小川彩佳の夫、マック元社長…“ハイスペ経営者”が自爆する理由

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2021年03月04日 11:35  AERA dot.

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写真原田元会長 (c)朝日新聞社(提供)
原田元会長 (c)朝日新聞社(提供)
“プロ経営者”、カリスマ経営者の事件や不祥事が続いている。ずばぬけたビジネス手腕と輝かしい経歴を持ち、分別をそなえた年齢である。お金も地位も名誉もあるカリスマたちは、なぜ踏み外したのか。心理学者や精神科医、夫婦カウンセラーら、専門家に聞いた。

【写真】もう一人の「オレ様」夫は?

*  *  *
 なぜこの人が──。

 そう声を出さずにはいられない。カリスマ経営者による事件や不祥事が続いている。

 台湾発のティー専門店「ゴンチャ」を展開するゴンチャジャパン(東京・渋谷)は2月24日付で原田泳幸会長兼社長兼CEO(72)の辞任を発表した。

 原田氏は日本マクドナルドホールディングス(HD)やベネッセHDなどの社長を歴任し、プロ経営者ともてはやされたが、妻でシンガー・ソングライターの谷村有美さん(55)に自宅で暴力を振るったとして、同19日、傷害罪で罰金30万円の略式命令を受けた。

 同10日には、大手スポーツ用品の「アルペン」(名古屋市)の水野泰三元会長(72)が、強制わいせつ致傷と窃盗、暴行容疑で逮捕され、衝撃が走った。

 水野氏はアルペンを創業し、浅田真央さんら有名スポーツ選手の“スポンサー”としても有名だったカリスマ経営者だが、事件後に会長を辞任。被害者と示談が成立したこともあり、名古屋地検は同22日、不起訴とした。

 さらに2月には小川彩佳アナウンサー(36)の夫で医療ベンチャー「メドレー」の代表取締役医師だった豊田剛一郎氏(36)の女性との不倫騒動も話題になった。

「昭和どころか、近代日本以前の価値観。ゴーマンもいいところ」

 そう憤慨するのは、夫婦問題研究家の岡野あつこさんだ。

「財力があれば浮気も亭主関白という名の暴力も、かいしょうのうち──、と考えている男性はいまだに存在します。女性を下に見て、何をやっても許されると思っている」

 社会心理学を専門とする碓井真史・新潟青陵大学教授は、環境による影響が大きいと分析する。

「経営トップは、基本的に人に否定されることがない。トップが何か口にする前に周囲や部下は、忖度(そんたく)して意向に沿うように動く。ただでさえ経営トップは、ストレスがたまる生活ですから、お酒や夜のお店や趣味で発散する。だから口説いている女性に拒否されたり、相手が思い通りに動かない状況に遭遇すると、カッと激高しやすい」

 だが、時代は令和。おとなしく耐え忍ぶ女ばかりではない。水野元会長に暴行を受けた被害女性も、原田元会長の妻の谷村さんも警察に被害を訴え、暴走経営者らは報いを受けることになった。

 それでも、表沙汰になるのはごく一部。暴走するゴーマン経営者は、ゴロゴロいる、と話すのは前出の岡野さん。

「傲慢な経営者を親に持ち、その支配下から逸脱できない人にありがちですが、若くても女性をモノのように扱う男性はいる。こんな相談を受けたことがあります」

 女性は、40代の夫から離婚を迫られていた。夫は、年収数千万円という高スペックな経営者。

「おやじが、お前(妻)を気に入らない」

 夫婦には娘もいるが、「おやじがいいという女性と結婚して、男の子を産ませる」とうそぶく。妻が拒否すると、「お前なんかつぶすのは簡単だ」と夫は脅し文句を吐き、携帯電話を壊した。

「万能感を抱く男性に共通するのは、『しつけ』や『教育』だと信じ込み、罪悪感がない点です」

 だが先の妻も、やられっぱなしではない。夫の暴言と暴力場面を録音し、離婚交渉の材料とした。

 岡野さんは、メドレーの豊田元代表の不倫騒動も、女性を甘くみた結果の不祥事だと分析する。

 高スペックな男の妻が、仕事と子育てに追われる生活と知れば、不倫相手は男の不満を補う存在となるべく努力を惜しまない。「妻が忙しくて、料理も手抜き」と愚痴を耳にすれば、手料理をふるまい、「私なら寂しい思いはさせない」と全力で愛情を注ぐのだ。

「妻も愛人もコントロールできているとあぐらをかく男は、女性の扱いもぞんざいになるのです」

 外出を重ねると、レストランやホテルのランクを露骨に下げる男性は、珍しくない。最初は五つ星ホテルでも、数回目にはラブホテルに誘う、高スペック男。

「敏腕な経営者ほどケチというか計算高い。肉体関係を結んで『利益』を回収したのちは、投資金額を抑えようと考える」(岡野さん)

 愛知県警によると、アルペンの水野元会長はホテルで女性の拒否にあい激怒。暴力をふるい、女性に渡していた現金10万円などを奪った。

 ぞんざいな扱いをうければ相手も黙ってはいない。愛人が妻に自分の存在をにおわせて不倫が発覚するパターンは、王道だ。妻も、愛人と仲良くなって夫の弱みを握るなど、賢くなった。

 精神科医で『「不倫」という病』の近著もある片田珠美さんは、人間の成功体験は、「もろ刃の剣」だと述べる。

「修羅場をくぐり、熾烈な競争に勝ち抜いてきた成功者にありがちな思考ですが、危ない橋や修羅場も『自分ならば、切り抜けられる』と過信しがちなのです」

 医師として多くの事例を見てきた片田さんは、彼らの共通項として、(1)特権意識(2)自らの能力への過信(3)脱抑制状態の3点を指摘する。

 ただし、(3)の「脱抑制状態」は注意が必要だ。

 躁うつ病(双極性障害)、あるいはアルコールやストレスなど原因はさまざまだが、「病気」が原因で、自らの衝動が抑えられない状態となっている場合もある。

 たとえばピック病(前頭側頭型認知症)と呼ばれるタイプの認知症は、記憶障害が目立たないため、はた目には、健康な高齢者として映る。

「しかし、すぐにイライラして怒鳴るなど、いわゆる“キレる老人”にありがちな言動は見過ごされがちです。実は、MRIで精密検査を行うと、衝動のコントロールをつかさどる脳の前頭葉の萎縮が確認されるケースは少なくありません。症状が進めば、攻撃衝動や性衝動の抑制が利かず、暴力事件やわいせつ事件を起こしてしまうこともあります」

 事件とは無縁に思える人が、罪を犯すのはなぜか。前出の碓井教授によれば、「犯罪機会論」という考え方がある。

「罪を犯すに至る動機が存在しターゲットとなる相手を見つけ、実行に移す機会に出あう。この原因となる三つの条件がたまたま重なった時に、犯罪が発生してしまう」

 成功体験を積み上げた人間ほどゴーマンな考えに陥りやすい。「自分ならば切り抜けられる」と思わないほうが賢明だ。(本誌・永井貴子)

※週刊朝日  2021年3月12日号

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