Office 2021と日本市場の間から見えるもの

0

2021年03月08日 06:12  ITmedia PC USER

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia PC USER

写真Microsoft 365のBlogで明らかにされた「Office 2021」と「Office LTSC」
Microsoft 365のBlogで明らかにされた「Office 2021」と「Office LTSC」

 既報の通り、米Microsoftは2月18日(現地時間)にコンシューマー向けの「Office 2021」とエンタープライズ向けの「Office LTSC」の投入をアナウンスしている。



【その他の画像】



 クラウド製品の「Office 365(Microsoft 365)」をプッシュするMicrosoftだが、今回発表された両製品は非クラウド、つまりローカルまたはオンプレミス状態での利用を想定した、いわゆる「Office Perpetual」と呼ばれる「永続的ライセンス」の製品だ。今回はMicrosoftのOffice Perpetual戦略と、サポート対応について少しまとめたい。



●サポートが縮小され続けるOffice Perpetual



 まずは、Office Perpetualと直近におけるMicrosoftの製品戦略の話題からだ。



 クラウド版のOffice 365はサブスクリプションであり、サブスクリプションを止めると利用ができなくなる一方で、利用期間中はソフトウェアアップデートを含む最新のテクノロジーを利用できるというメリットがある。



 一方のOffice Perpetualとは、購入後に追加料金なしでの継続使用のライセンスが与えられるため、契約更新などを考えずに使い続けることが可能だ。“永続的”とはいうものの、実際にはMicrosoftが定義する製品ライフサイクルにのっとった形でのサポートであり、Windows同様に「メインストリームサポートが製品提供から最初の5年、延長(Extended)サポートが次の5年」という形で、基本的に「購入後最大でも10年間」という使用期限が設定されてい“た”。



 この過去形の部分が重要で、実際には何らかの理由で利用制限がかかって「実質的な利用がそれより短くなる」ということもある。



 例えば、古いOfficeを動作させようとすると、新しいOSのバージョンがサポート対象外であったり、後に意図的に機能制限がかかったりするケースだ。後者について代表的なものがOffice 2016のケースで、Office 2016のメインストリームサポートが終了する2020年10月13日のタイミングで「クラウド(Office 365)で提供されるOutlook、OneDrive for Business、Skype for Businessへのアクセス機能を失う」というアナウンスが行われている。



 つまり、これらサービスへの接続機能を継続利用したければ、より新しいOffice Perpetualである「Office 2019」などに早めに乗り換えるか、Office 365の契約に切り替えるかというクラウド優遇策に利用されている。



 さらにMicrosoftでは、製品ライフサイクルポリシーそのものを改訂してOffice Perpetualのライセンスを制限しようとしている。例えば2018年2月の発表では、従来の「5+5=10年」の“固定”ライフサイクルを見直し、延長サポート期間を従来の5年から2年に縮小した「5+2=7年」のサポート期間を設定している。



 これにともなうOffice 2019の延長サポート終了は2025年10月14日となっており、Office 2016の延長サポート期間終了にそろえた形となっている。



 さて、問題はここからだ。Office Perpetualと一口にいっても、2種類の製品が存在する。今回のケースでいえば、1つは冒頭にも挙げたOffice 2021であり、もう1つはOffice LTSCというものだ。



 Office 2021がコンシューマーからビジネスまでをカバーする汎用(はんよう)的なライセンスとすれば、Office LTSCは「LTSC:Long Term Servicing Channel」という名称からも分かるように、主にエンタープライズ用途を対象に「長期の固定運用」を主眼とする。



 LTSCの定義や用途はMicrosoftのBlogでも解説されているが、Windows 10 LTSCも含めて「最新のテクノロジーやハードウェアとは離れた形でアプリケーションのみ運用」するケースが中心で、ラインワーカーや組み込み向け、あるいは機密保持といった理由でインターネットと隔離されている場合など、特定の用途で効力を発揮する。



 Office LTSCに関していえば、基本的な製品構成はOffice 2021と一緒で、Skype for BusinessのみTeamsへの製品統合が理由で別途Download Center経由での手動導入となっている。



 今回発表された2種類の新しいOffice Perpetualだが、公式Blogによればサポート期間はともに「メインストリームサポートの5年間のみ」となっている。Office 2021についてはここまで説明した流れからも判断できるように、規定路線として「Office Perpetualのサポート期間は縮小していく」という動きに沿っている。



 だがLTSCに関しては用途特定型の製品であり、あらかじめ長期間の連続稼働を想定したものだ。同日に発表された「The next Windows 10 Long Term Servicing Channel(LTSC)release」というタイトルのBlog投稿では、「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」では従来通りの10年間サポートが提供されるものの、Office LTSCと並んで「Windows 10 Enterprise LTSC」についても5年間にまでサポート期間が縮小されるとしている。



 既存の「Windows 10 Enterprise LTSC 2015/2016/2019」については10年間のサポート期間は継続するが、新しいバージョンについては顧客からのヒアリングも含め「そこまで長期間のサポートは不要」と判断したという。



 もともと、Windows 10はSemi-Annual Channel(SAC)のアップデートサイクルに準じている限りは継続サポートされるという、従来のMicrosoftの「5+5=10年間」のサポートライフサイクルからは外れており、Office Perpetualについても「WaaS:Windows as a Service」同様に考えれば最新テクノロジーを取り込むのに「10年サポートでは遅すぎる」と考えてもおかしくはない。



 その意味で、一連の製品ライフサイクルポリシー変更は、過去20年ほどMicrosoftの特徴であった「10年サポート」を見直す機会になりつつあるのかもしれない。



●消えないオフライン体験



 サポート期間が大幅に削られてはいるが、Office Perpetualのように継続的にリリースされ続けるのも、それだけ非クラウド環境に対するニーズが根強く残っていることの裏返しでもある。



 強引なようでいて、一定数存在する潜在的なニーズについては末永くサポートしていくのもまたMicrosoftらしいところだが、今回のOffice 2021とOffice LTSCの発表にあたって記したBlog投稿の冒頭には次のような文言が踊っており、「クラウドの方がいいんだけど、どうしてもという顧客が……」という言い訳にも聞こえるメッセージが込められている。



At Microsoft, we believe that the cloud will power the work of the future. Overwhelmingly, our customers are choosing the cloud to empower their people?from frontline workers on the shop floor, to on-the-go sales teams, to remote employees connecting from home. We've seen incredible cloud adoption across every industry, and we will continue to invest and innovate in the cloud as we partner with organizations everywhere to build the best solutions for the new world of work. But we also know that some customers just feel that they can't move to the cloud despite the widely embraced benefits.



 実際のところ、現在のWindowsとOfficeはクラウド中心に作業が行われるように機能が“寄せられ”つつあるが、単純に従来の仕事環境を維持したいからという欲求だけでなく、何らかの形で直接インターネットとの接続を避けなければいけない業務というのは存在する。



 例えば製造現場におけるラインの制御であったり、開発室などでネットワークが業務部門と隔離されているケースであったりだ。先ほどのOffice LTSCも、全社的に導入するというよりも、比較的大きな組織において特定の部門やマシンなどに導入が必要ということの方が多いだろう。



 同様にOffice 365の考えにのっとれば、メールやストレージなどの機能もクラウド側に置くことになるが、当然企業によっては外に出したくないこともあるだろうし、法的なルールで自社のデータセンターでの運用が必要になるケースなど、オンプレミスでの運用が前提となることがある。



 「ハイブリッドクラウド」のような言葉もあるが、全てがクラウドで解決するとはMicrosoft側も考えておらず、必要に応じて必要な製品とソリューションを提供できることが大事だと認識しているはずだ。だからこそ、今後もまだ継続的にOffice 2021のような製品が登場してくると予想できる。



 最近のデータが入手できていないので、どの程度の比率かは分からないのだが、日本ではOffice Perpetualのような製品が人気だといわれる。PC販売では多少高価でもOfficeライセンス付属の方が人気があるとのことで、これを購入してそのまま企業のオフィスや家庭で仕事マシンとして活用するのだ。



 ビジネス利用可能なコンシューマー版Office 365が出てもこの傾向はさほど変わらなかったといわれ、他国に比べてもOfficeライセンスの販売が好調とされていた。ゆえに、Office 2021が登場したとして、真っ先にターゲットになるのは日本市場なのではないかとも筆者は考えた。



 だが、2021年1月に発表されたMicrosoft会計年度で2021年度第2四半期(2020年10月〜12月期)決算によれば、「Office Commercial(ビジネス向け)製品はオンプレミスからクラウドへのシフトと契約数減で売上減少だが、日本においては前年比で非常に好調」「Microsoft 365 Consumerサブスクリプションは日本において前年比で非常に好調」と非常に真逆の結果が出ている。



 この説明をそのまま受け取るなら、コンシューマー向けではクラウドが伸びる一方で、企業向けではOffice Perpetual購入が相次いだという風に読み取れる。コロナ禍でWFH(Work From Home)体制が拡大し、従業員はMicrosoft 365 ConsumerのライセンスがついたPCを買い求める一方で、企業は業務領域拡大のためにOffice Perpetualライセンスを買い求めたということで、目指すところは一緒でもその手段は異なっている。


    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定