寺脇康文が語る、盟友・岸谷五朗との関係、そして「人生の転機となった出会い」

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2021年03月08日 19:10  週刊女性PRIME

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写真寺脇康文(撮影/齋藤周造)
寺脇康文(撮影/齋藤周造)

 今年で俳優生活37年目の寺脇康文さん。22歳で俳優デビュー。以来、多くの作品に出演。また、周りを包み込むような温かい人柄で情報番組『王様のブランチ』の初代MCを務めるなど、常に第一線で幅広く活躍している。盟友・岸谷五朗さんとともに結成した演劇ユニット「地球ゴージャス」も昨年25周年を迎えた。

 その「地球ゴージャス」が話題のブロードウェイミュージカル『The PROM』で、初の海外作品に挑戦する。3月10日の開幕を前に、「舞台への熱い思い」「岸谷さんとの友情」「人生の転機となった3つの出会い」「来年還暦とは思えない若さの秘密」などなど……たっぷり語っていただきました。

盟友・岸谷五朗との関係

 2020年の「地球ゴージャス」結成25周年は、記念公演がコロナ禍のためわずか8公演で中止になり「非常に悔しかった」と語る。25年間を振り返って思うことは──。

「僕たちの中では、本当につい最近始めた感覚があって。一作一作、自分たちの全力を込めて作ってきて、楽しんでいただきたくてやってきて、気づけば25周年という……。だから、長かったなも短かったなも、ないんですよね。周りから言われて、“あ! そんなにやっていたんだ”と思うくらいです」

「“(地球)ゴージャスの最高傑作は何ですか?”と聞かれると、いつも“最新作です”と答えるんですが、過去の作品も大事にしつつ、常に今やっていること、これからやっていくことを考えているという状態ですかね」

 演劇ユニット「地球ゴージャス」は、俳優・寺脇康文と岸谷五朗にとって「生きざまそのもの」と言い切る。

この時代にこういうことが起こっているから、こういう作品をやりたいというのを、いつも2人で話し合っています。例えば、東日本大震災の翌年に、みんなが苦しんでいるときだからこそ“楽しいものを作ろう!”という思いで『海盗セブン』を作ってみたり。2016年の『The Love Bugs』では虫を登場人物にして、“もう、人間として世界平和を訴えてもダメだから、虫に言わせちゃえ”とか(笑)。そのときそのときの世相を必ず反映させているので、過去の作品を見て“あ! こんなことを考えていたね”という話を五朗ちゃんとよくするんですけど

 岸谷さんは「人生に楽しむうえで欠かせないパートナー」だという。

「彼とは出会って36年、ずっと一緒に芝居をしてきていますし、お酒も飲むし、遊びもするし……。ゴージャスの公演では普段、楽屋も一緒ですし。全然違うタイプの人間なんですけど、根本にある“これはいいね、面白いね、これは面白くないね”という感覚が同じなんですよ。だから、これだけ長くやっているのだと思うんですけどね。ケンカもしたことがないですし」

「彼がいなかったら、ゴージャスもやっていなかったでしょうし。それだけ大変なことなので、2人だからできるというのはありますね。五朗ちゃんがいつも、“寺ちゃんはいるだけで、いいんだよ。おまえがそばにいると、なんかうまくいく気がするんだ”と言ってくれるんですけど、それはうれしいなと思いますし、僕も全幅の信頼を置いています。でも、僕のほうは“大丈夫、大丈夫”って言ってるだけなんですけど(笑)」

初の海外作品に挑戦する思い

 大人になってそんな友人がいるなんてうらやましいような、お互いにとってなくてはならない存在。その2人が思いを込めたオリジナル作品を上演し続けてきた「地球ゴージャス」が、初の海外作品に挑戦する。そのミュージカル『The PROM』は、2018年にブロードウェイで開幕し、2019年にトニー賞7部門にノミネート、昨年12月にはNetflixで映像化。今、世界的に注目されている作品を日本版として初上演する。今やるべき作品として今作を選んだ理由を尋ねると、

「五朗ちゃんが毎年ブロードウェイに行って、いろいろな作品を見て勉強してくるんです。それで毎回、彼が見てきた舞台の話を聞くんですね。彼が日本版の演出に参加したミュージカル『キンキーブーツ』を初めて見たときも、“日本人のお客様が楽しんでくれると確信した”と言ってましたが、『The PROM』も日本人に絶対に受け入れられると感じたそうで。さらにブロードウェイミュージカルでは珍しく、大人たちがグイグイ引っ張っていく物語も面白くて、僕もすぐにやりたいと思いました

「もうひとつは、25年を過ぎたときにちょうどこの作品に出あって、“そういう挑戦をしてみてもいい時期なのかもな”と。新鮮な風が吹く予感がしたんですよね」

 物語の舞台は、アメリカの高校で卒業生のために開かれるダンスパーティー“プロム”。レズビアンの主人公エマ(葵わかな)が、さまざまな人たちとの触れ合いにより、“自分らしく生きる”ことを貫こうと奮闘する姿が描かれる。エマのもとに現れる、落ちぶれかけたブロードウェイスター4人の傍若無人な行動に、劇場は笑いに包まれ、ブロードウェイらしい華やかな音楽とダンスシーンに、誰もが拍手をしたくなるようなミュージカル。

「この作品のテーマには、LGBTQのことや人種のことなど、世界的にセンシティブになりうる課題が入っているんですが、ゴージャスの作品にも戦争反対であったり常にさまざまな深いテーマがあります。でも、それを楽しい歌と踊り、ゴージャスの場合はアクションなどで包んで、お客様に楽しい時間を過ごしてもらいながら伝えたい。そして舞台を見た後は、元気になって“ああ〜面白かった。明日からまた頑張ろう”と思ってもらいたい。そういうところが同じなんですよね

「僕も舞台の資料を見たときに、最後の歌で鳥肌が立って感動が止まらなかった。自分で稽古場で歌っていても鳥肌が立つんですよ。どん底の大人たちが、エマたち高校生に教えられて素直な部分を取り戻したり、高校生たちも大人たちによって、勇気をもらったり。あらゆる年代の成長物語でもあるので、あらゆる世代の方に楽しんでいただけると思います」

 寺脇さんが演じるのは、鳴かず飛ばずのミュージカル俳優、トレント・オリバー。

「僕、トレントが大好きなんですよ。“とにかく人生を楽しんで生きたい”ということと、シンプル・イズ・ベストで何事も難しく考えないところ。トレントはこの作品のテーマをこんなふうにズバッと言うんですね。“外見から見るといろんなことがあるよ。肌の色も違うし、身長も鼻の形も違うよ。でも中身を見てごらんよ、肺があって、腸があって、心臓があって、同じじゃない”と。だから、それをわかれば、みんなが平和に暮らせるでしょ? って

トレントは非常にスッキリした人間なんです。僕もそんな人生を送れたらいいなと思って。だから演じていてとても楽しいんですよ。今、心身ともに健康状態がすごくいいです(笑)」

人生の転機となった3つの出会い

 1984年に三宅裕司主催の劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)に入団し、俳優人生をスタートしてから、今年で37年目を迎えた寺脇さん。人生の大きな転機となった3つの出会いがある。

最初は三宅裕司さんという、SETの座長との出会いです。そこで、今の自分がやっていることの土台の技術も笑いのセンスも、スタッフへの接し方や人としての考え方というのを教えてもらえたのは大きかったです」

「そして、同じ劇団で五朗に出会えた。これが2つ目です。俳優人生のスタートで人生をともに歩んでいく男に出会えた。それも大きいです」

「3つ目は、やっぱり水谷豊さんと出会えたことですね。29歳のときにドラマ『刑事貴族2』で初共演させていただいて。作品のメイン(キャスト)としてのあり方、撮影現場での居方(いかた)、人に対する考え方などを教えていただきました」

 俳優・寺脇康文の名を一躍メジャーにした作品とえいば、やはり『相棒』。演じた亀山薫は、今も語り継がれるハマリ役だ。

「亀山という役に出会ったことは大きいです。もともと、豊さんが2人で一緒にやろうと言ってくださってできた作品なので、亀山はルパン三世みたいなイメージの刑事にしたい、という僕のアイデアをプロデューサーが受け入れてくれたんですね。豊さんのちょっと堅い杉下右京と亀山薫という静と動の刑事像ができていって。自分のやりたかった刑事像がうまくいったことは、豊さんにもプロデューサーと脚本家にも感謝しかないです」

「その後、豊さんが“このままやっていると、一生、亀山になってしまうよ。そろそろお前がメインの作品をやっていけ”と送り出してくださって。『相棒』を卒業してから1〜2年は、亀山を超えなきゃって気負いがありました。でも、非常に大事な僕の財産なのだから、そこを超える必要はないなと思うようになりましたね」

来年には還暦を迎える

 現在、59歳。年齢的に人生の折り返し地点を過ぎて、より大切に思うのは「人生を楽しむこと」と明かす。

「なるべく楽しい時間を持ちたい。だから、細かいことをあまり考えなくなってきたかな。若いときは、悩むことがひとつのエネルギーですけど、50を越えてくると悩んでいるのがもったいないなと思って(笑)」

「例えば若いころは、“この歌のメロディーがどうしてもつかめない。キーが出ない。悔しいから頑張ろう”と思いましたけど、今は“出るキーでやればいいや”っていう考えになって。もちろん努力はしますけど、できることのベストを尽くすというか。ないものねだりするんじゃなくて、自分が今できる能力があるものを生かそうと

 普段の生活での楽しみは──。

今はできませんけど、やっぱり仲間たちとお酒を飲む時間が本当に楽しくて。それは、若い方たちに何かを伝える場でもあるし、こちらが何かを学ぶ場でもあるし。そういう幸せな時間っていうのをすごく大切にしたいなと思いますね。“どうしたら一日に楽しい時間がたくさん生まれるのか”というのは、いつも考えています」

 身長180cmのすらりとしたスタイルは、20代のころからほとんと変わっていないそう。体形維持のためにしていることを聞くと。

お酒を飲みたいし、好きなものを食べたいから、運動はします。でも、無理はしません。しんどいことを続けようとしても気持ちが続かないから、このくらいでいいかという毎日続けられるものをやる。朝起きて、半身浴をして、ストレッチをします。筋トレも腹筋はしますけど、腕立てとかしんどいものじゃなくて、バットの素振りとかで楽しみながらできることをやっています。あと何もない日は、ウォーキングで1時間半〜2時間くらい歩きますね」

「ジムは苦手なので行かないです。そのほうが自分のペースでできるし、その日の体調や気分で“歩くのも半分で終わろう”とか“筋トレは休もう”とか。楽ちんなところを作っておかないと、張り詰めちゃうので。でも毎朝、半身浴の後に必ず体重計に乗ります。それで食事の量を調節したりはします。身体が商売道具なので最低限のメンテナンスをするのは当たり前ですけど、僕は自分のおなかが出るのがいやなんですよね(笑)

 来年には還暦を迎える寺脇さん。これからも演劇への情熱が衰えることはなさそうだ。

「今回の舞台の稽古中も、五朗ちゃんと話しましたけど。悲しいかな、昔はできていたことが、できなくなるってことがあるわけですよね。だから60代は、できていた幻に惑わされず、危ないことはやらない勇気を持って(笑)。でも、今のところは、今いちばんしたい芝居を作ることを続けていくでしょうね。あと、地球ゴージャスの最後の目標としては、僕ら2人か、もしくは役者4人くらいの少人数で、全国都道府県を回る公演をするっていうのを決めているんですよ。いつになるかわからないですけど(笑)

(取材・文/井ノ口裕子)

〈PROFILE〉
てらわき・やすふみ 1962年2月25日、大阪府出身。1984年に三宅裕司主宰の劇団スーパー・エキセントリック・シアターに入団し俳優ビュー。複数の公演出演を経て退団。1994年、岸谷五朗とともに演劇ユニット「地球ゴージャス」を結成。以降、舞台、映画、ドラマで幅広く活躍。映画『ブルーヘブンを君に』が6月11日(金)全国公開。現在、NHK Eテレの語学番組『ボキャブライダー on TV』にレギュラー出演中。

●公演情報
Daiwa House Special Broadway Musical『The PROM』Produced by 地球ゴージャス(東京公演:2021年3月10日〜4月13日、TBS赤坂ACTシアター/大阪公演:5月9日〜5月16日、フェスティバルホール)
脚本:ボブ・マーティン、チャド・ベゲリン
音楽:マシュー・スクラー
作詞:チャド・ベリゲン
日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
出演:葵わかな、三吉彩花/大黒摩季・草刈民代・保坂知寿/霧矢大夢/佐賀龍彦(LE VELVETS)・TAKA(Skoop On Somebody)/岸谷五朗、寺脇康文ほか
〈公式サイト〉https://www.chikyu-gorgeous.jp/the-prom/

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