿った品質の外部モニターと、自由にカスタムできるライブ配信用エンコーダー、最新の5G/4G通信モジュールを一体化した製品だ。高性能な上に、従来の機器と少し離れたジャンルの製品なので、直接競合する機器は他にない。



 だが、映像機器としての不満点もいくつかある。純正リグ(補助機材を取り付けるための機器)がなくmicroHDMIケーブルを本体に固定できないので、端子の破損や接触不良の不安がつきまとう。汎用(はんよう)のスマホ向けリグを介して固定することもできるが、可能なら樹脂製でもいいので専用のリグが欲しい。また、RTMPでのライブ配信が他社アプリ頼りなのも不満だ。HDMIだけでなく、内蔵トリプルカメラや、電話通話・IP通話を活用できるRTMP対応ライブ配信アプリが欲しかった。



●プロユースなら実売25万円も妥当



 Xperia PROの魅力は、1台で「5Gミリ波に対応」「マスターモニターに沿った高性能かつ薄型軽量の外部モニター」「HDMIにビデオカメラを接続して即ライブ配信」の全てを利用できる点だ。携帯型の映像機器としてここまで薄型軽量で高性能な機器は他にない。全ての機能を必要とする人なら、実売価格25万円前後も納得できる。要素を分ければある程度は似た機能を安く実現できるが、そうすると業務機としての可用性や携帯性、品質を損なうことになる。



 予算に余裕のある業務用途で小型のマスターモニターや、屋外にて最小構成でライブ配信が必要になった場合、Xperia PROが“一番いい装備”なのは間違いない。また、5Gを活用した映像伝送や中継システムの実験にも活用しやすい機器といえる。



 Xperia PROをお勧めできるユーザー層はユーチューバーや、映像制作者、報道関係者だ。1台持っておけば国内外どこでも、手持ちのムービーカメラやデジタルカメラで高画質配信や、撮影した写真や動画の配信がすぐにできる。もちろん、5Gミリ波やSub-6のスピードテスト好きのスマホマニアが購入するのもアリだろう。スタジオ撮影のお供や、小型のディレクターズカメラやカスタム前提のシネマカメラと組み合わせて利用したい。


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