皇后さま、新興宗教の“教祖”に心酔!? 宮内庁が問題視した「教団」と、皇室の知られざる事実

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2021年03月20日 20:02  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

皇室が特別な存在であることを日本中が改めて再認識する機会となった、平成から令和への改元。「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます!

前回まで――昭和時代、皇后さまに愛されながらも、宮内庁から「魔女」と呼ばれた女官・今城誼子さん。その後、宮中では密かに「魔女狩り」が行われ、今城さんは追い出されることになるのですが、その背景には宮内庁の権力者・入江相政侍従長の独断が働いていたようで……。

宮中の「魔女狩り」と新興宗教

――これまで、昭和天皇の人間宣言のウラで起こっていた「宮中の魔女狩り」ミステリーに迫ってきました。「魔女」と呼ばれた女官の今城さんは「祭祀」を重視するタイプで、宮内庁の権力者・入江侍従長の描く“開かれた皇室”像とは折り合いが悪かったとのことでした。

堀江宏樹氏(以下、堀江) 宮中祭祀をなにより大切にすべきと考える今城さんは「魔女」どころか、実は「聖女」なんです。しかし、昭和40年代の宮内庁は、入江相政侍従長の考える「新しい天皇のありかた」の支持者と、今城女官の考える「古い天皇のありかた」の支持者に、分断されてしまっていました。

 それだけならまだしも、今城さんの態度に怒りを感じた入江氏はついに昭和天皇を頼り、「魔女狩り」に着手するのでした。

――おお、ついに「魔女狩り」を迎えるのですね。

堀江 決定打となったのは、天皇皇后両陛下の戦後初になるヨーロッパ訪問の問題でした。天皇皇后の外遊は公式発表がなされるまでは絶対の機密事項として取り扱われるのですが、当事者である皇后さまが、女官であった今城さんに、ヨーロッパ行きの話をしてしまったようなのです。

 今城さんがフランス語の勉強をにわかに開始したので、それを怪しんだ新聞社に、ヨーロッパ訪問の発表前に情報をすっぱ抜かれてしまった……少なくとも入江氏はそう主張しています。通常なら、今城さんにはその責任を取って退いていただくことになりえますが、皇后さまが今城さんを「ヨーロッパに随行させたい」と執心なさり、今城さんナシなら「私はヨーロッパには行かない」とまでおっしゃる事態となりました。

 こうして皇后さまと入江氏のガチバトルが勃発です。最終的に、入江氏は「今度の御旅行(のメイン)はお上(昭和天皇)なので皇后さまはそのお供、おやめになりたいなら仕方ない、ただ理由としてはすっかりすっぱぬくほかない、もういい加減におやめになったら」などと申し上げたそうです。

――だいぶワイルドな言葉遣いですね。「すっぱぬく」って、でもなにを?

堀江 この魔女問題を著書で取り上げられている皇室ジャーナリスト第1号の河原敏明氏いわく、これは今城さんが皇后さまを神道系の新興宗教「誠の道(真の道)」に勧誘しようとしていた疑惑を、マスコミにリークするぞ、という意味だそうです。

――ちょっと待ってください。新興宗教に皇后を勧誘ですか? 急に話がいかがわしくなってきました。

堀江 当時、「真の道」という新興宗教に、皇后さまを入信させようと今城誼子さんが手引きしたと入江氏は考え、それに怒っていたというのが河原氏の主張です。

 実際、昭和42年2月4日の入江氏の日記には「保科さん(=女官長)から聞かされた所によると魔女の行くのは『誠の道』と言う集団の由」とあり、入江氏は、魔女が通う(と入江氏らが信じた)教団を問題視していることがわかります。

 しかし、皇室ジャーナリスト・河原氏の実地調査によると、「真の道」の教団幹部からは「皇室やその関係者とはつながりがない」との明言が得られました。

――今城さんは濡れ衣であったと。でも、火のないところに煙は立たぬといいます。少なからずそんな気配があったとか?

堀江 ちなみに「真の道」、そして今城さんに関係なくても、皇后さまが別の新興宗教に強い関心をお寄せになっていたことは事実のようなんですね。

 旧皇族で、皇后さまにとっては実の姪にあたる久邇正子さんが信者だった、「大真協会」という新興宗教の教祖・椿麗寿という方がすごい霊能者だったそうなんです。一説には、皇后さまも入信なさっていたとか……。

――ひえー。

堀江 そんな余談もありながら、結果的に今城さんを連れずに皇后さまはヨーロッパに旅立つのですが、当地でイヤリングとネックレスなどをどこに収納したかわからなくなり、大騒ぎになったそうです。

 ところが大真協会の信者だった松園英子女官経由で、椿教祖の霊視を受けると、教祖の霊視した場所とほとんど違わない場所でネックレスなどは見つかったとか……。

――見つかっちゃったんですか! というか、新興宗教の信者は今城さんではなく、その松園という女官だったんですね……。

堀江 そうです。でも不可思議なことですが、河原さんいわく、入江氏の怒りは松園英子女官には向かわなかったようです。松園さんは入江氏のお気に入りだったとか。

 さて、失くしものを超遠隔霊視で発見した椿教祖さんに皇后さまはすっかり魅了されてしまったようです。その抜群の霊力の込められたサケの切り身などを、同じく信者だった松園英子女官経由で宮中に運び込み、皇后さまはお食べになっていたようですね。

 しかし皇后さまが、この手の宗教団体に熱心に接触していたのも、宮中の侍医(医師)が治せない、昭和天皇の顔面痙攣などの症状を椿教祖の祈祷で和らげたくて……という願いがあったがゆえのようです。久邇正子さんの証言によると、ほかに昆布やウニ、スジコなどにも椿教祖が霊力を込めて献上していたそうです(「女性セブン」1999年1月1日号)。

――霊力のこもっているアイテムが、海鮮物なのが独特ですね(笑)

堀江 日本各地からの皇室への献上物が書かれた、平安時代初期の書物『延喜式』にもスジコ(正確にはスジコを孕んだサケ)が、「内子鮭(こごもりのさけ)」として登場するので、献上品については、『延喜式』にインスパイアされているのかもしれません。

 ただ、これはすべての霊能者にいえることかもしれませんが、「大真協会」の椿教祖の治癒の祈祷に怪しい部分もなかったわけではないのです。また、こういう宗教に皇后さまが本当に入信までしていたかどうかはグレーゾーンなのですが、傾斜していたことは事実なのですね。

 入江氏はそんな皇后さまの行動を警戒しており、調査をしていたけれど、もともと彼の中では魔女である今城誼子さん経由だという証言が得られると、その真偽を追究することなく、一気に彼女を悪者に仕立て上げ、宮中から追放するという荒っぽい手段に出たようですね。

――要するに今城さんは、皇后さまの新興宗教に接近という“問題行動”を煽動している人物として、スケープゴートにされたということですか?

堀江 そうですね。祭祀を重んじる今城さんの主張に行きすぎはあったでしょうけれど、入江氏の問題視する皇后さまの”宗教かぶれ”の原因が今城さんだったわけではない。しかし、入江氏はとりあえず、これを良い機会として、今城さんを切り捨てることを画策しはじめた……というのが皇室ジャーナリストの河原氏の主張であり、僕もそれに納得はしています。入江氏は、今城誼子さんに嫉妬していたともいいますね。

――男の嫉妬ですか!! 次回に続きます。

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