勝負強さと力強さの兼備へ。アジアの頂点を目指す神戸・三浦監督の変革

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2021年03月06日 06:51  webスポルティーバ

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ヴィッセル神戸
三浦淳寛監督インタビュー

もっとゴールにチャレンジする
プレーを増やさなければいけない

 1月25日に新シーズンをスタートさせたその日から、"三浦ヴィッセル神戸"の色は見て取れた。

 ここ数年の同時期とは明らかに違う、強度の高いトレーニングが組まれていたからだ。主軸である山口蛍の言葉を借りれば「僕がヴィッセルに加入してからの3シーズンでは、一番走り込んでいる」とのこと。沖縄キャンプでもそれは変わらず、徹底した走り込みで体を苛め抜いた。

「今年は始動した日からかなり厳しいトレーニングを課してきました。昨年の同時期に比べると、40%アップくらいの強度です。

 僕の選手時代の自分の経験からも、シーズンを通していいパフォーマンスを発揮するには、この時期に徹底して体を追い込み、ベースとなる体を作り上げておかなければいけない。シーズンが始まってしまうと、試合に向けた調整に時間を割かなければならず、フィジカル強化に特化してトレーニングをする時間がほぼ、なくなってしまうからです。

 そのことをシーズン最初のミーティングから伝え、それを選手もしっかりと受け止めてくれて、ハードなメニューにも非常にポジティブに向き合ってくれています」

 このベースづくりは、新体制会見でも三浦淳寛監督の口から聞かれた「総得点を増やし、総失点を減らす」ためのアプローチでもある。

 昨年のリーグ戦を振り返ると、総得点ではリーグ5位となる50得点を数えたヴィッセルだが、総失点ではワースト4位タイの59失点を喫している。この2つの数字を変化させなければ、今シーズンの目標に掲げる「ACL(AFCチャンピオンズリーグ)への出場権獲得」は実現できないと考えている。

「昨年の戦いを振り返ると、守備面において残り10〜15分の時間帯でしっかりと体が動けていた時は最後の一歩で体が張れていたり、危ないシーンでカバーリングができていたり、ファウルではなく正当なチャージでボールを奪えていました。

 ですが一方で、試合の後半に入って体力、走力の低下が顕著だった試合は、それに伴い集中力が欠如して失点してしまうシーンがいくつか見られました。その部分を改善しなければ、どんなに技術、戦術をブラッシュアップしても失点数の減少につながっていかないと感じています。

 また、攻撃においても近年、ボールを保持しながらアタッキングサードまで入っていく形は数多く作り出せるようになっていますが、昨シーズンも然り、相手にとって脅威となる攻撃を仕掛けられていたのかといえば、必ずしもそうとは言えません。それについては"ボールを持つ"ことに対する我々のマインドを変えていかなければいけないと思っています。

 サッカーでは、"ボールを持つ"ことが戦術として機能しなければ結果は得られません。だからこそ、ボールを持ちながらも、もっとゴールにチャレンジするプレーを増やさなければいけないし、パスでつなぐばかりではなく、シュートを打つ選択もできるようにならなければいけない。また、相手DFラインの前で横パスをつなぐのではなく、背後に抜けるとか、ボールを持った選手を追い越していく動きも必要になる。

 そして、それを90分間展開するためにも、走り切る、攻め切る体力と集中力は不可欠だし、ひいてはそれが得点数や、相手に脅威を与える攻撃につながっていくと思っています」

全員が目の色を変えて
意欲的にサッカーに向き合っている

 そうした意識づけを徹底するために、三浦監督は今シーズン、これまで3つだったチーム戦術に、先に記した攻撃の話にも通じる「より攻撃的なサッカーを実現するための効果的な動き」を加えた。また、個人戦術の部分でも、従来の「予測」「準備」「反応」に「デュエル(1対1の局面で負けない強さ)」を求めていると聞く。近年踏襲してきた、ポゼッションサッカーに"勝負強さ、力強さ"を備えるためだ。

「疲れていたら間違いなく脳の回転は遅くなり、サッカーには不可欠な先を読む力や準備がおろそかになってしまう。そうならないためにも、ベースとなる体力を備え、常にボールの流れや人の動きを予測し、準備して、反応し、最後は、1対1のシーンで絶対に競り負けない強さが必要になる。

 うちのチームでいうと、蛍がその基準となります。彼はJリーグでも屈指の予測、準備、反応が早く、90分を通して脳を動かしながら戦い続けられる選手です。彼というお手本を基準に、他の選手の意識が変わってきたら、間違いなくチームとしての勝負強さが出てくるはずだし、戦えるチームにもなっていくと考えています」

 その先頭に立つキャプテンには、今シーズンも引き続きMFアンドレス・イニエスタを据えた。周知のとおり、イニエスタは昨年12月のACLで右大腿直筋近位部腱断裂という大ケガを負い、全治4カ月と診断されていたが、彼がピッチの内外で示してきた存在感を踏まえ「アンドレス以外のリーダーは考えられなかった」と三浦監督は言う。

「彼はプレーヤーとしてはもちろん、ピッチの内外での発言に大きな影響力を持っています。存在そのものが、他の選手が目指すべき指針になる、心強い存在です。

 これは、副キャプテンに据えた蛍も然りです。彼はどちらかというと行動で、背中で引っ張っていくタイプですが、明らかに彼のサッカーに向き合う姿勢、ピッチでの振る舞いは、チームをまとめる大きな要素になっています。

 そんな彼らに引っ張られ、新加入選手を含めた全員が目の色を変えて、意欲的にサッカーに向き合ってくれています。若い選手の意識も、どんどん変化しています。そうした選手全員のレベルアップを今後も求め続けながら、よりチームとしての連動性を高め、誰が出ても同じレベルのサッカーを実現できるチームにしていきたいと考えています」

 すべては、今シーズンの目標に掲げる「ACLへの出場権獲得」と、その先に描く"アジアナンバーワン"の座にたどりつくため、だ。

「昨シーズンのACLで、我々はクラブ関係者、DVDでメッセージを送ってくれた家族、アカデミーの選手たち、そしてサポーターら、すべての"仲間"の思いを力にしながら、ミスを恐れずに、常に前のめりに戦いを進めることができました。慣れない環境で決して簡単な戦いではなかったですが、リーグ戦で経験を積んだ若い選手も躍動しながら、一人ひとりの選手、スタッフが持っている力を出し切って、本当の意味での一致団結した姿を示せたと思っています。

 だからこそ、ベスト4に終わったことへの悔しさも残りましたが、それでも、"アジアナンバーワン"を手に入れるには、どんな厳しい戦いが待ち受けているのかを身を以て体感できたことや、戦いを重ねることで蓄えた自信は間違いなく今シーズンもチーム、選手にとって大きな力になるはずです。というより、それをヴィッセル神戸としての礎に、今年はさらなる勝負強さ、力強さを積み上げていきたいと思っています」

 シーズン途中での監督就任となった昨年とは違い、今シーズンはスタートから自身の"色"を打ち出し、チームづくりを進めている三浦監督。その変化がピッチ上でどのように表現されるのか。監督として真価を問われるシーズンが始まろうとしている。

三浦淳寛(みうら・あつひろ)
1974年7月24日生まれ。大分県出身。現役時代は横浜フリューゲルス、横浜F・マリノス、東京ヴェルディ、ヴィッセル神戸、横浜FCでプレー。2011年に現役を退く。その後、解説者などを経て、2018年に神戸のスポーツダイレクターに就任。2020年シーズン途中から神戸の指揮官となった。

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