【GT500コースサイドチェック】ホンダNSXはミッドシップを目指す!? 消えたアンチラグ音

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2021年04月11日 07:31  AUTOSPORT web

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写真2021スーパーGT第1戦岡山 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)
2021スーパーGT第1戦岡山 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹)
 スーパーGT開幕戦。第1戦岡山国際サーキットでコーナリングのパフォーマンスを見るのに最適なのは、中速で少し回り込んでいる最終コーナーだ。しかし今回の感染予防隔離措置によって、パドックから出ることが許されないので、公式練習と予選を2コーナーのアウト側で見た。コース随一の高速コーナーであり、ダウンフォースががっちり効いている今のGT500で何か挙動の違いが見えるものなのか半信半疑ではあった。

 公式練習では燃料搭載量もそれぞれバラバラであり、どのタイミングでニュータイヤを入れているのかコースサイドにいると判然としないので、車種ごとの大雑把な違いしか分からない。立ったポイントからは1コーナーからのアプローチと2コーナーのクリッピングポイント先までが見える。2コーナーの入口からクリップの手前には路面にうねりがあって外輪への荷重が最大になっている状況でクルマが跳ねる。

 この跳ねの大きさや回数が車種ごとに違うのが見てとれた。一番跳ねないのがホンダNSX-GTで、大きく跳ねるのがニッサンGT-Rだった。タイヤメーカーによる違いよりも車種ごとの違いの方が大きい。イメージとしてはGT-Rがバン、バン、バンと3回跳ねるところが、NSXだとバン、バンと2回で収まる感じで、1回あたりの揺動量も少ない。トヨタGRスープラはその中間のような挙動。

 開幕戦であり車重は全車同一であり条件に違いはない。車体下面も共通で、下面で発生するダウンフォースが大きく異なることは考えにくい。見た目の印象としてはNSXの重心が低いようなイメージで、これがフロントまわりの軽量化の恩恵なのかもしれない。

 NSXは今季仕様で吸排気、油脂類配管等の見直しで、フロントを中心に軽量化を実施したという。また、吸気の圧力損失を抑制することでターボ過給にいたずらに頼らずに充填効率を高める方向を目指している。ミッドシップ時代にはインタークーラーが、空気が一番当たる車両前部に置くことができないために吸入空気の冷却に苦慮。その解決策として、ターボ過給圧を抑えながら、充填効率を高め吸気温度上昇を抑制していた。

 この時の開発手法も活かしたかたちだ。CLASS1準拠のクルマを用意するためにフロントエンジンとしたNSXは、フロント回りの軽量化に着手。理想を求めて今度はミッドシップ寄りに開発を進めたとみることもできる。

 さらにNSXからはアンチラグの音が消えた。2コーナーでは進入でブレーキを少し残して入る。クリップの手前までスロットルオフの時間があり、GT-Rもスープラもバリバリとアンチラグの音が聞こえるのに対して、NSXの場合、ここでは一瞬もアンチラグ音が聞こえてこない。

 アンチラグは、点火を遅角して発生トルクを抑制した上で、エンジン燃焼圧を維持することで、ターボチャージャーの回転数を維持して、コーナーの立ち上がりトルクを確保するためのエンジン運用方法。この作動によって排気温度は上昇するので、断熱を徹底しないと吸気温度上昇にも悪影響が考えられる。

 トルクの落ち込みは他の方法で補い、アンチラグもできるだけ使わない方向で開発を進めているという。これもフロントの重量を軽減する「ミッドシップ化」の一環とみることができる。タービンの温度が低ければ車体との断熱も減らすことができるからだ。当然燃費改善にもアンチラグ封印は貢献する。

 しかし、トップ3をNSXが独占した公式練習から予選では状況が一変した。予選用の車高セットがあるのか、一様にGRスープラ勢は、フロント下面のスプリッターのアウト側を擦って火花が出る量が増して、2コーナー進入スピードが一気に上がった印象。練習とはエンジンのブースト圧は違うだろうが、それだけとは思えない豹変ぶりだった。

 対するNSXは挙動を乱すわけでもなく、公式練習の延長線のイメージ。予選一発ギリギリのエッジを使うようなアタックは見られなかった。

 鋭さを増したスープラのなかでも、一瞬、このまま飛び出すのではないかという勢いを見せたのがQ2の阪口晴南。阪口が操るKeePer TOM’S GR Supraはその進入スピードに耐えられずにクリップに向けて4輪がともにスライドしていた。あと少し速度が高ければ確実にアウト側に吹き飛びそうな勢いだった。

 しかし、前後ばらばらではなくきれいに滑った結果、ロスにはなっていなかったようで、結局この周にベストタイムを記録していた。

 GRスープラの予選における勝因のひとつが精緻なセットアップだったすると、昨シーズン岡山でのレースがなかったことがNSX勢のディスアドバンテージになってとみることもできる。空力コンセプトも含めて名作『レクサスLC500』をGRスープラは受け継いでおり、19年以前からの流れも含めて、攻め込めた可能性もある。

 対する昨年フロントエンジン化したNSXにとっては今回が岡山初レースであり、その差があったのだろうか? あるいは特別BoPとホンダの開発コンセプトとの相性が悪かったのだろうか? あくまで安全のためのBoP措置ではあるが、技術条件の変更は戦況に少なくない影響を及ぼす。
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