ベンチから「怒鳴り声」が聞こえそう…TV中継されてしまった“公開説教”

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2021年04月10日 16:00  AERA dot.

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写真オリックス時代の伊原春樹監督 (c)朝日新聞社
オリックス時代の伊原春樹監督 (c)朝日新聞社
 巨人・原辰徳監督が昨年7月1日のDeNA戦の8回、四球で自滅した澤村拓一をベンチ内で公開説教するシーンがテレビで中継され、説教直後の澤村の涙と併せて大きな反響を呼んだ。

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 1軍の選手ともなれば、ふつうなら人の目に触れない場所で叱るものだが、それでも同じミスを繰り返すと、指揮官は「まだわからないのか!」と一人前扱いをやめ、時には公開説教という荒療治を施すようだ。

 過去にも期せずしてテレビに映しだされてしまった公開説教は、少なからず存在する。

“闘将”星野仙一監督が、不甲斐ない投球で降板した若手投手にベンチから退去を命じる事件が起きたのが、楽天時代の2014年5月14日のオリックス戦だ。

 入団2年目のドラ1左腕・森雄大は、4月24日の西武戦でプロ初勝利を挙げると、5月1日のロッテ戦でも連勝で2勝目を記録した。だが、続く西武戦は5回2/3、ロッテ戦も5回で降板しており、いずれも3与四球と、先発要員として微妙な内容だった。

 この日のオリックス戦も、森は立ち上がりから制球が定まらず、1、2回に1点ずつを失うと、3回にもT−岡田、坂口智隆に連続四球を許し、無死一、二塁のピンチを招いてしまう。3回途中で計4与四球。星野監督の我慢も限界に達し、上園啓史への交代を告げた。

 直後、思わずビックリのシーンがテレビに映しだされる。ベンチに戻った森に、星野監督が厳しい顔つきで叱言を浴びせると、「ここから出ていけ!」と外に向かって右手を突き出したのだ。

 森は言われるままにベンチを退出。行き先はブルペンだった。星野監督は降板後の森に異例のブルペンでの投げ込みを命じたのだ。

 そして、試合が終わると、2軍落ちを通告。森は球場に置いてあった荷物をまとめると、報道陣に「ファームです!頑張ります!」と告げて、タクシーに乗り込んだ。

 星野監督は森の入団時から「将来は12球団で2、3本の指に入る左投手になる。(同期の)藤浪(晋太郎)、大谷(翔平)を上回る可能性はある」と高く評価。期待が大きいがゆえの愛のムチだったが、森はその後も左鎖骨付近の血行障害などで伸び悩み、現在は育成契約中。一日も早く天国の恩師に完全復活を報告したいところだ。

 次も楽天の話である。サヨナラ負けの直後、グラウンドに集まった相手ナインの歓喜の輪の横で、関川浩一外野守備走塁コーチがミスをした外野手を叱り飛ばす様子がテレビに映しだされたのが、11年9月15日のオリックス戦だ。

 4対4の延長10回裏1死、オリックスの打者は、竹原直隆の代走として途中出場し、そのままDHに入った深江真澄。俊足と堅守が売りで、一発長打はないので、外野は前進守備がセオリーだった。左打者の深江だけに、逆方向のレフトは、ポテンヒットに要注意である。

 ところが、途中出場でレフトを守っていた横川史学は、前進守備をとっていなかった。直後、深江は左中間に浅い飛球を打ち上げる。横川の反応が遅れる間に、打球は差し出すグラブの前にポトリと落ちた。記録は安打ながら、星野監督も「レフトのエラー」と評するなど、前進守備なら防げた打球だった。

 こんなときは、得てして皮肉な結果が待っている。オリックスは、送りバントで2死二塁とチャンスを広げたあと、赤田将吾が守護神・小山伸一郎から右翼線にサヨナラタイムリー。楽天は悪夢のようなサヨナラ負けで4位に転落した。

 一方、劇的勝利で3位に浮上したオリックスナインは、グラウンド上で殊勲の赤田に飛びつくなど大喜び。その後、画面は関川コーチのアップへと切り替わり、ゆっくりズーム・アウトしていくなか、叱られている横川の背中が見えてきた。「何で前進守備をとらないんだ!」とばかりに、関川コーチは口角泡を飛ばしながら、見ているほうも怖くなるような鬼の形相で公開説教を続けていた。

 だが、横川は3日後の西武戦でも栗山巧のライナーをグラブではじくミス(記録は安打)で再びサヨナラ負けの戦犯となり、翌日2軍落ち。公開説教は徒労に終わり、関川コーチも10月30日に退団となった。

 最後は、公開説教が功を奏した事例を紹介する。

 オリックス・伊原春樹監督が、連敗地獄に苦しむ主力投手に喝を入れたのが、04年4月16日の近鉄戦だ。

 99年に11勝を記録した川越英隆は、02年5月5日の近鉄戦で勝利を挙げたのを最後に、足掛け3年にわたって14連敗中。

 この日の近鉄戦も、2回まで無失点に抑えたが、2対0とリードした3回に一挙5点を失い、ついに15連敗。阪急・梶本隆夫のパ・リーグワースト記録まであと1となった。

「2試合続けて先発の役目をはたせず、チームに申し訳ない」と肩を落とす川越に、「同じことを繰り返している」と激怒した伊原監督は、試合中にもかかわらず、ベンチ内で延々と公開説教を行う。そのシーンはテレビでも中継され、相手の近鉄ナインも唖然とするほどだった。

 だが、その効果は、8日後のロッテ戦で現れた。「弱気なピッチングだけはすまい」と自らに言い聞かせてマウンドに上がった川越は、7回を無失点に抑え、720日ぶりの白星を手にしたのだ。

 公開説教のご利益とも言うべき好投に、伊原監督も「今日は川越さんに尽きる。今日みたいなピッチングをすれば勝てる。何かを得たと思いますよ」とニッコリ。

 この年、川越は5年ぶりに規定投球回数に達し、7勝を挙げている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

このニュースに関するつぶやき

  • 関川コーチの怒号事件で懲りない横川選手はその後放出という末路が待っていたんですね。怒鳴り損でしたね。
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  • 野村監督の前でずーっと直立不動の古田さんとか…懐かしい…。そこで奮起して頑張るから…結果が出た時に凄いんだけれど…今は時代が違うかな!?
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