オリンピック決勝の日に生理。潮田玲子&中川真依が女性のコンディション作りの難しさを語る

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2021年03月06日 11:41  webスポルティーバ

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『特集:女性とスポーツ』第4回
潮田玲子×中川真依が語る女性アスリートが抱える問題(中編)

 3月8日は国際女性デー。1975年に国連によって制定されたこの日は、女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日だ。スポルティーバでは女性アスリートの地位向上を目指し、さまざまなテーマで「女性とスポーツ」を考えていく。

 今回は元バドミントン日本代表の潮田玲子さんと、元高飛び込み日本代表の中川真依さんに、普段はあまり語られることのない女性アスリートが抱える問題について語ってもらった。インタビューの中編では、生理によるコンディションの変化への対処について話を伺った。

――現役時代に、トレーニングメニューはそのままで、痛みはピルを飲んで周期をずらす、薬で散らすというのを専門家から提示されていたらどうでしたか

中川真依(以下:中川) それは実際に経験がありました。玲子さんはピルを飲んでいましたか。

潮田玲子(以下:潮田) 飲みましたね。でもそれは20代中頃かな。10代はピルの存在自体を知らなかった。ナショナルチームに入って、ドクターに会う機会があって相談したんです。「ピルを飲んで世界選手権のときに生理が当たらないように調整することはできるよ」とアドバイスをもらいました。そんなに生理痛が重いほうではなかったんですけど、できれば大事な大会のときに生理は迎えたくないから、オリンピックのときは早めに対策をしました。

中川 私は、北京オリンピックで絶対に生理がこないという日程だったんですけど、来ちゃったんですよ。しかも決勝の日の朝に。私もほとんど生理痛とかなかったんですけど、その日は立てないくらい酷くて......。

潮田 オリンピックの決勝の日に! 最悪な気分じゃなかった?

中川 そう。緊張でホルモンバランスが崩れていたんだと思うんですけど、そのまま這いつくばってドクターのところに行きました。決勝が夜だったので、薬を飲んで、お腹を抱えて寝ていました。なんとか飛べる状況にはなったんですけど、またあの痛みが来たらどうしようっていう不安があって、怖くて薬が手放せなかった。

 次のロンドンオリンピックでも同じ思いをするのは嫌だと思って、大会前に調整しようとピルを使ったら、それが合わなかったんです。とにかく太るし、むくむし、筋力も落ちてしまいました。飛び込む衝撃に耐えられなくて首を捻挫(ねんざ)するわ、腹筋が二度も切れちゃうわ......。空中で体を引きつけたりするので腹筋がすごく必要なんですけど、痛くて力を入れられないんですよ。

 飲み続けてしばらくして、トレーナーに「何をしたんだ!?」って言われて、「ピルを飲みました」と話したら、すぐやめるように言われました。当時は、ピルにいくつも種類があることも知らなかったし、自分に合うか合わないか飲んでみないとわからないところもあるので、もっと早くに準備しておけばよかったと思いました。

 合う薬を見つけるための準備期間が必要だということも知らなかったんですよね。結局、そのケガをオリンピックまで引きずっちゃって、体重はなんとか戻ったけど、キレとかは戻り切らなかった。本当にツラかったです。

――さまざまな競技で、生理不順などで婦人科に通っている選手もいます。若い頃から専門家としっかり話ができる環境があれば違っていたと思いますか。

潮田 それは感じますね。当時は教えてもらう機会がなかったですから。ただ現役時代、特に10代のときに婦人科へ行くっていうのはハードルが高いんです。妊娠したと思われるんじゃないかとか......。

中川 性的な病気なんじゃないかとか思われるもの嫌だし、行ったとしても周りに言えないですね。

潮田 なかなか話せないですよね。ナプキンをしてると汗ばんで気持ち悪い。でも中学生のときは、タンポンの使い方をよく知らなかったし。そういうのはどうしていましたか。

中川 私たちは水着ですが、最初はタンポン自体も抵抗がありました。でも生理で休むことはなかったし、タンポンしか選択肢がなかったんです。基本的に男性の指導者が多いなかでそれを相談するのも難しいし、年齢的にも恥ずかしいと思う時期でもありますよね。低用量ピルや生理周期の話やそのリスクに対する教育が、ナショナルチームとかに入る前から整っているのがベスト。女性として生きていく上で必要なことだと思います。

潮田 生理が始まる前後あたり、中学生のときには教えたほうがいいですよね。日本だと「ピル=妊娠を避けるためのもの」という認識がある。だからピルが生理周期を整える、痛みを軽減させる効用があることに、最初はビックリしました。それって誰も教えてくれないんですよ。競技指導者ではなく、専門家がちゃんとアスリートに指導する機会は必要。「生理は恥ずかしいことじゃない、痛いことも当たり前のことじゃないよ」っていうのがわかると安心しますよね。

中川 あとはコーチも共通認識を持たないとダメだと思います。

潮田 選手たちとコーチが一緒に講習を受けるっていうのもいい。女性アスリートを指導する監督やコーチは女性の身体について理解しないといけないところもあるし、情報のアップデートも必要だと思います。

中川 女性の身体はこういうものなんだって理解してくれてることが選手にとっては安心材料になるはずです。

インタビュー後編に続く>>

インタビュー前編はこちら>>

【Profile】
潮田玲子(しおた・れいこ)
1983年9月30日生まれ、福岡県出身。幼い頃からバドミントンを始め、中学3年時に全国中学生大会女子シングルス優勝。その後も数々のタイトルを獲得し、08年北京五輪では小椋久美子とペアを組んで女子ダブルスに出場しベスト8に進出した。その後、池田信太郎とペアを組み、12年のロンドン五輪にも出場。同年に引退を発表した。

中川真依(なかがわ・まい)
1987年4月7日生まれ、石川県出身。小学1年より飛び込みを始め、中学3年で世界ジュニア選手権に出場。高校1年からインターハイ、国体を2年連続で制覇し、高校2年から日本選手権で連覇を達成する。08年の北京五輪では決勝に進出し11位と健闘。12年のロンドン五輪にも出場し、16年に現役を引退した。

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