前代未聞「石」のガチャガチャ CMにイメージソングの本気度 「イタズラにしか見えないシュールさ」

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2021年03月05日 07:00  ウィズニュース

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写真神奈川県相模原市(藤野地域)設置された、石が入っているガチャガチャ
神奈川県相模原市(藤野地域)設置された、石が入っているガチャガチャ

最近、SNSでも話題になっている「石」のガチャガチャ。20年以上業界のトレンドを追っているガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が、その製作過程を取材しました。

【画像】石の細部はこんな感じ…石のガチャガチャ、シュールな製作過程 税関で「なんで石を送る?」

商品への本気度が試されている業界
人の心を動かすには、制作者 の本気度や使命感が大切です。これはガチャガチャの作り手にとっても同じことが言えます。

毎月60タイトルの商品が入れ替わるなか、とくにオリジナル商品は、売り場に来たお客さんの目に留まり購入してもられるかが勝負になります。またガチャガチャは薄利多売なため、メーカーにとってはSNSで どれだけ関心を抱いてもらえるかがカギになります。
しかも、ここ4〜5年の間売り場は拡大傾向になり、メーカーも20年前までは約10社しかありませんでしたが、現在は約30社まで増えてきています。最近ではバンダイナムコアミューズメントが「ガシャポンのデパート」を展開し、2月26日に池袋で世界最大級と言われる3000台の機械を設置しました。
ますますメーカーはお客様に商品を届けるための 、商品に対する本気度が試されているのが現状です。

利益を一発で飛ばすくらいのCM流す理由
レッドオーシャン化しつつあるガチャガチャ市場で、人から「バカじゃないの」と言われることを誰よりも本気でかつ真剣に取り組んでいるメーカーがあります。それは、株式会社ブシロードクリエイティブのカプセルトイブランド『TAMA-KYU(以下、たまきゅう)』です。

このたまきゅうのクリエイティブディレクターを担当する成田耕祐さん(株式会社ブシロードクリエイティブの代表取締役社長)は、ガチャガチャ業界で先行して活躍しているメーカーとたまきゅうとの差別化をするポイントとして、親会社のブシロードのリソースを上手に活用して広報宣伝を行う点を挙げています。

具体的には、グループ会社に所属する人気プロレスラーや声優に宣伝協力を依頼しSNS中心に情報拡散を行います。また、ガチャガチャ業界では異例と言えるテレビCMを大量に流しているんです。

「ふつうに考えたら商品単体で生んだ利益を一発で飛ばしてしまうくらいCMを流しています。これは投資です。たまきゅうのブランドが広まってくれれば、将来的に必ず投資はなんらかの形で戻ってきます」と語る成田さん。

そして、「『テレビCMを打つガチャガチャメーカー』というキラーワードが営業的に使いやすいです。地方ではまだまだテレビが情報発信力の高い媒体なので、各地のお店への販売促進にも繋がります。メーカーとしては後発なので、本気度をBtoB向けに示したかったのです。また、CMそのものの電波を通しての効果以上に「ガチャガチャがテレビCMで流れている」という異質さがインターネット上でのバズを引き起こす発射台となりました」と営業戦略と覚悟を示していました。

「他では聞いてもらえなかったけど、成田さんなら…」
今回は、そんな成田さんの本気度が詰まった「石」を紹介します。

この石のきっかけはその昔、日本ガチャガチャ協会・会長の小野尾勝彦さんが「俺、ガチャガチャが好きすぎて、 ガチャガチャの機械に入っているものだったら何でも買う!!石でも買うかもしれない!」と話したことから始まりました。

この言葉をずっと気にかけていたクリエイターのザリガニワークス(武笠太郎さんと坂本嘉種さん)は、企画会議で成田さんにこう言います。
「他のメーカーさんには聞いてもらえなそうだけど、成田さんには刺さると思う」と石の企画書を出したそうです。

石の企画書を見た成田さんは「どんな業界でも歴史を積み重ねていけばシンプル・イズ・ベストにたどり着く。ファッションがいい例です。10〜20年後に再販してもおかしくない商品を作りたかった」と当時考えていたそうです。

そして、通常は商品をカプセルに入れて販売しますが、石の形状が球体に近いことから、商品をカプセルに入れないカプセルレスの商品として販売することに決めます。その時、成田さんは「石がSNSでバズる未来のイメージしか見えなかった」と話してくれました。

3Dデータをとるための中国出荷、まさかの事態
制作過程にもドラマがありました。

通常、ガチャガチャのフィギュアなどは原型師(ひな形や玩具の元となる模型を作る人)の方に樹脂粘土などで造形してもらいます。

ただ、今回は商品が石ですから、ザリガニワークスの武笠さんは石を拾いにいった方が良いと考えたそうです。ちょうど昨年4月ごろでしたので、小学校も休校しており、在宅勤務だったため、子どもたちと近所の河原に「良い石」を拾いに行き、3つの石を厳選してたまきゅうチームへ提出。

3Dデータを作るため制作拠点の中国に出荷したところ税関に止められ、「これは何だ?」と何度も聞かれたそうです。「石です」「なぜ石を送る?」「フィギュアを作るための石なんです」「そんなわけない!」と通関するまでのエピソードはなんとも言えないほど滑稽味を醸し出しています。そして、3Dデータをスキャンして調整後、なんとか石の金型の原型が出来上がりました。

イメージソングのタイトルは『ici』…
また、トータルプロデュースが得意な成田さんは「もしお茶の間で石のCMが流れていたら、面白じゃないですか。だって石ですよ?『バカじゃないの、石なんてその辺で拾えよ』と言われることこそ、僕らにとっては最高の誉め言葉です」と、本当にテレビCMまで作ってしまったほか、音楽にも造詣が深い成田さんは「物の良さを伝えるために一番有効なツールは音楽。企画から『音』が聴こえてこない場合はボツにしているくらいです」という独自の考えから、最近のたまきゅうのテレビCMはイメージソングの制作に注力しているのです。

今回は実力派アーティスト、ボンジュール鈴木にタイアップをオファーし実現。

テレビCMは2月下旬から放映されています。楽曲のタイトルは『ici』。石・・・。

販売が2月下旬から開始したので、私は6回売り場で回しましたが、出てくるのは石、石、石という初めての感覚を味わいました。
初回受注は、成田さんの石に対する本気度が伝わり5万個です。石に5万個は驚くべき数字です。だって、石ですから。この石は小物入れになって鍵入れなどとしても使用できます。

近所の河原で「凱旋販売」
最後に成田さんに「石の魅力ってなんですか」聞くと、「石はみんな触ったことあるし、子供の頃に自宅に持ち帰って親に捨てられた経験を大半の人が持っていると思います。全人類の思い出です(笑)。また、筐体(きょうたい)から中身を覗いたときに、そんなわけがないというものが入っていたら楽しいですよね。イタズラにしか見えないシュールさを狙っています」と笑って答えてくれました。

ちなみに、企画者のザリガニワークスの武笠さんは無事に商品が発売したのち「石」の故郷である近所の河原にガチャガチャを設置し「凱旋販売」をしました。もともと人が入ってくるような場所ではないので全く売れていないようですが、近所の人々が数名面白がって回しに来てくれたそうです。
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「石」は丸石、丸石(苔ver.)、赤石、赤石(苔ver.)、石、石(苔ver.)の全6種類。1回200円。企画・デザインはザリガニワークス。

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この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。
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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani)
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

このニュースに関するつぶやき

  • やはり『自爆スイッチ』の関係者か…。ああやって全力で『アホな事』に取り組めるパワー�ؤ�OK、僕は大好きですexclamation ��2
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  • 石というと、コンピュータ業界では「IC」とかのチップの事を指す。だから石ガチャといえばCPUガチャみたいに聞こえる
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