宮城で新型コロナ急拡大 「3.11」と「GoToイート再開」内外の人出急増で拍車の可能性

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2021年03月22日 08:05  AERA dot.

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写真3月18日、宮城県と仙台市は独自の緊急事態宣言を発出した。独自の緊急事態宣言について説明する村井嘉浩知事。(c)朝日新聞社
3月18日、宮城県と仙台市は独自の緊急事態宣言を発出した。独自の緊急事態宣言について説明する村井嘉浩知事。(c)朝日新聞社
  宮城県で、新型コロナウイルスの感染者が急増している。3月20日に確認された新規感染者は過去最多の125人。人口あたりの感染者数は東京の倍以上で、全国ワーストだった。また、21日にも過去2番目となる112人の感染が確認されている。

【写真】昨年の休業要請解除後の仙台・繁華街

■独自の緊急事態宣言を発出

 宮城県内で新たに確認される感染者数は、2月中は1日あたり20人未満で推移していたが、3月に入って急増した。3月11日に50人、3月17日には107人が確認され、翌18日に県と仙台市による独自の緊急事態宣言が発出された。

 ただ、対策には限界も見え隠れする。村井嘉浩知事は19日、緊急事態宣言の実効性について問われ、「我々行政ができることは限界がある。皆さまの行動の自粛をより強くお願いするしかない」と発言した。

 元国立感染症研究所主任研究官で厚生労働省クラスター対策班メンバーでもある東北大学大学院の小坂健教授は、現在の県内の感染状況について、こう危機感をあらわにする。

「これまでは、県内で人数が増えていても大規模なクラスターが発生しているなど経路を追いやすかった。一方、今は仙台市内を中心にあらゆる場所で感染者が見つかっています。『ここを抑えればいい』という状況ではなく、抑え込みはかなり難しくなっています」

■プレミアム付き食事券は93万冊

 感染急拡大の要因としてまず指摘されたのが、「Go To イート」だ。宮城県では、去年12月28日から一時停止していたプレミアム付き食事券の販売を、2月23日に再開していた。

 1冊4000円で5000円分の食事券が購入できる内容で、一時停止前に販売していた分も含め、3月9日の段階で93万冊が売れたという。

 だが、販売を再開した直後から感染者が急増し、県は3月16日から当面の間、販売を再度停止した。村井知事は15日の定例会見でこのことを問われ、「再開してから、また感染者が増えてきているというのは事実」「Go To イートと感染拡大の関係がないとは言えない」と認めている。

 3.11で集まった取材陣の影響を指摘する声も大きい。東日本大震災から10年を迎えた3月11日前後には、全国各地から取材陣が被災地入りした。そして、その多くが仙台市を経由する。記者自身もそのひとりだ。出張前は在宅勤務を徹底し、出発前日と到着翌日、さらに帰京後にも抗原検査を受けているが、ウイルスを持ち込んでしまった可能性はゼロとは言い切れない。

 石巻市に住む50代の男性はこう話す。

「今年の3.11は、取材陣の数が例年と比べ物にならないほど多かった。新型コロナが増えたのはそれが原因ではないかと思っています」

■要因は「複合的」

 前出の小坂教授は感染急拡大ついて、Go To イート再開も3.11も要因のひとつとしつつ、こう指摘する。

「感染拡大の要因は複合的だと思います。飲食店の時短営業終了やGo To イート再開で人出が増え、そこに県外からのウイルスが持ち込まれることで徐々に広まったと考えています」

■人手は有意に増加

 宮城県では、Go To イート再開に先立つ2月8日、仙台市内の飲食店に出されていた時短営業要請が解除されている。2月は飲食店の閑散期だが、解除によって夜の街の人出は有意に増加した。また、3月5日には利府町に大型商業施設「イオンモール新利府 南館」がオープン。地元紙によると、開店前に2000人が並ぶなど多くの人が集まった。

 そこに、県外からの来訪が加わっている。2月13日深夜に福島県沖で発生した最大震度6強の地震の後は、多数の保険関係者らが被害状況の確認などで宮城県を訪れた。また、2月25、26日には東北大学の入試が行われている。2020年のデータでは、約8000人の入学志願者全体のうち宮城県内出身者は16%程度で、大半は県外からの受験だった。今年も多数の受験生が宮城県を訪れている。そして、先に述べた3.11だ。

■仙台は東北のハブ

 さらに、関東圏の緊急事態宣言が解除されることで、県外に住む子や孫が宮城県行きを計画するケースも増えているという。

「仙台は人口が密集していてウイルスが広まりやすい環境です。さらに、仙台はハブになっていて、ここから県内各地、東北各地へ人が移動していく。今のところ感染者の大半は仙台で確認されていますが、これから地方でもさらに広がっていくのではと懸念しています」(小坂教授)

 18日に宮城県と仙台市が発出した緊急事態宣言では、当初は飲食店の時短要請などは盛り込まなかったものの、21日になって、仙台市内の飲食店に対して25日から再び時短営業を要請することを決めた。

 小坂教授は、県と市が一体となってメッセージを発したことには一定の効果があるとしつつ、懸念を深める。

「仙台市では、既に濃厚接触者の追跡調査が追い付かない状況もあるようです。『このケースがなぜ検査されていないんだ』という例や、『保健所からの連絡待ちでいつ検査を受けられるかわからない』という例をいくつも見聞きしている。保健所の機能を充実させて、感染経路をつぶしていくことにまず注力しなければなりません。今回の緊急事態宣言ではその点が強調されず、焦点がぼやけています」

■具体的な指針が望まれる

 村井知事は17日、国に濃厚接触者調査やPCR検査を担う保健師の派遣を要請したことを明らかにした。ただ、関係者からは「医療・福祉分野の問題とされ、県庁一丸で取り組む姿勢が見えない」との指摘もある。

 さらに、大半の人はすでに十分に対策を取っている、として、小坂教授はこう続ける。

「多くの人にとって、『これ以上何をすれば……』という状況です。気にしすぎる人は日常の買い物にも出づらくなる一方、気にしない人にはメッセージだけでは響かない。例えばどうしても飲食店を訪れる場合はいつも一緒に過ごしている人4人以内で、とか、既に販売した食事券を使う際にはメールアドレスを登録して万一の際に追跡できるようにするとか、明確で具体的な指針を示すべきでした」

 25日には、東北大学で2000人規模の卒業式が行われる予定だ。この1年間大学生活を満喫できなかった学生たちが、最後は直接顔を合わせ笑顔で卒業できるように、これ以上の感染拡大は何としても食い止めたい。(編集部・川口 穣)

※東北大学は21日夜、卒業式について式典会場への出席は、各総代及び学生表彰者のみに縮小して実施すると発表した

※AERAオンライン限定記事 

このニュースに関するつぶやき

  • 東北大学は、患者と触れる実習が必要な学年の医学部生までワクチン接種を開始したばかり……体制が拡充される前に、感染が拡大しつつあります。学生だと「足手まとい」か?
    • イイネ!1
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