「耳が遠い人」に認知症リスクあり 医師が解説

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2021年03月06日 08:05  AERA dot.

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写真イラスト/ナカオテッペイ
イラスト/ナカオテッペイ
「年だからしょうがない」「聞こえなくても困らない」……そんな認識をもっている人は、難聴からはじまる健康リスクについてご存じだろうか。認知症、耳鳴り、聞こえないことによる会話の減少など、難聴は生活の質に大きくかかわってくる。好評発売中の『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』から抜粋してご紹介する。

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 年齢を重ねると、ひざや腰が痛くなったりするのと同じように、耳の機能も衰えていく。これが「加齢性難聴」だ。平均寿命が延びてもからだの機能まではそれに追いつかないため、高齢になればからだの働きが悪くなるのは自然なこと。難聴も、誰の身にも起こることといえる。慶応義塾大学の小川郁医師はこう話す。

「聞こえの低下はQOL(生活の質)に大きく影響します。ところが加齢性難聴は少しずつ進むため、聞こえにくさに気づきにくく、困っていることを実感できない。そして、気づいたとしても『もう年だから仕方ない』と病院に来ていただけないケースも多いのです。聞こえというものは、ただちに命にかかわる問題ではないからか、まだその深刻さをわかっていただけていないのではと感じます」

 しかし近年では多くの研究が進んでおり、聞こえること=耳から情報が入ることは、認知機能など、脳の働きを維持するためにも重要であることがわかっている。

 2017年には国際アルツハイマー病会議で「認知症の予防できるリスク要因のうち、最大のものが難聴である」と発表され、日本でも大きく注目された。

「高齢化に伴い、難聴は今後ますます増加すると予想され、高齢者のQOLを維持するためにも社会全体での難聴対策が必要とされています」(小川医師)

 認知症以外にも、難聴からはじまる健康リスクがある。その一つが「耳鳴り」だ。実は難聴とは深い関係がある。

 耳鳴りの定義は、「明らかな体外音源がないにもかかわらず感じる異常な音感覚」(耳鳴診療ガイドライン2019年版から)。つまり、実際には音が鳴っていないのに、音が聞こえる状態をいう。

 患者数は1千万人以上といわれ、そのうち、耳鳴りを苦痛や不快に感じている人は300万人程度とされている。
 耳鳴りが起こるしくみについて、東北大学大学院の川瀬哲明医師はこう話す。

「一般的に、耳鳴りは、難聴などにより耳の聞こえが悪くなると起こります。耳鳴りが起こるメカニズムについては、まだ解明されていないこともありますが、難聴により耳から脳に伝わる電気信号が減ることが引き金となり、脳の活動が変化するために起こると考えられています」

 本来、耳からはさまざまな音が入り、その刺激が電気信号として脳に伝わる。しかし、難聴により刺激が伝わらなくなると、脳がその刺激をキャッチしようと過剰に興奮し、そのせいで耳鳴りが発生する。つまり、耳鳴りとは「不足している音を補おうと脳が働きすぎるために起こるもの」ともいえる。

 このように、耳鳴りの多くは難聴が原因で起こり、耳鳴りで受診した人の90%に難聴があるといわれている。一方、難聴で受診した人のうち、耳鳴りがあるのは70%程度で、川瀬医師は「耳鳴りの感じ方には個人差が大きい」と言う。

「検査上は同じくらいの耳鳴りであるにもかかわらず、耳鳴りをほとんど意識せずに日常生活を送れる人もいれば、とても気になって悩ましく感じる人もいます」

 そして、一度気になり始めると、耳鳴りがするとイライラしたり、憂鬱になったりし、そのせいでよけいに耳鳴りが気になるという悪循環に陥る。

「例えば、ふだんは気にならない冷蔵庫やエアコンの音でも、夜、眠れないときにはとても気に障ることがありますね。音の気になり方は、感情や記憶などに影響されやすいものです。問題になるのは耳鳴りが聞こえることではなく、そのせいで気持ちや生活に影響が出ることといえるでしょう」(川瀬医師)

 耳鳴りによる苦痛は「生活を楽しめない」「不眠」「うつ」などに発展することも。そのため、耳鳴りを苦痛に感じたら、早めに補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科を受診してほしいと川瀬医師は話す。

「治療により、耳鳴りの症状を改善することは可能と考えられます。耳鳴りそのものをなくすのは難しいことが多いのですが、気になる度合いを下げ、つらさを軽減することはできるでしょう」

 治療については、前出の「耳鳴診療ガイドライン」により、「教育的カウンセリング」と、補聴器療法を含む「音響療法」が推奨されている。

 教育的カウンセリングとは、患者に耳鳴りの原因や耳鳴りが起こるしくみ、悪化の要因や治療法などを説明する方法。

「耳鳴りを正しく理解することで不安が解消され、耳鳴りが気にならなくなる人、症状が改善する人もいます」(同)

 難聴のある人には、補聴器の装用や、専用の機器を使用して小さな音を流す音響療法も有用とされている。どちらも、耳に音を入れることで耳鳴りが気にならなくなることが期待できる。

「まずは医師の診察を受け、難聴の程度や治療法の有無を調べることが必要です。また耳鳴りの治療では十分なカウンセリングも重要です。受診した病院で治療できない場合は、専門医のいる病院を紹介してもらうといいでしょう」(同)

(ライター・出村真理子)

※週刊朝日  2021年3月12日号

このニュースに関するつぶやき

  • 加齢で耳が遠くなって→電話の相槌が曖昧で…「ん?」気づいた頃には祖母はまだら認知症になってたなぁ…。
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  • 聞こえていない音を推測してやり過ごしてるけど、無駄に疲れるんだよな。蚊の羽音とか明らかに聞こえなくなってるし。体調で音程も変わるわ左右で違う音が鳴るから脳内で共鳴までしてるしのww
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