小型だけどパワフル! 片手で持てる第11世代Core搭載のIntel NUCを試す

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2021年03月31日 12:22  ITmedia PC USER

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写真Intel NUCの最新モデル「Intel NUC 11」。さまざまなバリエーションがあるが、評価機は2.5インチドライブを格納できるCore i7-1165G7搭載の「NUC11PAQi7」(開発コード名:Panther Canyon)だ
Intel NUCの最新モデル「Intel NUC 11」。さまざまなバリエーションがあるが、評価機は2.5インチドライブを格納できるCore i7-1165G7搭載の「NUC11PAQi7」(開発コード名:Panther Canyon)だ

 一部は店頭にも並び始めたが、Intelから第11世代Coreを搭載するミニPC「Intel NUC 11」(開発コード名::Tiger Canyon)がリリースされた。ミニPCの雄Intelの最新世代NUCとあって、そのパフォーマンスが期待される。



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●GPUがIris XeになったTiger Lake世代のミニPC



 今回の評価機は型番が「NUC11PAQi7」と一般向け(ビジネス向けのTiger Canyon、ゲーマー向けのPhantom Canyonもあり)で、パッケージは「ホーム」型をしていてかなり大きい。屋根を取り外すとボックスとその上にNUC本体が現れ、ACアダプターなどの付属品はボックス側の引き出しに収納されていた。ちなみに、NUC本体を取り出した下にはタイガーマークがあった。Tiger Lake世代の製品ということでの演出だろう。



 第11世代NUCが搭載するCPUは、ノートPCではTiger Lakeの開発コード名で知られる第11世代Coreだ。製造プロセスは10nm SuperFinで、第10世代Core時の10nmプロセスに改良を加え、性能を向上したものだ。



 加えて、GPUはアーキテクチャを一新したIntel Iris Xe Graphics(Core i7/i5モデル)が統合されている。Iris Xeは、比較的軽量タイトル&軽量画質設定のものというただし書きはつくが、人気ゲームタイトルをフルHDでプレイできるという触れ込みである。実際にゲーム目的でこれを導入するかどうかは別として、そういった基本性能があるということだ。ゲームはしないと言っても、現在ではPCをより快適に使うためにGPUを活用するので、この部分の性能をおろそかにはできない。



 ただし、今PCを検討している人の多くが、まずはノートPCを探しているだろう。ディスプレイとキーボード、バッテリーを含め、ノートPCは1台で完結することに加え、1人暮らしやローテーション勤務など、小型でモバイルできるといったメリットがある。ではあえてデスクトップPCのNUCを検討する理由を挙げれば、快適さの追求だろう。



 NUCはノートPCのように、喫茶店でも取引先でもといったわけにはいかないが、十分に小さいため持ち運びは苦労しないし置き場所にも困らない。接地面積はわずか約117(幅)×112(奥行き)mmしかない。



 仕事机や勉強机、リビングに置いてもよい。共働きでともに在宅勤務といったシーンではビデオ会議などで部屋の取り合いがあるとよく聞く。ノートPCなら自宅内を自由に移動できるが、それとほぼ同じことをNUCでも可能だ。



 別途ディスプレイや入力機器を用意する必要があるが、考えようによっては自由な選択ができる。24型や27型、32型といった大型の液晶ディスプレイやTV、あるいは逆にモバイルディスプレイとの組み合わせという選択肢もある。



 画面解像度もフルHD(1920×1080ピクセル)だけでなくWQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)など必要に応じて選べる。キーボードも入力感にこだわれば長時間の文書入力も快適にこなせるだろう。



 パフォーマンスも一部についてはカスタマイズ可能だ。NUCにはキットとミニPC(OS込みの完成品)があるが、これまでの国内販売形態は自作市場向けのキット版と、一部BTOパソコンとしてミニPCといった形だ。多くの場合、メモリやストレージの容量や性能をユーザーが選べる。



●天板にスマホを置けばワイヤレス充電できる「Q」に対応



 さて、NUC11PAQi7は少し特殊なモデルなので先にその説明をしておこう。Intel NUCのスタンダードモデルにはバリエーションがある。M.2スロット1基のスリム版Kクラス(高さ38mm)と、M.2スロット1基に2.5インチベイ1基を備えたトール版Hクラス(高さ51mm)。そして評価機は型番(NUC11PAQi7)にQの文字があることからも分かるように、QクラスはHクラスをベースに天板部分にワイヤレス充電パッド(15W対応)を内蔵したモデルだ。そのため、Hクラスから高さが5mm増した56mmとなっている。



 NUCと言えばVESAマウント形式で液晶ディスプレイなどの背面に取り付けての運用でも知られるが、Qクラスの場合、VESAマウントするならばワイヤレス充電パッドが縦になる。本製品にはVESAマウントアダプターが付属していなかったが、つまりVESAマウントとワイヤレス充電は両立できないためだ。VESAマウントを利用したい場合はHやKクラスを選ぼう。



 120W対応のACアダプターが付属するのはCore i7/i5モデルとされている。Core i3モデルは異なるようだ。そして「Q」クラスではQiで利用する15W分を差し引いた105Wが本体の求める最大電力ということになるだろう。



 続いて、ボディー内部を見ていこう。



●小型ボディーながら拡張性も確保



 内部へのパーツの組み込み方法は従来通りだ。底面の4つのネジを緩めて(落脱防止ネジ)、底面のカバーを外してアクセスする。ストレージはM.2スロット×1と2.5インチベイ×1で、第11世代Coreを搭載するためM.2スロットはPCI Express 4.0 x4にも対応している。



 ちなみに、2.5インチベイに搭載可能なストレージは7mm厚までの制限がある。例えば15mm厚クラスの大容量HDDを内蔵できない。もっとも、一部のHDD、SSDはほとんどが7mm厚なので選択肢は豊富だ。なお、7mm厚で限定するとHDDは2TBが最大で、SSDの方がまだ容量単価が高いとはいえ最大8TBまで用意されている。



 少し脱線するが、旧世代のNUCを運用している経験則としてストレージ選びのポイントを挙げておこう。まず、QやHクラスを選択する人の多くが2ドライブを使いたいケースだろう。もちろん、2.5インチベイにはHDDもSSDも装着でき、そこは問題なく動作するが、ドライブを搭載する前の状態から比べると心なしかファンの回転数が上がる印象だ。



 省電力とはいえ、SSDもHDDも熱源に変わりはない。HDDよりはSSDの方が若干、発熱が低くて済むので、理論上はSSDの方が静かになるだろう。また、ファンによる強制冷却を採用しているが、NUCの内部はかなり密な状態で熱がたまりやすい。熱源を1つ減らす、エアフローが循環するスペースを少しでも広く確保するという目的で、2.5インチベイをあえて使わないという選択もありだ。



●最新CPUに新アーキテクチャのGPUに次世代インタフェースを採用



 本製品が搭載するCPUはCore i7-1165G7。4コア8スレッドのCPUで、定格クロックがコンフィグラブルTDP-up時で2.8GHz(28W)、同TDP-down時で1.2GHz(12W)、ターボブースト時の最大が4.7GHzとなる。4コア8スレッドあれば、一般的な用途なら大半がカバーできるだろう。



 GPU機能は、統合グラフィックスのIntel Iris Xe Graphicsだ。クロックは1.3GHz、EUが96基といった仕様である。第11世代Core i7中で最大のEU数であり、アーキテクチャの変更と合わせて従来の統合GPUから一線を画した性能が得られるだろう。



 メモリは2スロットあり、動作クロックはDDR4-3200まで、容量は合計64GBまで対応する。なお、Core i7-1165G7はDDR4-3200に加えてLPDDR4x-4267にも対応しているが、NUCはベアボーンキットなのでDDR4-3200という選択肢しかない。



 統合GPUは、メインメモリをシェアするためメモリ性能が重要で、NUCの場合はここがネックとなる。単純にグラフィックス性能だけで見れば同じCPUを搭載し、メモリがLPDDR4xのノートPCの方が3D性能が高いということもあるだろう。かといってNUCがLPDDR4xをオンボード実装していたら、メモリの拡張性が失われることに加え、性能と引き換えに価格も上昇してしまう。ここはトレードオフと言える部分だ。



 インタフェースは前後および左側面に用意される。前面にはThunderbolt 3(Type-C)×1、USB 3.1 Gen2(Type-A)×1、オーディオ入出力ジャック×1、電源ボタンがある。背面には電源入力、Mini DisplayPort 1.4×1、2.5GbE対応有線LAN×1、USB 3.1 Gen2(Type-A)×2、Thunderbolt 3(Type-C)×1、HDMI 2.0b×1がある。左側面にあるのはSDXCカードリーダー(UHS-II対応)だ。



 この他、右側面にはセキュリティ・ロックスロットを備え、ワイヤレス通信ではWi-Fi 6やBluetooth 5.2が利用できる。



 ACアダプターは3極(C5、通称ミッキー型)で、出力120W(19V×6.3A)だ。NUCが小さいだけにACアダプターの大きさが印象的だ。評価機には付属していたが、キット版はAC電源コードが別売とのことなので、C5型のケーブルを入手する必要がある。



 続いて、ベンチマークテストで本製品の実力を見ていこう。



●DDR4メモリでも3D性能が大幅アップ! CPUやPCIe 4.0 SSDで高速



 それでは、本製品のパフォーマンスをベンチマークで確認していこう。ただし、評価機はメモリが1枚しか搭載されておらず、これではIris Xe Graphicsの性能が引き出せない。今やメモリの増設は2枚単位のデュアルチャネルが一般常識になっているので、実際に同じ製品を手にした際の性能も異なるだろう。そこでアクセスタイミングが全く同じDDR4-3200 SO-DIMM 8GB×2枚を用意した。その性能差を先に提示しておこう。



 PCMark 10 ExtendedではOverallで443ポイントの差が出ている。個別のテストで見るとほとんど大差ないものもあるが、それは主にCPUを利用するテストだ。現在のコンピューティングでは、一見CPU処理(ここはCINEBENCH R23が示す通り差が出にくい)がメインに見えてもGPUを利用するものが多い。PCMark 10ではホーム用途のEsssentials、ビジネス用途のProductivity、クリエイティブ用途のDigital Content Creation、そしてゲームという4つのシナリオでは、全てデュアルチャネル時の方が高スコアだ。



 特にゲームではPCMark 10のシナリオ自体が1.3〜1.4倍の差だが、実際のゲームでも概ねこれに近い性能差が出ている。よほどの理由がない限り、NUCではデュアルチャネル構成で組みたい。



 以降は、デュアルチャネル時の計測値を中心に性能を見ていこう。



 3DMarkでは、Time Spyが1582、Fire Strikeが4180、Night Raidが15625、Wild Lifeが10392といったスコアだ。Fire StrikeとNight Raidのスコア差の通り、比較的軽量のタイトルがプレイ可能といったあたりになるが、従来のIntel UHD Graphicsのスコアよりも高いため、同じタイトルではより高解像度あるいは高画質設定が望める。



 かなり軽量のドラゴンクエストX ベンチマークソフトでは、フルHD、高品質時で12288ポイントの「すごく快適」評価だ。とはいえ、従来のIntel UHD Graphicsでも同タイトルは十分なスコアと評価を得られており、高性能なIris Xe Graphicsでは当然だろう。Iris Xe Graphicsらしさは、4Kの高品質時でも3208ポイントの「普通」評価が得られているところにある。



 World of Tanks enCore RT(リアルタイムレイトレーシングオフ)の超高プリセット(画質:超高、1920×1080ドット、アンチエイリアス:超高)も、5736ポイントで「良好な結果」評価を得ている。



 ゲームタイトル以外にも、動画の変換速度や発熱を見ていこう。



 STREET FIGHTER Vベンチマーク(60fpsの上限を外して計測)では、フルHD時で画面品質「中」が87.24fpsで、これ以上の設定では60fpsを割り込んだ。また、HD時(1280×720ピクセル)では「最高」まで引き上げても77.81fpsが得られている。VSYNCを有効に戻した際、常に60fpsをキープできるのはこのあたりの設定だ。



 ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマークは、フルHDの場合、標準品質(デスクトップPC)で5337ポイントの「とても快適」評価を得た。1つ上の高品質(デスクトップPC)も「快適」評価なのだが、平均フレームレートは24.03723fpsだったので、いわゆるTVのフレームレート相当でありPCディスプレイではややひっかかりを感じる。一方、HD時なら最高品質でも6536ポイントの「とても快適」評価なのでこの選択もよいだろう。



 HandBrake 1.3.3で4K/60p→フルHD/30p x.265変換を行った際のフレームレートは、CPU処理時が34.55fps、Quick Sync Video利用時が39.66fpsだった。なお、シングルチャネル時はそれぞれ32.88fps、36.51fpsなので、このような用途でもデュアルチャネル構成が性能を引き出す鍵と言えそうだ。



●温度管理も問題なし! ホーム/ビジネス/教育用途で役立つNUC



 ベンチマークテストの結果が示す通り、CPU性能だけでなく、GPU性能も大幅に向上している。GPUの性能アップは、PCMark 10が示すようにゲーム以外の分野でも効いてくるため、システムとしての快適さは従来製品以上だ。これまでにもNUCを活用してきた人は、比較的大きなアップデートなので買い換えの候補として検討してみるのもよい。そしてノートPCではなく省スペースかつ高性能のデスクトップPCを求める人、在宅勤務などのニーズでもNUCを試してみるのは大いにアリだろう。



 最後に、CINEBENCH R23のMulti-Coreテスト時の温度推移を紹介したい(HWiNFO64でログを取得)。CPU温度はベンチマークの開始から80度付く近まで急上昇し、そこからはなだらかに最大96度まで到達した。クロック側のグラフにあるように、そのタイミングで動作クロックが3.5GHz前後に抑えられるようだ(とはいえ十分に高めのクロックと言える)。



 クロックが引き下げられたことによって、CPU温度もそれ以降は75〜90度前後にシフトした。なお、96度というのは高い数値に見えるが、Core i7-1165G7のTjunctionは100度なので許容の範囲内だ。そしてログを見る限り、サーマルスロットリングも生じていなかった。



 とはいうものの、ベンチマークのように負荷率が100%近い際の動作音はかなり大きい。NUCのようなミニPCでは小型のファンを1基しか搭載できないためだ。ボディーの左右にファンを備えたり、1基あたりの回転数を落としたりすることも可能なノートPCの方が静かということも多いだろう。負荷が高いシーンであってもそれが長時間でなければ、先の通り高クロック動作で快適な性能なので、Intelがいうところのホーム、ビジネス、教育といった用途なら比較的静かな動作音内で快適な性能を得られる。



 このような使い方のポイントを押さえれば、NUCはコンパクトで場所をとらず、優れた性能が得られる選択肢と言える。そしてQクラスはワイヤレス充電パッドを備えたことにより、スマートフォンなどを常に充電しておくことも可能で、ビジネスシーンでは特に活躍してくれることだろう。


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