「野手は不作」と見られたなかで…センバツで輝いた“15人の強肩捕手”

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2021年04月05日 12:34  ベースボールキング

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市和歌山・松川虎生選手 [写真提供=プロアマ野球研究所]
◆ 注目は「セカンド送球タイム」

 2年ぶりの開催となった春の選抜高校野球。ハイレベルな熱戦続きの大会は、神奈川・東海大相模の10年ぶりの優勝で幕を閉じた。

 この春は戦前からの評判通り、毎試合のように良い投手が出現。なかでも小園健太(市和歌山)や畔柳亨丞(中京大中京)、達孝太(天理)といった注目株は、その評判に違わぬピッチングで評価をさらに高めたように思う。




 一方で、今年は大会4日目まで本塁打が出なかったように、野手に関しては“不作”という声も聞こえてきた。

 たしかに、ドラフト戦線に上位指名が予想されるような打者はなかなか出てきていないが、そんな中でも特に目立った“ポジション”があった。それが「捕手」である。

 注目したのは「イニング間に投げるセカンド送球」のタイム。だいたい2.00秒を切れば強肩と言われるが、今大会でその基準をクリアした捕手はなんと15人にものぼった。



▼ 春のセンバツ・イニング間の二塁送球タイム
(2秒を切った選手をランキング形式で)

1位 1.81秒
大津綾也(北海)
田辺広大(常総学院)

3位 1.85秒
川上陸斗(福岡大大濠)

4位 1.86秒
中川勇斗(京都国際)

5位 1.88秒
松川虎生(市和歌山)

6位 1.89秒
小島大河(東海大相模)

7位 1.90秒
綱川真之佑(健大高崎)
高木翔斗(県岐阜商)

9位 1.93秒
蓑原英明(明豊)

10位 1.95秒
加藤愛己(明徳義塾)
木村航大(仙台育英)
長尾朝陽(敦賀気比)

13位 1.97秒
植垣 洸(智弁学園)

14位 1.98秒
田近介人(大阪桐蔭)

15位 1.99秒
渡辺優斗(敦賀気比) ☆2年生


◆ プロ注目の2人は…?

 タイムの速い順に一覧で並べてみると、上記のような顔ぶれとなった。

 大会前に特に注目を集めていたのは、1回戦で直接対決となった松川虎生(市和歌山)と高木翔斗(県岐阜商)。2人とも期待通りの高水準のタイムをマークしている。

 ただし、松川に関しては抜群のフットワークの良さと捕ってから投げるまでの速さはあるものの、全体的にスローイングが雑で、ワンバウンドになるボールも目立つなど、コントロールに課題は残った。打撃は今大会でNo.1の迫力を見せていただけに、もう少しスローイングに関する意識も高めたいところだ。


 一方の高木は、フットワークに関しては松川と比べると劣っている印象。それでも、丁寧なスローイングで安定感が目立った。

 ともに高校生の大型捕手として、有力なドラフト候補という評価に変わりはないだろう。


◆ 総合力では福岡大大濠・川上陸斗に軍配

 トータルの守備面で見た時に、松川と高木を上回っているように見えたのが川上陸斗(福岡大大濠)だ。

 1回戦の大崎戦では、立ち上がりから見事なスローイングを連発。3回には味方のエラーで出塁した走者の盗塁を阻止して嫌な流れを断ち切ると、1点差に追い上げられた7回には、二死一・二塁の場面で少し大きく離塁したセカンド走者を素早い送球でアウトに。エースの毛利海大を救った。

 続く具志川商との2回戦でも、3度あった盗塁の機会を全て阻止。1回戦は1点差、2回戦は延長につれ込む熱戦となったが、川上の守備がなければチームは敗れていた可能性は高いだろう。キャッチングやフットワークを生かしたブロッキングが安定しており、技巧的なピッチングに特長がある毛利海大の良さも上手く引き出していた。

 今年のドラフトで言えば、高校の先輩である古賀悠斗(中央大)が捕手として有力な候補に挙げられているが、川上はその古賀の高校時代と比べても、全く遜色ないように見える。仮にプロ志望ということになれば、先輩と揃ってのドラフト指名も十分に考えられるだろう。


◆ スローイングも高校生に思えないレベル

 スローイングに関しては、大津綾也(北海)や田辺広大(常総学院)、中川勇斗(京都国際)もまた、高校生とは思えない高いレベルだった。

 大津は元々内野手だったということもあり、フットワークとハンドリングに優れた守備力が特徴。ボールの軌道も安定している。2番を打つ打撃面では目立たなかったが、守備だけでも高い評価を得たことは間違いないだろう。

 一方、田辺は少し慌てて抜けるボールもあったが、素早い動きとボールの勢いは一級品。ブロッキングに課題は残ったものの、こちらは打撃にも力強さがあるだけに今後が楽しみな存在である。

 中川は172センチと上背はないものの、安定したキャッチングと素早いスローイングは目を引いた。また、中軸を任されている打撃もパンチ力が光る。攻守ともに少し力任せになる部分があるのは課題だが、“強肩強打”という表現がピッタリ当てはまる捕手だ。


 今大会はロースコアの接戦が多くなったが、そこにはハイレベルな投手たちの競演はもちろんのこと、今回紹介したような守備力の高い捕手の存在も少なからず影響していることだろう。

 この中から将来プロでプレーする選手が多く誕生することに期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所

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