ドラッグストアで「窃盗団の大量万引き」増加中! 万引きGメン連れ去り事件も発生、死と隣り合わせの現場

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2021年03月13日 19:12  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 こんにちは、保安員の澄江です。

 ここのところ、日本各地のドラッグストアにおいて、ベトナム人窃盗団による大量万引き事件が頻発しています。私たちはもちろん、警察も検挙に勤しんでいますが、彼らの手口は粗暴かつ巧妙で、もれなく捕捉するに至りません。その被害は頻発しており、一度に数十万円相当の商品を持ち出されることも珍しくなく、系列店舗をハシゴする連続窃盗と呼ぶべき事案も目立ちます。1日の被害合計が、100万円を超えることもあり、その悪質な犯行に憤りを感じることも増えました。また彼らは、逃げ足が速いことも特徴で、その捕捉は困難を極めます。共犯による犯行が多く、見張り役の男に威嚇されることもあって、言ってしまえば犯行を抑止することすら難しい状況にあるといえるでしょう。

 最近は、コロナ禍の影響で盗品の輸出が困難になり、大麻の密造販売や家畜窃盗、高級青果農場荒らしにシフトする者が増えたという話も聞きますが、帰国したくても状況が許さず生活苦に陥り、常習万引きに至る者が増えている側面もあります。今回は、私が遭遇したベトナム人による集団万引き事案について、お話ししていきます。

 当日の現場は、北関東の街道沿いに位置するドラッグストアS。コスメドラッグを中心に、処方箋から食品まで、さまざまな商品を取り扱う地域で人気の有名チェーン店です。ここのところ、ベトナム人と思しきアジア系外国人の大量万引き被害が頻発しているとのことで急な依頼をいただき、どことなく鈴木福くんに似ている男性保安員(38)と2人で勤務に入ることになりました。柔道初段がウリの新人さんで、彼と会うのは、この日が初めてのこと。長時間電車に揺られて、ようやく待ち合わせ場所である改札口に到着すると、耳の潰れた体格のいい男性が、おにぎりを食べているのが見えました。

(きっと、あの人だわ)

 そばに寄ると、すぐに気付いてくれたので、簡単に挨拶を済ませて徒歩で現場に向かいます。2人並んで歩けば親子に見えないこともない感じですが、182センチ、105キロという福くんの存在感はやかましいほどで、一緒にいたら仕事にならない気がしてきました。

「体が大きいから、スーパーなんかじゃ目立つでしょう?」
「そうなんですよ。ドラッグストアは、隠れ場所がないから、苦手なんですよね」

 あからさまに姿を見せて万引きを抑止するのは意外に簡単なことですが、逃がしてしまえばほかの店が被害に遭うため、クライアントは常に捕捉を求めてきます。そうした事情から、店内における現認は私1人で行い、福くんは捕捉に専念してもらう作戦を立てました。外国人相手の捕捉は、男性の力が不可欠なので、大船に乗ったような気持ちで現場に入ります。

 客足の少ない店内で、なるべく動かないように身を潜めながら人の出入りを中心に警戒していると、夕方になって若い外国人の男が入ってきました。おそらくは20代前半くらいでしょうか。袋やバッグなどは持っておらず、一見すると一般客に見えますが、女性用の化粧品売場に直行したことで強度の警戒対象と化しました。犯行に至るとすれば、カゴヌケや持ち出しの手口を用いると想定でき、外で仲間が待機している可能性が高まります。

「仲間がいるかもしれないから、よく確認して。確認したら、出口付近で待機ね」

 店外のことは福くんに任せて、1人店内に残って化粧品売場を一巡する男の行動を見守れば、高額な化粧品や避妊具、サプリメントなどの店頭在庫量を確認しているようです。すると、突然に風除室まで引き返した男は、2つのカゴをカートにのせて、再度売場に戻ってきました。犯行に至ることを確信して、店内の状況をメールで福くんに伝えます。

 わずかな時間に、いくつかの商品棚を空にして見せた男は、2つのカゴに商品をあふれさせると、まさに一目散と行った体で、出口に向かって走り出しました。出口を通過する際、防犯ゲートが鳴りましたが、店員さんが反応することはありません。発報に怯むことなく、出口を駆け抜けて外に出た男の跡を追いかけると、駐車場に停まるシルバーのワンボックス車の後部ドアに手を伸ばしているのが見えました。スライドドアを開いて、カゴを車内に放り込んだ男の後方から、福くんが勢いよく掴みかかります。

(柔道初段だっていうし、大丈夫よね)

 そう信じて駆け寄ると、後部座席から仲間の男が飛び出してきて、2人を引き離すべく福くんの手をつねりました。それでも離さないとみるや、間に割って入って、車内に押し込むように犯人の背中を押し始めます。揉み合っているうち、犯人を掴んだ手を離さないでいた福くんも、引きずられるようにして車内に吸い込まれてしまいました。

「ちょっと、待って! 止まりなさい!」

 自分でも驚くほどの大きな声で叫びましたが、止まるはずありません。急発進して、猛スピードで走り去るワンボックス車を追いかけながら、110番通報して車の色やナンバーを警察に伝えた私は、事務所に緊急連絡を入れながら店舗に戻りました。ひどく動揺していたのでしょう。体の震えが収まらず、声を振るわせて状況を説明する私に、店長が言います。

「これは、警察を信じるしかないですね。まずは、犯人の写真を用意して、警察の到着を待ちましょう」

 極めて冷静に対応され、我に返った私は、店長と2人で防犯カメラの映像から逃げた犯人の写真を探し出して抽出。続けて、駐車場に設置された防犯カメラの映像を確認していると、捜査と書かれた腕章をつけた刑事を先頭に、複数の警察官が事務所に入ってきました。抽出したばかりの写真を渡して、探し当てた逃走車の映像を見てもらうと、一通りの状況を確認した刑事が、無線で情報を拡散するよう警察官に指示を出します。

「至急、至急! 警備員連れ去りの件、被疑車両はシルバーのワンボックス、ナンバーは……」

 いままでに経験したことがないほどの不安に襲われ、生きた心地のしないまま事情説明を続けていると、さらわれていた福くんが足を引きずりながら事務所に入ってきました。

「ちょっと、あなた大丈夫? なんで連絡しないのよ」
「車から蹴り落とされちゃいました。どこかでスマホを落としたみたいで、どうしようもなかったんですよ。途中、パトカーにも手を振ってみたんですけど、気付いてもらえなくて」

 話によれば、ワンボックス車内で揉み合った末、走行中の車内から蹴り落とされ、そのまま逃げられてしまったということでした。車内には、3人の外国人が乗っていたそうで、その顔つきからベトナム人に違いないと話しています。一通りの状況確認を終えて、警察官に救急車を手配させた刑事が、福くんに言いました。

「あんた、死ななくてよかったな」

 結局、福くんのスマートフォンを遠隔で検索したところ、犯人の車に放置されていることが判明。それが捜査の端緒となって、この日のうちに犯人は捕まり、盗んだ商品も回収されました。犯人は、3人ともベトナム人。そのうちの2人は、オーバーステイで検挙されることになり、万引き(事後強盗)の調べはしないまま入国管理局に送られます。

 診察の結果、幸いにも足と膝、顔の打撲で済んだ福くんでしたが、この日を最後に退職してしまいました。退職理由を聞けば、命の安売りはしたくないとのことで、何も言い返せずに別れを告げた次第です。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

このニュースに関するつぶやき

  • これもう強盗じゃん。普通に営業して取り返せるレベルの被害じゃないな。二重扉にしてレシートチェックするくらいの対策が必要だね。
    • イイネ!13
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