写真 3月24日夜に30人が参加した送別会を実施した愛媛県庁(C)朝日新聞社 |
3月下旬に職員23人が参加し、深夜まで行われた厚生労働省老健局の宴会に出席していた3人を含め、同局内で6人が新型コロナウイルスに感染した問題で、田村厚労相が国会で火だるまとなっている。
【写真】文春砲でバレた総務省の「飲み会を断らない男」はこちら 厚労省とほぼ同時期に30人もが参加した総務省出身の愛媛県庁のキャリア課長の送別会が開催されていたことが、AERAdot.の取材でわかった。
関西で変異株が猛威を振るう中、大規模な送別会が開かれたのは、愛媛県松山市の道後温泉の超有名旅館「A」だ。道後温泉は夏目漱石の小説「坊っちゃん」の舞台として知られるが、著名建築家が設計した旅館Aはひと際目を引く豪華さだ。
その宴会場で愛媛県庁の送別会が開かれたのは3月24日夜――。参加したのは愛媛県庁の職員30人で、主催したのは同県市町振興課だった。
「課を離れる人が3〜5人おり、その送別会でした。送られる主賓は総務省から出向中のキャリアのB課長でした」(愛媛県関係者)
先の関係者によれば、和室にテーブルが4列並べられて、料理は8000円のコースで飲み放題が3000円プラスされ、消費税込みで1人12000円ほどだったという。旅館Aのホームページをみると、春の会席料理のメニューは、地元の名産品、オレンジの食前酒や前菜、刺身、鍋、デザートなど12品と豪華なコースだ。
愛媛県では送別会が開催された前日の3月23日、松山市内の歓楽街でクラスターが発生し、23人もの新規感染者が出ていた。開催当日の感染者は24人、翌25日には県内では過去最多、59人まで激増していた。
愛媛県の中村時広知事は3月24日の記者会見で「松山市では第4波の入り口にいる、本県最大のクラスターになる可能性がある」
「影響を最小限に食い止めるために、感染の広がりを何としても食い止めなければなりません」と危機感を訴えていた。
その舌の根も乾かぬうちに決行された送別会には、問題点が多々あった。
愛媛県庁では県職員への「飲み会の場での注意事項」として、<大人数、長時間とならないように年度明けの歓迎会等は、おおむね10人以内に留める>などと周知していた。
また昨年11月に出した文書<新型コロナウイルス感染症の感染防止対策に関するお願いについて>ではこう注意喚起している。
<「大声等の発生を伴う行事やパーティー等への参加」、「大量または長時間・深夜にわたる飲食」、「飲酒しての季節行事への参加」等は、極力控えていただきますよう御協力をお願いします>
だが、30人という大きな規模な送別会は、午後6時半に始まり、午後9時頃まで続けられた。
前出の愛媛県関係者によると、「中村知事は飲み会は2時間以内を目安にしてほしいと説明していた」と注意喚起し、送別会は30分ほどオーバーしていたことになる。
中村知事は感染対策として「飲食店では検温、換気、アクリル板の設置、距離の確保等ガイドラインは順守をお願いしたい」と語っている。
しかし、出席者によると、送別会の会場にはアクリル板の設置はなかったという。感染対策が十分ではなかった可能性がある。
「出席者の多くが、最初はマスクをつけていたが、送別会が始まり、乾杯があった後はほとんどの人がマスクを外していた。ビールを注ぎ合ったり飲食や大声で会話をしていた」(前出・愛媛県関係者)
主賓のキャリア課長はマスクをせず、送別の挨拶をしていたという。
感染防止対策、時短営業や会食自粛などを県民に求めながら、県庁職員たちは30人も集まり、県の指針や知事の要請を無視して宴会場で飲食していたことになる。この無神経さは厚労省と構図は全く同じだ。
AERAdot.の取材に対して、愛媛県市町振興課は、「課の送別会として30人ほどが参加した」と認めた。以下は一問一答だ。
―総務省から出向中のB課長の送別会か?
「離れる方ということでBさん以外にも、県の人事異動で離れる人もいた」
―愛媛県の指針である10人程度を大きく上回る30人という送別会は問題ないか。
「(送別会の)開催自体は禁止されていない。感染対策をしっかりしている店ならよいという明確なルールがあります」
―会食場所のアクリル板の設置は?
「お店の方がしっかりしていた」
―出席者の話ではアクリル板の設置はなかったと聞いている。
「そのあたりの詳細はちょっとお答えが…」
―当日は愛媛県でクラスターが発生していた。なぜ中止しなかったのか。
「開催は禁止されていない。一定のルールをも守って実施した」
―開催時間と終了時間を教えてください。
「いやいや、親睦会なのでお答えする必要はない」
―午後6時半から開始され、9時過ぎまで2時間以上になっていたのではないか。
「2時間で終わっている」
しかし、AERAdot.が入手している親睦会の画像データには、3月24日午後9時を過ぎても宴会が続けられていた様子が記録されていた。アクリル板も見当たらない。
現在は内閣府に在籍している送別会に参会したB前課長も直撃した。
「もう私、愛媛県庁の職員を退職しています。送別会などの内容は県庁に問い合わせください」(B氏)
道後温泉のある旅館に勤務する従業員はこう話す。
「県庁が30人が参加した送別会をコロナクラスターの真っ只中に、豪快にやった話は噂になっています。どの旅館でも従業員はマスク、フェイスシールドで厳重に接客、サービスしています。常識で考えれば、これだけ新規感染者が急増しているので、キャンセルでしょう。実際、うちの旅館でもコロナ急増でキャンセルばかりです。県庁がこんな時期に豪勢な送別会をした神経がわからない」
官庁のモラルはどうなっているのか。
(AERAdot.取材班)