中学受験で「特進選抜コース」合格も、3カ月で落ちこぼれたワケ……「入学前にスマホデビューがいけなかった」

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2021年03月14日 19:11  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 今年度の中学受験も、大きな混乱はなく、無事に終了した。今頃、新中学1年生は家族も含め、残り少ない小学校生活を謳歌していることだろう。

 中学受験は非常に過酷な世界なので、長期間タイムスケジュールに縛られ、自由時間はドンドンと削られていく。小学6年生の学習時間は、平日だと塾を含め6時間、休日ともなると12時間ということも、格段驚くことではない。さらに週単位で発表される偏差値という数字に一喜一憂。このように大変なプレッシャーの中で頑張るのが中学受験生とその家族なのだ。
 
 受験終了直後は、その長きにわたる張りつめた生活から、突然解放されるので、逆に戸惑うほどだろう。

 専業主婦の亜美さん(仮名)のケースはこうだった。亜美さんの一人息子である和樹君(仮名)の結果は3戦2勝。惜しくも第1志望校は逃したものの、第2志望校の「特進選抜コース」という難関大学を目指すコースに合格。和樹君いわく「余裕!」だったそうだ。

「やっと塾生活から解放されたので、和樹ものびのびと友達と外で遊ぶのかな? と思ったら、とんでもない。ずっと家の中でゲーム三昧です。でも、あれだけ過酷なことをやらせたので、入学までの2カ月くらい、好きなだけ遊ばせてあげたいっていう変な親心が出ちゃったんですよね……」

 そのうちに、和樹君は入学祝いとして携帯電話をゲット。念願のスマホデビューを果たしたという。

「これが、いけなかったですね。私はまったくのアナログ派で、何が何だかわからず、自分がスマホで困った時にも和樹に聞くくらい疎いんですが、気がついたら、和樹は指の先にスマホがくっついているのかと思うほど、四六時中、スマホを触るようになっていました。勉強ですか? 1秒もしていませんでしたね……」

 そうこうしていると、中学生活が始まり、アッという間に梅雨を迎え、中間テストが行われたそうだ。

「驚きました。6年一貫教育は、高2で高校課程が終了し、高3では大学受験の勉強に専念できるシステムだとは知っていましたし、そこに魅力を感じたことも確かです。でも、それって、毎日の授業がフルスピードで行われているってことの裏返し。そのことに気がつかなかったんです」

 亜美さんは夏休み前の保護者面談で、担任の先生からこう言われたそうだ。

「正直、和樹君の成績が今のような状態ならば、進級時に『特進選抜コース』から、別のコースへ移動ということになります。夏休み明けにテストがありますから、それに向かって頑張ってください」

 亜美さんにとっては衝撃の一言だったらしい。

「信じられませんでした。上位での合格に間違いはないはずなのに、入学後たった3カ月で“落ちこぼれ”認定ですから。でも、それ以上にショックだったのは、和樹にいくら勉強を促しても、動かないことでした」

 「もう、『勉強! 勉強!』ってうんざりなんだよ! いい加減にしてくれ!」という和樹君の態度に、亜美さんはため息をつくしかなかったそうだ。

 中高一貫校は成績に厳しい面があるので、ついてこられない生徒への指導も手厚く、放課後や早朝に補習を組んでくれる学校は多い。たとえ、生徒自身が楽しみにしている部活の活動日があったとしても、たいていは補習優先になりやすい。そのことも、和樹君のストレスになっていたのかもしれない。

 結局、和樹君は中2で「特進選抜コース」から「進学コース」に移動となり、現在は新高3直前。亜美さんいわく、和樹君は併設高校には進めたものの、成績が低迷し、浮上できなくなった“深海魚”となり、大学受験が心配される状況という。

「今さらですが、中学受験終了後の親の対応がいけなかったように思います。和樹にとっては、中学受験で第2志望の『特進選抜コース』に受かったことは『目的達成』で、これで一生、勉強から解放されると思ったんでしょう。それなのに、入ってみると、級友たちは入学前から英語学習を進めていたりして、アッという間に差がついてしまいました」

 実は和樹君のようなケースはとても多い。中学受験合格がゴールになってしまい、いわゆる「燃え尽き症候群」になってしまうと、勉強するという自主性が失われてしまうのだ。
 
 新中1生は、現在、自由を謳歌している季節だろう。もちろん、謳歌したほうがいいとは思う。しかし、勉強するための中高一貫校であるという意識も、頭の片隅に置いておくべきだ。

 筆者は、1日の勉強時間12時間の生活から、いきなりゼロにすることには反対の立場である。せっかく身に着けた学習習慣。失うのは簡単であるが、再び身に着けるのは、至難の技だからだ。

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