平均年齢は75歳! 働く高齢女性が急増、彼女たちがのめりこむ「現場の魅力」

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2021年04月03日 08:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

※画像はイメージです

 コロナ禍の厳しい状況の中でも「女性だからこそ、できることがある」として高齢女性の活躍の場を広げているのが、全国各地で社団法人として運営されているシルバー人材センター。現在23万人超の女性会員が活躍している。60歳から入れるとあって読者世代も興味津々! ということで、女性会員の活躍促進に特に力を入れている2つのシルバー人材センター(以下SC)でお話を伺った。

「おかげさまで当センターの会員数はこの5年間で200名近く伸びており、その半数は女性です」とは狛江市SC常務理事事務局長の池田あけみさん。

「コロナの影響で減少した仕事もありますが、むしろこういうご時世だからこそ増える仕事もあります。開店前1時間だけの清掃など、人を常時雇うのが厳しい事業主から必要とされるピンポイントの仕事は、シルバーに最適。今後シルバー向けの仕事はさらに増えていくのではないかと期待しています」(池田さん)

 また、女性会員の愛称『シルボンヌ』の名づけ元である埼玉県SC連合の中でも最大の市であるさいたま市SC参事兼浦和事務所長の佐藤まゆみさんも、日々女性のパワーを実感中。

「緊急事態宣言発令前のデータでは、女性会員の7割はセンター提供により就業しています。また、シルバー人材センターは働いてお金を稼ぐことだけが目的ではないんです。仕事やボランティア活動を通じて社会に貢献したり、“女子会”と称して開催しているお茶会やヨガなど女性会員に特化したイベントの参加で居場所や仲間をつくれると、好評です」(佐藤さん)

男性中心だったSCに変化の兆し

 そもそもシルバー人材センターとは、高齢者が働くことを通じて生きがいを得るとともに、地域社会の活性化に貢献するための組織。定年退職後もシルバー人材センターに入会して元気に働き続ける高齢者は多いものの、会員の男女比はこれまで圧倒的に男性が多かった。

「世代的に仕事は男性がするもの、という考えが地方では特に根強く、当センターでも女性会員の比率は30%以下でした。ところが、近年は保育など女性向けの仕事を増やしたことで40%近くまで増えてきています」(池田さん)

 入会前の方からは、資格や経験がないことを気にする声も多いというが、そんな心配も不要。

「私は何もできないから……と言う方がいらっしゃいますが女性は特に、仕事のノウハウをすでに持っているんです。家事や子育ての経験がそのまま仕事に生かせるのが女性の強みです」(池田さん)

 現状、会員から人気の職種は清掃、福祉・家事援助、事務、施設管理など。今後は共働き世帯が増えるなどして、女性が活躍できる、家事援助や保育補助の仕事が増加していくことが予想される。

保育園や学童保育での育児支援、また、介護施設や高齢者宅での家事援助や、話し相手などの需要はさらに高まると思います。どれも女性ならではの気配りやコミュニケーション力があってこそできる仕事です」(佐藤さん)

お金だけじゃない!? 働く真の目的とは

 シルバー人材センターでの就業は月10日程度、週20時間未満という決まりがあり、収入(配分金)は全国平均で月8〜10日就業した場合、月額3万〜5万円程度。

「高齢者が年金で足りない金額は約4万円といわれていますから、そのレベルには相当するのでは」(佐藤さん)

「金額的にはお小遣い程度かもしれませんが、無理なく頭や身体を使い健康を維持しながら配分金をもらえるので喜ばれますね」(池田さん)

 とはいえ、冒頭でも触れたとおり、シルバー人材センターは単なる就業提供ではなく、地域社会の活性化や高齢者個人の生きがいを得るためという目的が主体。手にする配分金のほかに大きなメリットが会員にもたらされる。

「毎日用事があったり、仕事で周囲の方からあてにされることは、高齢者にとって活力になります。女性なら、今日は出かけるからきれいにしていかなきゃと口紅ひとつ塗るのも大事なことですよね。それが若さの秘訣だと思います」(佐藤さん)

「女性は特に人から見られたり人と付き合うことで驚くほどきれいになっていきます。お金があるから自分には必要ないと考えるのはもったいないですよ」(池田さん)

 さいたま市SCでは、3年間の追跡調査で、フレイルといわれる状態(加齢とともに心身の活力が低下し、健常から要介護へ移行する中間の段階)の高齢者が、センターでの活動や就業によって心身ともに元気になり要支援から脱出したというデータもある。

「活動率を上げることは医療費削減の貢献にもつながっています」(佐藤さん)

 さらに狛江市SCでは、90代で草取りの仕事をこなし、健康診断ではどこも悪いところがないとお医者様に驚かれる方や、今年5月に100歳になられるのに、1日400件のポスティングをされている方など、驚きの実例も!

「シルバーの仕事は、お金だけじゃない。社会の役に立つことで自分も元気になれる“生きがい就業”。家に閉じこもってあれこれ考えるよりも、すぐにでも意識を変えて働きましょう!」(池田さん)

 これからの超高齢化社会に向け、シルバー、ミドル世代問わず女性の人生設計に必要な選択としてぜひ活用、注目していきたい。

【さいたま市】

1位 福祉・家事援助サービス
→高齢者や共働き家庭の個人宅での掃除、洗濯、食事作りなど。ただし、コロナ禍になってからは減少傾向。(配分金平均 月/6000円) 

■2位 清掃
特にアパートやマンションの共有スペースの清掃が人気。気軽にできることや、適度に身体を動かせる点もメリット。(配分金平均 月/20800円)

■3位 事務
書類整理や伝票整理、受付業務、コピーや封入作業など。補助的な作業が多く体力に自信がない方でもトライしやすい。(配分金平均 月/7800円)

【狛江市】

■1位 施設管理
市役所や公民館などの公共施設、マンションなどの受付や管理業務。人と接することが好きな方に人気。(配分金平均 月/27800円)

■2位 保育補助
保育園で保育士さんの業務を手伝う。可愛い子どもたちに囲まれて予想以上に楽しいという声が多数。(配分金平均 月/30000円)

■3位 清掃
特にアパートやマンションの共有スペースの清掃が人気。気軽にできることや、適度に身体を動かせる点もメリット。(配分金平均 月/12000円)

国をあげて応援!
“シルボンヌ”が地域を席巻中

「シルボンヌ」とは、「シルバー」とフランス語の「ボンヌ」(お手伝い・親切・優れたの意味)を合わせた造語で、シルバー人材センターのイメージアップと女性会員の入会促進に向けて、公益財団法人いきいき埼玉(埼玉県SC連合)が平成30年に定めた女性会員の愛称。シルバー人材センター全体のイメージ変革につなげたいとの思いから、現在では全国のセンターが会員への普及・浸透に取り組んでいる。

“シルボンヌ先輩”に聞いた!
4人の体験談

【1】気づけば10年!仕事も交流も楽しくてやめられません

『子どもたちとの交流で元気をもらえる』

 隣のお宅のご主人が定年後も生き生きと働く姿を見たのをきっかけに、60歳のときに入会しました。2か月後、最初にいただいたのは、駅周辺の駐輪調査の仕事。希望の職種ではなかったものの、初めての仕事にワクワクしたのを覚えています。その後も単発や短期的な仕事をいくつか経てたどり着いたのが、現在の図書室の受付。

 本も子どもも大好きな私にとっては理想の仕事で、貸し出しや返却処理の合間に子どもたちと話したり、おすすめの本を紹介するのが何よりの楽しみです。また、現在はセンターの理事も務めさせていただき、会員のみなさんの意見を取り入れながら“女子会”(女性会員の交流会)を企画するのも本当に楽しく、充実した日々を送っています。

生澤さん(71歳):さいたま市シルバー人材センター会員
【シルバー人材歴】 10年
【現在の就業内容】中学校の図書室の受付業務
【平均就業時間】週3日、月12時間程度
【月平均配分金】30000円

【2】自分の特技がまさか、こんな形で生かせるなんて!!

『まさかの「先生」も予想外に楽しい!』

 習字の経験を生かせる仕事を探していたのですが、なかなか見つからなくて。そんなときにシルバー人材センターのHPで筆耕の仕事を見つけ、60歳になってすぐに登録。登録の翌月には希望どおり習字の仕事に就けました。

 ただ、いただいた仕事は保育園のお習字指導。それまで人に教えた経験はなかったので、最初は不安でした。どう進めたらいいか悩んでセンターの方に相談したところ、前任の方を紹介してくださって。

 お話を伺うことができたので、不安も解消できました。仕事が始まると、子どもたちは明るく素直に「お習字って楽しい!」と言ってくれるんです。子どもたちのやる気につながっていることがとてもうれしく、私も一緒になって楽しんでいます。

市川さん(61歳):さいたま市シルバー人材センター会員
【シルバー人材歴】 2 年
【現在の就業内容】保育園での習字指導
【平均就業時間】月2回、2時間程度
【月平均配分金】2500円

【3】仕事が楽しい! 経験を生かして働けることがとても幸せです

『現役とは違う楽しさを新発見!』

 以前は市役所で働いており、少しでも長く仕事を続けたいと思い、67歳のときに同僚から教えてもらって登録しました。仕事は、まず公民館の受付業務を5年間。3年前からは、保育園での保育補助で、1歳児クラスを担当しています。保育の仕事は経験がなかったので迷いましたが、自分の子どもと孫の面倒はみたからと思い、引き受けることに。

 それがやってみると、子どもたちが本当に可愛くて! 毎日癒されています。周囲の人に恵まれていることもありますが、シルバーに入ってからは、現役のころよりも仕事を心から楽しんでやれているなと感じますね。仲間もたくさんできましたし、自分の時間を仕事をしながら過ごせていることにとても幸せを感じています。

重信さん(72歳):狛江市シルバー人材センター会員
【シルバー人材歴 】5 年
【今までの就業内容】公民館の受付業務・保育園での保育補助
【平均就業時間】週2日、週8時間程度
【月平均配分金】28000円

【4】シルバーで働いたお金で、年に1回家族みんなと旅行へ♪

『程よい働き方で健康管理も万全』

 シルバーへの登録はチラシを見たのがきっかけ。健康管理ができるのと、いろんな方とお話しできるのが決め手でした。職種にこだわりはなかったのですが、保育園での清掃業務に募集があり、私は子ども3人を0歳から保育園に預けていたので、今度は自分がお手伝いしたいと思い希望しました。

 仕事は月〜金の朝の2時間だけ。毎朝早起きできますし、帰ってから家の用事もできるので、1日の時間配分がすごくいいんです。それに、園児たちの成長過程を見られるのも楽しくて。

 帰り際に「先生、今日はありがとう」なんて声をかけられるとなんとも言えずうれしくて頑張れます。おかげで健康維持もできていますし、いただいたお金は年1回の家族旅行代にあてています。

川本さん(73歳):狛江市シルバー人材センター会員
【シルバー人材歴】 2 年
【現在の就業内容】保育園での清掃
【平均就業時間】週5日、週10時間程度
【月平均配分金】32000円

お話を伺ったのは……


狛江市シルバー人材センター常務理事事務局長


池田あけみさん


国内で2番目に小さな市で、会員数は約700名と小規模ながら、イベントや就労の活気は都内随一。女性職員が多く活躍することでも注目されるアットホームなセンターを率いる



さいたま市シルバー人材センター参事 兼 浦和事務所長


佐藤まゆみさん


全国に先駆けて女性会員の活躍促進への取り組みを始めた埼玉県で最大の市であるさいたま市。女性会員に特化した班ごとのイベント実施など、よりアクティブなセンターを目指している

(取材・文/當間優子)

このニュースに関するつぶやき

  • 俺、その年には死んでるな(^_^;)
    • イイネ!11
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