佐野元春が語るデビュー40周年「僕が作った曲に沿って時代が後からついてくる」

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2021年03月06日 11:35  AERA dot.

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写真デビュー40周年を昨年迎えた佐野。「ソングライティングを通じて、より人生の深いコアな部分にまでたどり着きたいという気持ちが出てきている」と話す(写真/ソニー・ミュージックソリューションズ提供)
デビュー40周年を昨年迎えた佐野。「ソングライティングを通じて、より人生の深いコアな部分にまでたどり着きたいという気持ちが出てきている」と話す(写真/ソニー・ミュージックソリューションズ提供)
「僕は普通じゃないから」。そう言い切るには理由がある。デビュー40周年を迎えても、創作への意欲が劣ることは全くない。佐野元春に独占インタビューしたAERA2021年3月8日号から、時代を作り続けた彼の声を届けよう。

*  *  *
──記念コンサートは3月13日の日本武道館、4月4日の大阪城ホールの2夜限りだ。

佐野元春(以下、佐野):バンドもスタッフも、こうした状況の中でのコンサートですので、感染予防を完璧にしてしっかり臨もうと思っています。体調もばっちりです。

■いつもよりフラット

──この間、ファンを勇気づける新作も届けてきた。あたたかみのあるメロディーに言葉を乗せた「この道」や、コロナ後の社会に希望を見いだす「合言葉─Save It for a Sunny Day」だ。

佐野:僕としては、ソングライターとして日々、自分の思うこと、感じたことを言葉にして、音楽にして、ファンに届けるということをやっています。どういう状況であれ、淡々とそれをやるのが僕の仕事だと思っています。ですので、それらの曲もそうした中から出てきたものです。昨年12月のコンサートで初めて披露しましたが、とても好評だったように感じます。

──昨秋発表されたベスト盤に新作として唯一収められた「エンタテイメント!」も、最近発表された曲の一つだ。コロナ前の作品だが、その後考えさせられた「エンタメの持つ力」について触れられている。

佐野:その辺はとても複雑な思いがあります。うまく言葉で表現できないので、「エンタテイメント!」というロックンロールに全てを表現してきました。

──40年の歴史の中で表現者として圧倒的な実績を残してきた。2019年発売の「或る秋の日」も注目だ。ファンが驚いた異色の作品となっている。

佐野:この5年間、スタジオアルバムを「佐野元春&THE COYOTE BAND」名義で4枚リリースしていますが、そのアルバムのアウトテイクを集めています。というのは、バンドでリリースしているアルバムは、バンドサウンドを前面に出したロックンロールアルバム。なので、「或る秋の日」で聴いていただいているようなシンガー・ソングライター傾向の曲はなかなか入れづらかった。

 かといって、悪い曲ではないので、ファンに楽しんでもらいたいというところから「或る秋の日」が成立したんです。力みはなく、いつもよりフラットな気持ちで制作しました。ただ、佐野元春のシンガー・ソングライター傾向のアルバムというのは、当分はないと思います。

■独自の音楽ぶちかます

──1980年にデビュー。「アンジェリーナ」「ガラスのジェネレーション」などで一気にロックスターへと駆け上る。かつて自身のアイデンティティーについて、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」(89年)あたりで確立されたと語っていた。

佐野:言葉とメロディー、ビート。この三つの要素の境目がなく一体化した表現。これを独自なスタイルでみなさんに楽しんでいただく。ここが僕のミュージシャンとしての、ソングライターとしての、ロッカーとしてのアイデンティティーだと思います。ただ、ファンのみんなが喜んでくれる曲、サウンド、パフォーマンスを届けるのが一番。自分がどんなにすごいことをやっても、芸術的なことをやっても、アバンギャルドで格好いいことをやっても、その価値を見いだしてくれない限り、一方通行になってしまう。

 最初の3作くらいは、僕からのプレゼンテーションのようなものもあった。ただ、商業的にヒットしたというのは僕にとってうれしいことで、多くのファンの人たちが注目してくれました。これはチャンスだと思って、僕の独自の音楽をぶちかまそうとして作ったのが、ニューヨークで制作した「VISITORS」(84年)。それから先の「Cafe Bohemia」(86年)、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」と続きます。

■未来で見た景色を曲に

──昨年はニューアルバムを発売予定だったが、計画は変更。次に出るアルバムには、どんな時代性が反映されるのだろうか。

佐野:それは正直言って、わからない。いつも自分が思うことは、無心で作った作品に時代が後からついてくる。これを繰り返しています。ですので、「今のこの時代に僕はこういうことをメッセージしたいんだ」ということではないんですね。不思議だけども、僕が過去に作った曲に沿って時代が後から来るというか。それは僕が普通じゃないからだと思う(笑)。良い意味でも悪い意味でも。タイムマシンに乗って未来に行って、その未来で見た景色を今の時代に戻ってきて、未来で見たスケッチを曲にする。ちょっとサイエンスフィクションみたいだけど。

──40年間、曲作りとライブを続けた。常に新しい何かを模索してきた。創作意欲の源泉はどこにあるのか。

佐野:僕も不思議に思います。いまだにソングライティング、サウンドをデザインすることについてハングリーですし、興味がつきない。これを試したい、あれもやってみたいという欲がまだある。いつになったら終わるんだよって自分に聞いてみたいくらい。良い曲を書き、ステージで良いパフォーマンスをする。これを最後まで全うするのが自分の人生なのかな。

 最近は曲を書いていると、これまで自分が触れることができなかったビジョンにまで触れてみたいとか、より人生の深いコアにまでたどり着きたいとか、そういう気持ちが少しずつ出てきています。

■最高のメッセージを

──日本武道館でコンサートがある日は65歳の誕生日。同日、EPICレーベル期の集大成となるボックスセットも発売される。

佐野:コンサートは限られた形ではありますが、僕とバンドのパフォーマンスを皆さんに楽しんでもらいたい。最高のメッセージをみなさんに約束したい。ボックスセットについては、これは僕が80年から04年までエピックソニーレーベルに所属していた間のすべてのスタジオアルバム、ライブアルバム、コンピレーションが新しい仕様で収まっている特別なボックス。僕とエピックソニーが共同して歩んだ大事な記録であるのと同時に、80年代以降の日本のポップロックのヒストリーをほのかに感じてもらえるような価値のあるボックスセットになっています。チャンスがあれば、手に取ってみてほしい。

(編集部・小田健司/取材はオンラインで実施)

※AERA 2021年3月8日号

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