関西最難関「灘中」の志願者が1割も減った理由とは

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2021年03月21日 16:00  AERA dot.

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写真関西地区の中学受験率は前年並み、東海地区は上昇傾向にあるという(写真はイメージです)
関西地区の中学受験率は前年並み、東海地区は上昇傾向にあるという(写真はイメージです)
 首都圏では受験率微増となった今年の中学入試。比較的公立が強いと言われている関西や東海地区も、ここ数年の傾向を見ると、中学受験率が上昇しています。難関校の人気は不動ですが、関西ではコロナの影響を受け、大阪で受験生を減らしている学校もありました。

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 関西2府4県(大阪・兵庫・京都・奈良・滋賀・和歌山)の中学受験率はここ数年間じりじりと伸びていたが、今年はほぼ前年並みだった。日能研関西(神戸市)取締役の森永直樹さんは、次のように話す。

「2020年度は大手塾の小学6年の生徒が増えており、21年度入試の受験者数は増えると予想されていましたが、実際はわずかながら減少しました。コロナの影響によるものと考えられますが、経済的な問題よりも、学校や塾が長期にわたって閉鎖されたため勉強のリズムが崩れ、準備期間が短い受験生がリタイアしたためだと思われます」

 一方、一人当たりの出願校数が増えたため、総志願者数は昨年の6万1683人から6万2045人に増加するというねじれ現象が起きた。森永さんは言う。

「コロナ禍でも、受験を決めた生徒はしっかりと受けていることの表れでしょう。関西では午後入試が増えており、午前、午後と1日に2回受験する受験生が増えたことも考えられます」

 今年は関西の難関校、灘(兵庫)の志願者が昨年の775人から687人に減少した。教育情報誌などを制作するユーデック(大阪市)の植田実さんは「首都圏の受験生が抜けたため」と説明する。

「コロナの影響で、本番の前に腕試しをしようという首都圏の受験生が大幅に減りました。しかし、関西の受験生は減っておらず、易しくなったわけではありません」

灘は都道府県別の志願者と合格者の数を公表しており、それによると1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)居住の志願者は前年よりも89人減少。全体の減少数の88人にほぼ匹敵する。

 20年度の大学入試で東京大合格者53人、京都大52人と大幅に実績を伸ばした西大和学園(奈良)は2235から2303人に増え、前年比103.0%と堅調に推移した。

「数値上はわずかしか増えていないように見えますが、中身が変わっている。2日目の午後という併願日程の中で、志望順位が上がってきています」(森永さん)

 洛南高校附属(京都)も868人から881人と前年比101.5%で、微増となった。

「関西には関東のような難関女子校が少なく、両校が優秀な女子の受け皿になっている。西大和学園は首都圏など各地でも入試を行っており、男子は寮があるので関西以外からも人気が高まっているようです」(森永さん)

■志願者を1.4倍に伸ばした「須磨学園ショック」

 今年関西で一番注目されたのは、志願者が1075人から1494人と前年比139.0%となった須磨学園(兵庫)だ。19年には夙川(兵庫)を経営統合。須磨学園の人気が上昇し難化したため、受験生が流れた夙川が621人から1123人と約2倍に急増した。須磨学園の人気の理由を、森永さんは次のように話す。

「先進的な教育を行っており、面倒見もいい。コロナによる休校中、オンライン授業の質が高くメディアで紹介されて話題になりました」

 次に付属校をみてみよう。付属校は学校によって明暗が分かれた。植田さんは「関西は早慶大のような最難関の付属はなく、関東のように突出した人気校はありません」と言う。

 関西で人気があるのは関関同立(関西大・関西学院大・同志社大・立命館大)系で、中でも同志社大のブランド力が強い。同志社女子(京都)は同志社系では比較的入りやすい「お得な学校」と注目され、志願者は788人から938人に増加。来年は難化しそうだ。

 全体的に好調だったのが立命館大の付属だ。

「立命館大は系列に立命館アジア太平洋大(APU)などがあり、大学自体も先進的なイメージがある」(植田さん)

 特に立命館守山(滋賀)は647人から767人に増え、前年比118.5%。京都からも通いやすい立地で併願が増えた模様だ。

 関西学院千里国際(大阪)は125人から122人と微減にとどまったが、同志社国際(京都)が403人から349人、神戸国際(兵庫)が205人から183人と、国際教育を標榜した学校は志願者を減らした。

「コロナで海外へ留学できないことが響いた。しかし実際にはオンラインを用い、先進的な教育を行っています。イメージだけでなく、きちんと中身を見てほしいですね」(森永さん)

■初めての算数1教科入試が好調

 今年の併願日程は大阪の私立中学減少傾向なのに対し、兵庫では増加した学校もあった。コロナの影響とみられている。

「関西の受験生は、解禁日1月16日の午前中に本命校を受け、16日の午後以降に併願校を受けます。兵庫県東部(主に阪神間)の受験生は県内の学校を本命校とする生徒が多いですが、併願校は大阪の学校を選択するケースも多々見られます。今年、併願日程で大阪の学校が減ったのは、東部の受験生がラッシュ時の長時間通学を避けたいと、併願校も県内を選んだからではないかと推測しています」(森永さん)

 学校説明会が開かれず学校見学が思ったようにできなかったため、安全志向から伝統校やネームバリューの強い学校を選ぶ受験生も多かった。特に女子校にその傾向が見られ、神戸海星女子学院(兵庫)は257人から274人、プール学院(大阪)は145人から188人、親和(兵庫)は833人から847人に増加した。

 親和は昨年からプレゼンテーション入試を導入。志願者が集まるか注目されたが、昨年の志願者9人に対し、今年は2倍の18人を集めた。

「関西は首都圏ほど、入試がバラエティーに富んでいるわけではありません。今年は親和と滝川第二(兵庫)で算数1教科入試が導入され、それぞれ64人、149人と想定以上の志願者を集めました。今後増えそうです」(森永さん)

■東海地区は受験率上昇

 東海3県(愛知・岐阜・三重)では、中学受験率は上昇傾向にある。

東海では、コロナ禍にもかかわらずのべ受験者数が昨年の1万5383人から1万5694人に増えた。愛知ののべ受験者数は5年連続で増えている。推定の実受験者数で算出した受験率は6%程度だという。

 一方、岐阜ののべ受験者数は1045人から986人に減少。岐阜は愛知との交通の便が良く、例年は併願する受験生も多いが、今年はコロナの影響で移動が敬遠された模様だ。三重は昨年の1592人から1761人と大きく伸ばした。

 日能研東海(名古屋市)代表の野田幹人さんは、コロナ禍でも増えた理由を次のように話す。

「休校中の対応で、私立と公立の差が出ました。例年、受験からリタイアする6年生がいるのですが、今年はむしろ少なかったですね。上位層は手堅く第1志望を受けていましたが、中堅以下の受験層は安全志向が働き、合格を取れたら、第1志望でなくても早々に入学を決める受験生も多かったです」

 男子校最難関の東海(愛知)は、志願者数が998人から1020人に増加。17年以来の1千人超えとなった。同じく女子校最難関の南山女子部(愛知)も670人から705人と伸ばし、実質倍率が3.91と4倍近くまで跳ね上がった。

 例年1千人以上の志願者を集める名古屋(愛知)は、1524人から1497人と減らしたが、合格者を絞ったために実質倍率は上昇した。名古屋女子大学(愛知)は他校より早い1月10日から入試を開始しており、前哨戦として受ける志願者が増加している。今年も790人から892人と大きく増やしている。

 今年は金城学院が、英語を教科テストとして入試に導入した。数年前より東海地区では、中堅校を中心に英語を教科テストとして実施する入試や、英検など外部の資格で英語力をアピールできる入試が増えている。前者は12校、後者は21校で導入。今後は特に、より手がかからずに英語力をアピールする入試が増えていきそうだ。 

「コロナの影響で志願者が減ったり、志望先を変えたりするのではないかと見られましたが、ほとんどなかったですね。東海地区の中学受験率は、今後も上昇が続くのではないでしょうか」(野田さん) 

(文/柿崎明子)

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