渡辺直美を「わきまえた女」だと思っていた!? 佐々木宏氏、ブタの格好で「チャーミングに見える」発言の“男尊女卑”

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2021年03月19日 00:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

渡辺直美インスタグラムより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「これで彼女がチャーミングに見えると思ったのですが」佐々木宏氏
(「週刊文春」2021年3月25日号、文藝春秋)

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)が、「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」「(大会組織委員会の女性役員7人は)わきまえている」と発言したことが問題視され、辞任に追い込まれたのは2月中旬のこと。差別を許さない、平和の祭典の長として不適切な発言だっただけに、辞任は当然のことだと思うが、森氏を気の毒にも感じている。

 世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本は153国中121位。後ろから数えたほうが早い、ジェンダー後進国、もしくは男尊女卑国家だ。日本では、2018年頃から広がった「#MeToo運動」以降、SNSを中心に、女性差別に関して声を上げようという風潮になってきたが、長い歴史から考えると、それは「ここ最近」の出来事。80代の森氏に、今さらそれを理解せよと言っても、無理だろうと思うからのである。

 森氏がいなくなったから、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が一気に男女平等の方向に向かうと、私は思わない。これだけ長いこと男尊女卑を抱えてきた国なのだから、「森的なもの」はそこかしこに含まれているはずで、それらはゆっくり時間をかけて、けれど決してあきらめずに一つずつ解決していくしかない……と思っていたら、「ニュー森」が現れた。開閉式の演出を指揮する「総合統括責任者」の佐々木宏氏だ。氏は電通出身のCMクリエイターで、66歳。サントリー「BOSS」の「宇宙人ジョーンズ」やソフトバンクの「白戸家」シリーズを手掛けたことで知られている。

 この佐々木氏が、五輪開会式の演出プランとして、タレント・渡辺直美にブタの衣装を着せ、「舌を出して『オリンピッグ』と言わせる」という内容を提案していたこと、また、周囲のスタッフに「ヤバい」と指摘され、却下になっていたことが、「週刊文春」(文藝春秋)の取材でわかった。

 小池百合子都知事ではないが、絶句してしまう。しかし、佐々木氏本人に罪の意識はないようで、「文春」の取材に対し、「これで彼女がチャーミングに見えると思った」と“善意”による提案であったと釈明した。

◎渡辺直美にとって「痩せているか太っているか」は問題ではない

 そもそも、佐々木氏はブタが意味するものをご存じなのだろうか?

 キリスト教の世界では、ブタは侮蔑の対象である。また、第二次世界大戦中、ナチスドイツがユダヤ人の大量虐殺を行ったことはご存じの通りだが、手塚治虫の名作『アドルフに告ぐ』(文春文庫)では、女性が「私はユダヤのメス豚です 私は何人も ドイツ人の男をベッドへさそいこみ 堕落させました」と書かれた札を首にかけさせられ、群衆から「豚!」「売春婦ーッ!」とののしられるシーンがある。手塚氏が取材に基づいて描いたのかは不明だが、当時ユダヤ人が、ブタと呼ばれていたことについては、数々の証拠が存在する。反対にブタを褒め言葉をして使う国もあるが、いろいろな国の人が集まることを考えると、誤解を生むような表現を避けるべきではないだろうか。

 渡辺にブタの格好をさせようと思ったのは、オリンピックのピックとブタ(ピッグ)をかけたのだろうが、それは渡辺の体形も関係しているのではないか。痩せている女性が美しいとされる日本で、渡辺はそのルールに自分をあてはめようとしない。

 2018年12月3日放送の『人生が変わる1分間の深イイ話 2時間スペシャル』(日本テレビ系)では、中国の『紅白歌合戦』ともいえる人気番組に出演し、大好評を博した渡辺に密着していた。パフォーマンスを終え、疲労回復のために裸体になってマッサージを受けようとした渡辺だが、肩甲骨のあたりで肉が波打っていることに、男性スタッフが驚く。その時、渡辺は「太っていると思ってるでしょう?」と聞いた後、「でも、私は今の自分が好き」「ひざが痛くて踊れないとかならともかく、人の基準に合わせて痩せようとは思わない」といった話をしていた。

 これはおそらく、痩せているか太っているかは、渡辺にとって、さしたる問題ではないという意味だろう。しかし、番組では終始、渡辺を「女性らしさとは真逆」と表現していた。

◎ブタの衣装は、男尊女卑的視線の象徴

 太っているのは女性らしくないと決めつけることは、男尊女卑の最たるものだと私は思うが、その実、男尊女卑的な思考の人ほど、「太っている女性」のことを愛でる傾向があるのではないか。

 私は新卒でごりごりの男尊女卑会社に入ったが、その時の経験からいうと、男尊女卑的な思考の強い男性ほど、若い細身の美しい女性を好むように感じている。まぁ、世の男性の多くはそういう女性が好きだろうが、ポイントは、男尊女卑度の高い男性こそ、若くない、細くない、美人でない女性につけいられていたということだ。

 これはどういうことかというと、若くない、細くない、美人でない女性が、「私、オバちゃんだし」「私、デブだし」「私、ブスだし」といった具合に、欠点を自ら口にすると、男尊女卑度の高い男は「彼女はわきまえた女」として、掌中に入れてかわいがるようになる。当時、女性社員の中には、職場での自身の居場所を確保するため、割り切って「わきまえた女」を演じていた人もいたと思う。

 反対に、そういうオジサンに下手に出ず、距離を狭めない、仕事だけしている女性は、「愛想やかわいげがない」「外見の問題じゃなくて、性格が悪い」と悪い評価をどんどん上乗せされてしまう。

 佐々木氏は、渡辺にブタの格好をさせることを「これで彼女がチャーミングに見えると思ったのですが」とコメントしている。人にブタの格好をさせて、なぜチャーミングに見えるのか、私には理解できないが、男尊女卑的な視線で見ると、佐々木氏は、(渡辺の意思とは別に)バラエティで体形をイジられる彼女を見て、「太っていることをわきまえ、笑いを取って頑張っている」「その姿が健気でチャーミング」とでも思ったのではないか。

 渡辺は台湾や中国、アメリカでも活動し、ファンを増やしている。それは、渡辺の見た目も含めた芸が受け入れられているのだと私は思うが、やはり男尊女卑度の高い人は、常に外見でしか女性を見ようとしないのではないか。ブタの衣装は、男尊女卑的視線の象徴のような気がしてならない。

 渡辺は4月から活動拠点をアメリカに移すと発表していた。こんなくだらない男尊女卑オジサン、もしくは男尊女卑国家にとらわれることなく、どうか思いっきりアメリカで実力を発揮してもらいたいものだ。

このニュースに関するつぶやき

  • 確かイタリアとかでは縁起のいい動物って言われてるらしいけどここ日本ではそうじゃないから騒がれたんだよ。でも普段から有り難く命頂戴してるのにねぇ…。直美さんがほんとに気にしてなければ良いのだが…
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