野球部に残る女子マネへの偏見。選手との会話で感じた男女平等への課題

11

2021年03月08日 11:02  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真写真

『特集:女性とスポーツ』第9回
準硬式野球の女性登用とマネージャーの本音

 3月8日は国際女性デー。1975年に国連によって制定されたこの日は、女性たちによってもたらされた勇気と決断を称える日だ。スポルティーバでは女性アスリートの地位向上を目指し、さまざまなテーマで「女性とスポーツ」を考えていく。

 今回取り上げるのは、硬式野球、サッカー、バレーに次いで、大学スポーツで4番目に多い約1万1000人が競技する「準硬式野球」。加盟73大学、約3000人が所属する関東地区連盟で、初の女性理事が誕生した。70年以上歴史がある準硬式で、現在「女性の地位向上」が見直されている。山田善則理事長の言葉や、女子部員2人が話す本音から、野球界のバイアス、ジェンダーレスについて考える。




 #ウーマン川柳というハッシュタグがSNSで話題になっている。

「俺は無理」選べていいね、家事育児。

結婚か、介護でどうせ、辞めるやろ?

 悲哀で笑えるサラリーマン川柳の作風とは一変して、世の女性たちの心の叫びのようなものが並ぶ。徐々に改善されてきているとはいえ、「女性の尊厳」を考えたとき、野球界ひとつを見てもまだ旧態依然としたムードが漂っているように思える。

 たとえば、だ。「女子マネージャーは裏方に徹するもの」。そんな思い込み、先入観を私たちは持っていないだろうか? すべての野球部に当てはまるわけではないが、野球部員を陰で支えるのが女子マネージャーの姿。献身、自己犠牲こそが美徳。そんなバイアスに陥っていないだろうか。今まで何となく見過ごされてきたこの問いを、改めて見つめ直そうという動きが、準硬式野球の中で起こっている。74歳の山田善則関東連盟理事長の言葉から紹介する。

「女性の大学進学率は長期的に上昇していて、2017年の男女共同参画局のデータでは、男子の55.9%とほぼ同等の49.1%。大学生の半分が女性という数字が出ています。それなのに女性が打ち込める体育会系の部活は、圧倒的に少ない。我が関東連盟には約3000人の部員がいて、そのうち女子マネージャーは約150人です。この150人の価値を高め、優秀な人材として社会へ送り出すシステムを作ることにしました。その第一弾が、女性理事の登用です」

 2月28日、関東連盟理事会で連盟初の女性理事が誕生。就任した明治大学準硬式野球部出身の及川暁子さんは、女子マネージャーを経て一般企業に就職。主婦、母親でもある50代の女性である。部員時代は練習着の洗濯や裏方仕事、選手の要望があればボール出しなどの練習補助に追われる日々だった。「女子マネの経験で成長できた」と話す。

 及川さんの就任には「女子部員が活躍できる新しい野球界」を創りたい、という連盟の思いがある。山田理事長は「フラットに女性の価値を見られるのは、女性のほうが向いている。豊富なキャリア経験のある及川さんに、女子部員たちの中から社会のリーダー候補を発掘、育成してほしい」と期待する。ゆくゆくは政府目標でもある「女性管理職30%登用」に倣って、女性理事を増員することも検討中。「ジェンダーフリーな準硬式」を含め、社会情勢に柔軟に対応できる組織を目指す。

 学生委員の小砲△げ屬気鵝弊貊ぢ膤悄新4年)はソフトボールで、桐朋女子高時代に全国大会出場の経験を持つ。高校時代と同じく「短時間練習」で結果を出すことのやりがいを求め、準硬式野球を選んだ。現在女子マネージャーを務めるが、「裏方」だけで4年間を終わらせるつもりはない。「選手と同じように野球で自分を成長させたい!」と明るく宣言する。

「言われたことをただやればいいという受け身な女子マネージャーではなくて、1歩先に成長したい。部のスケジュール管理に自分も参加し、Googleアカウントを新設して事務的な仕事を監督やスタッフに共有したり、スプレッドシートでタスクの進捗状況を可視化したり。今まであった女子マネージャーの『当たり前の仕事』をより効率よく、質を高めてやりたい。自分からガンガン成長しにいっている感じです!」

 同学生委員の渡邊ももさん(立教大学・新4年)も同じだ。静岡・桐陽高時代、女子マネージャーをしながら豪州留学を経験し「裏方だけでは終わらない女子マネ像」を構想してきた。準硬式野球を選んだ理由は「社会性を身につけられるアルバイトが許可されていて、硬式と同じくらい真剣に野球ができる場だと感じたから」。その「真剣さ」について、先日こんな経験をし「男女平等」を深く考えたそうだ。

 就職活動で部活を休むことが増え、男子部員に「ごめんね」と伝えた。するとその部員は「なんで謝るの? 手伝ってもらっているのはこっちなのに...」と言い、そのあとの言葉を飲みこんだ。そのとき渡邊さんは少なからずショックを受けたと言う。「これは推測も含まれていますが」と前置きしたうえで、渡邊さんはこう続けた。

「自分では誇りを持ってやっているのに『手伝ってもらっている』と思われていることに少しだけ違和感を感じました。その選手もハッと気づいて言い直そうとしていたので、余計に気をつかわせているんだな、って。これが選手の持つ女子マネ像の潜在意識なのでしょう」

「マネージャーは戦力ではなく、お手伝いさん」。極端に悪い言い方をすればそういうことだろう。学生の不器用なやりとりがほほえましいが、これが無意識バイアスなのか? 渡邊さんは考えた。「女子マネは献身、自己犠牲のイメージが強い。そのバイアスを問うところから、部員同士で語り合いたいですよね。めちゃめちゃ煙たがられると思いますが」と、やはり明るく笑って話した。

 女性の社会進出が叫ばれているが、彼女たちの目もシビアだ。2人は「長く働く」を意識して就職活動をしている。渡邊さんは、業種にこだわらず、女性復職率、女性雇用の進んでいる企業をチェックしている。2人のキャリアプランは「20代で結婚、出産。子育てをしながら長く働ける仕事に就くこと」。理想のロールモデルは、家事をしながらバリバリ働く「自分のお母さん」と声をそろえた。

「女性が、っていうより、男女関係なく人は平等に扱われなければいけないと思う。そういう社会になってほしい」と小砲気鵝「女子マネージャーは物静かで、指示待ち、みたいなイメージを変えて存在感を高めたい。まずは男子部員と対等な立場で部活に参加できるようにしたい」と渡邊さんは言う。

 関東連盟では、現在20名の学生委員がおり、うち9名が女性だ。この春に広報会議(通称)「JUNKO-WERK CAFE」を設立し、連盟全体で産学運用、SDGs、サステナブル活動に積極参加することを決めた。「斬新な意見は、むしろ女子学生のほうから出てくる。男子学生にもさらに頑張ってもらいたい」と山田理事長。ジェンダーギャップ指数121位(153ヵ国中)と、G7の中で最も低い日本。深刻な問題だからこそ、準硬式は明るく「男女平等」を実現していく。

このニュースに関するつぶやき

  • 男子のマネージャーも裏方に回ると思いますけど( ´ω`)
    • イイネ!2
    • コメント 2件
  • 部員の肉便器笑
    • イイネ!5
    • コメント 1件

つぶやき一覧へ(7件)

ニュース設定