銀座高級ホステスがテレアポ営業に挑戦、月収80万円稼げたワケ

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2021年04月11日 16:21  日刊SPA!

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写真銀座のクラブでホステスとして勤めていた高橋一美さん
銀座のクラブでホステスとして勤めていた高橋一美さん
 コロナ禍で大きなダメージを受けた「夜の街」。急遽閉店になる店や、出勤日数を減らされ生活もままならないホスト・ホステスも少なくない。そんななか、多くの水商売関係者が昼職を希望するも金銭感覚の違いなどから、なかなかうまくいかない現実がある。

 一方、昨年まで銀座のクラブでホステスとして働いてきた高橋一美さん。彼女もコロナ禍の影響を受けたひとりだ。法人向けに転職サイト「イーキャリア」「キャリオク」の求人枠を売る営業マンの仕事を開始。いわゆる昼職にもかかわらず、月収80万円を稼ぐこともあるという。なぜ、うまくいったのか。そこには、夜の仕事で培ったスキルが関係しているとか……。

◆30代を迎えて「夜の仕事一本で働く」ことを決意

 山形出身で高校卒業後、仙台の短大に進学したことを機に国分町のキャバクラ店でアルバイトを始めたという高橋さん。

「ずっと共学だったんですけど進学したのが女子短大で、いきなり女子だけの生活に息苦しさを感じて、知人の紹介で夜の世界に入りました。一人暮らしで自由だったし、お金ももらえたので先のことは何も考えていなかったです」

 20代前半にして月50〜60万円を稼げていたそうで、短大卒業後も店に残っていたが、24歳で実家へ戻ることに。地元でエステの仕事を始めたが、ほかにもコールセンターなど、さまざまな昼職を経験。当時付き合っていた彼氏の関係で全国各地を転々とするようになるが、「やっぱり夜の仕事が好きだった」と振り返る。

「同棲していた彼氏の転勤についていくかたちで、行く先々で働いていました。自由にさせてくれる人だったので、昼職だけではなく、水商売もやっていましたね」

 その後、30代に差し掛かると昼職での採用が難しくなってきたことを肌で感じた高橋さんは、「いっそ夜の仕事一本で働く」ことを決意。上京すると、その足で銀座のクラブで働くようになったという。

◆コロナ禍で大打撃、多くの水商売関係者が露頭に迷う

 そして、6年ほどの月日が流れたところで暗雲が立ち込める。コロナ禍だ。大打撃を受けた銀座。クラブの経営者はもちろん、この街で働くホステスたちは不安に陥った。30代、40代でも活躍している人もいれば、普段は学生や会社員をしているアルバイトも多かったという。客足が遠のいたことで休業を余儀なくされる店もあれば、出勤日数の大幅減で経済的に困窮してしまうホステスも続出した。

 先行きが見えないなか、高橋さんのもとに「水商売セカンドキャリアプロジェクト」の話が届いた。これは、元関西ナンバーワンホストで現在は実業家の井上敬一氏が「今こそ夜の街に恩返しがしたい」と始めたもので、ソフトバンクのグループ会社であるSBヒューマンキャピタルが運営する転職サイト「イーキャリア」「キャリオク」の求人枠を扱う営業職として、水商売関係者たちが働くことを支援しようという取組みだ。

 高橋さんは、勤務するクラブにも報告したうえでプロジェクトに参加することにしたという。

◆人脈を最大限に活かして手取り80万円

 仕事内容を大まかに説明すると、一般企業にテレアポを行い、実際に訪問、あるいはリモートなどで転職サイト「キャリオク」「イーキャリア」の求人枠を売る。報酬は“完全歩合制”。高橋さんはすぐに見込み先のリストをまとめ、手取りにして1か月目で30万円、2か月目には80万円を稼ぎ出した。そして、今年1月いっぱいでホステスの仕事を引退することになった。

「銀座のお客様のご縁のおかげです。今年1月は休業状態だったので実質的に昨年12月いっぱいで私は退店しましたが、昼と夜の仕事を並行してやることで、実際どちらの営業にもなりました」

 昨年、新型コロナウイルスが感染拡大すると、多くの会社では飲み会や接待などが禁止されていたはずだ。そんななか、ホステスたちは「飲みに来て」とも言えない状況。

 一方、高橋さんは常連客に対して、昼の仕事も始めたことや、転職サイトの求人枠を売っていることなどを近況報告がてら連絡した。すると、商談につながることも多かったのだ。ホステスのトップ層は顧客管理なども徹底的に行なっているイメージもあるが、そうした普段の関係づくりが昼職の結果にも結びついたのだ。

「流石に大企業の役員さんとかになると難しいと思うんですが、中小企業の社長さんや会長さんといった決裁者の方へ、ダイレクトにお話しできたので売上が立つのは早かったです。普段からお客さんとはマメに連絡をとって関係性が築けていたので、その延長で私が求人営業のお仕事を始めた話もできました。

 しばらく経って、少しコロナが落ち着いたタイミングで、お店のほうにも『高橋さんのおかげで採用決まったよ』と報告を兼ねて飲みに来てくれる方もいらっしゃいましたね」

 前述のように、高橋さんは20代の時にコールセンターでテレアポの経験もあるそうだが、数ある接客業のなかでも水商売は初対面の人と会話をする機会が多い仕事だけに、“コミュニケーション力”が大きな強みとなっている。とはいえ、水商売との違いもあるという。

「同じコミュニケーションでも、水商売が来たボールを打ち返すテニスだとすると、昼職の営業は止まっているボールを打つゴルフ。

 店では来てくれたお客様に対して接客するけど、テレアポは自分から相手の懐に飛び込んでいかないといけない。慣れるまでは、難しいと思いましたね。電話だと声だけなので。お互いの表情が見えない。だから私は、なるべく相手の表情を想像しつつ、オーバーリアクション気味に声を出すように意識していますね」

◆自分を売り込むキャラ営業が武器

 昼の世界でも成績をあげられた要因にかんして、高橋さんが続ける。

「電話のアポで断られることはしょっちゅうなので、物怖じしないメンタルは大事ですね。困難さえも楽しめるような。あと、臨機応変に対応する瞬発力は水商売の現場でだいぶ鍛えられたと思います。

 シャンパンをお願いしてみたら意外と聞いてもらえたという経験もあるので、水商売の“言うだけタダ”みたいな精神もベースにあるのかな」

 対面のコミュニケーションに苦手意識を覚える若手会社員も少なくないだろうが、まさに水商売の世界は究極の感情労働と言える。

「水商売セカンドキャリアプロジェクト」を立ち上げた井上氏は、「商品・サービスを間に介さず、自分自身を商品として売り込むことが、水商売と普通のサービス業や接客業との最大の違い」と説明する。

「水商売の人たちはネガティブな理由をつぶしながら、相手の心を解きほぐす応酬話法が鍛えられているんですね。本人は自覚していなくても、お客様から『もっとカワイイ子つけてよ〜』みたいなイジワルを言われた時の対応を磨き上げることが毎日の習慣になっていて。

 ある程度そういう絡みにも耐性があるし、相手に変な苦手意識や恨みつらみも抱かず、上手に切り返せる。なので、『はじめまして』の状態から『お前、おもろいな』『あんたが言うなら買うわ』と、自然と可愛がられるような関係づくりが得意な人が多い。商品やサービスの差別化が難しい時代には、重宝される力だと思います」(井上氏)

 現在、テレアポ業務は基本的に自宅で行っているという高橋さん。仕事スイッチを入れるためには少し気合が必要らしく、時間管理が最近の悩みだとか。

 ホステス引退後の今も安定した収入を得られているのだろうか?

「コロナの影響で中途採用をストップしている企業も少なくないし、正直、収入の増減はありますね。とはいえ、募集しているところはあるので、そこは自分次第ですね。まずは、アポを取らないことには始まらないし、アポを取るにはたくさん電話をかけないといけない。そこで、気が重いと思うのか楽しいと思うのか、ですよね。

 今後は、ひとつの職場や会社に縛られず、複業のようなかたちでいくつか並行して働くことに興味があります。いまのお仕事を軸にいろんなことにチャレンジしたいです」(高橋さん)

<取材・文/伊藤綾、撮影/長谷英史、編集/藤井厚年>

【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身。いろんな識者にお話を伺ったり、イベントにお邪魔するのが好き。SPA!やサイゾー、マイナビニュース、キャリコネニュースなどで執筆中。毎月1日に映画館で映画を観る会"一日会"(@tsuitachiii)主催。

このニュースに関するつぶやき

  • コミュ力と人脈と…やはり彼女の人柄なんだろうなぁ…機械的な仕事じゃなく営業って、人と関わるお仕事だもの…お見事です…。
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