日本人は「自分の人生を自分で決定している」と感じにくい? 社会の寛容度を高め、働き方や人生の選択肢を増やす必要性

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2021年04月12日 06:30  ログミー

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社会の寛容度を高め、雇用の流動性や人生の選択肢を増やす

石川善樹氏:もう少しだけ、この図で注目したい点をお話します。社会的条件の(1つ目の)「経済発展」は、ダイレクトに幸せや満足に効いてないんですね。図の矢印が伸びてないですよね。経済発展は実はダイレクトに効くワケではなくて、あくまでも「生き方の選択肢」が増えるという要因を通して、間接的に効いてくるんですね。

一方、社会的条件の3つ目の「社会的寛容」は、間接的にも直接的にも幸せや満足に効くことがわかっています。どういうことかというと、(生き方の)選択肢が増えてチャレンジする人が増えてくると、当然、失敗する人も出てくるんですね。挫折する人が増えることでもあります。そうなった時に社会としての寛容度が高いと、しっかり受け止めて支えてくれるので、ある意味で攻めと守りの両方に効くということになります。

さて、この図を踏まえて「なぜ日本社会では主観的ウェルビーイングの変動が少なかったのか」ということを考えていくと「経済発展はしましたか?」と言われたら、これはイエスですね。「民主化しましたか?」と言われたら、これもイエスです。

じゃあ3つ目。「日本は社会的寛容度が高い国になりましたか?」と言われると、おそらくここが一番のボトルネックになっている可能性が高い、という仮説が立ってきます。

日本がなぜ実感としての豊かさを感じにくいのかというと、社会の寛容度が低いため「働き方や人生の選択肢がある」と感じられている方がまだまだ少ない。それゆえに自分の人生を自分で決定している感じがしない。

未だにレールというものがあって、私自身も母親から「いい学校、いい会社、いい人生」というふうに教育されてきましたし、今の子どもたちももしかしたら同じような状況にあるかもしれない。やっぱりいい学校に行って、いい会社に行って、いい人生だというレールのようなものがある。

試しにGoogleで「レール」と検索すると、次に推奨されるキーワードが「外れる」なんですね。それぐらい日本という国は、レールがいくつも複線的にあるのではなく、1本のレールがあって、そこから外れた人たちがあまり受容されている感じがしない。

何を言いたいかというと、この「ダイバーシティ&ハーモニー」は今回の東京オリンピックのテーマでもありますが、社会の寛容度を高めて、雇用の流動性あるいは人生の選択肢を増やしていく。そうすることが日本人の主観的ウェルビーイングの向上につながるんじゃないかと、これまでの研究から仮説が立ってくるわけです。

「従業員のウェルビーイング」は、ものすごく重要なファクター

長々と述べてきましたが、ウェルビーイングと言うとよくわからないので、あえて日本語でくだけた感じで言うと「いい感じ」なんだろうなと思うんですけども。

これまではウェルビーイング経営ではなく、株主がいい感じになるような経営が求められてきたワケですが、これからは株主を含むすべてのステークホルダーの方々が「いい感じだな」と思えるように、経営が複雑化していくというお話をしました。

その中でも、特に「従業員のウェルビーイング」はものすごく重要なファクターになります。従業員に対するウェルビーイング施策は何をしたらいいのかというと、選択肢をたくさん提示して、その中から自己決定できるようにサポートすること。

1つの会社としても、あるいは社会全体としても、そういう状況を用意することが、結果として従業員のウェルビーイングにつながるんじゃないかと思います。

ここ10年で、戦後初めて日本の主観的ウェルビーイングが悪化

私の話は以上となるんですけども、残り時間でご質問にお答えしていきたいと思います。

ウェルビーイングのデータに関する質問がきています。今日私がお示ししたウェルビーイングのデータは、1987年というバブル崩壊前までのデータだったので、それから2020年までもこの状況は続いているのか、というご質問をいただいています。

今日はお見せできなかったんですが、実は日本人のウェルビーイング度はバブル崩壊前まではあまり変化しなかったんです。けれども、最近10年間のデータを見ると、戦後初めて主観的ウェルビーイングが悪化状況にあります。なので、私は個人的には強い危機感を持っていまして。

他国の状況を見ると、主観的ウェルビーイングが悪化すると、そのあと大きな混乱が待ち構えていることから、主観的ウェルビーイングの重要性、そして悪化を予防するという予防医学に取り組んでいます。

もはや「三方」ではなく「六方よし」「百方よし」の時代に

次は、ウェルビーイング経営に関する質問ですね。「経営に関わるステークホルダーの中で、特に日本企業の意識が弱いと思われるところはございますか」という質問なんですが。

少し前までは、日本企業は経営に関わるステークホルダーの中で、株主に対する意識が弱いと言われましたね。最近は地球環境というステークホルダーに対して意識が弱いということで、サステナビリティと強く言われています。

最近だとESGの「S」ですね、ソサエティ。例えばオリンピックで、この間ダイバーシティの問題が起きましたね。こういう社会課題が起きた時に、かつての日本企業は沈黙をしていたと思うんですけれども「沈黙は肯定を意味する」と。社会課題に対しても積極的に発言しなきゃいけないように、ソサエティというステークホルダーにもまだまだ弱いと思います。

もともと日本企業は「三方よし」で、さまざまなステークホルダーに気を使いながら経営することを得意としてきたはずなんです。けれども、現代の経営にまつわる環境を見ると、もはや三方ではなく「六方よし」とか、もっと言うと「百方よし」のように、気にしなきゃいけないステークホルダーが増えすぎている。みんなのウェルビーイングを考えながらどう調和させていくのか、とにかく経営者にとって経営が複雑化して難しい時代になってきているなと思います。

「クロスジェンダー」を超えた「クロスジェネレーション」

もう1、2問いきたいと思うんですけども。「企業経営において、次世代の方々を中心に据えることは理解しましたが、具体的にどのような取り組みから始めるのがいいのでしょうか」という質問がきています。

次世代と言っても、今は中学生・高校生かもしれません。もうちょっと言うと、まだ生まれてない方々も含めて、私は「将来世代」と言っているんですが。

具体的な取り組みで参考になると思われるのが、例えばユーグレナという会社です。この会社は「チーフ・フューチャー・オフィサー」という、会社の経営に対して将来世代の観点から意見をするポジションを作っています。実際に高校生の方を任命して、経営に対して具体的な意見を述べてもらっているんですね。

今の時代は、いろんなジェンダーの人たちが多様性を持ったチームを作るべしという、クロスジェンダーなチーム作りが強く求められていますけれども、ユーグレナ社はそれだけでは十分でないと考えていて。もっと「クロスジェネレーション」、多様な世代が同居するチームを作っていくんだと。すごくわかりやすい取り組みだなと思ってます。

最近は味の素さんもそうですね。クロスジェンダーだけじゃなくて、クロスジェネレーションなチームを作って、経営に対してきちんと意見を出していくという経営の構造にされていますね。そういうところはすごく参考になるかなと思います。

それでは最後に1問、簡単に答えて終わりたいと思うんですけども。「コロナ禍で働き方が大きく変化しました。コロナはウェルビーイングを加速するきっかけとなるでしょうか」。これに対しては、私はそうであってほしいと思いますし、そう考える人が多いから、日本政府もウェルビーイングを考えているんだと思います。

以上、短い時間ではありましたけども「ウェルビーイング経営のすすめ」をお話しさせていただきました。ありがとうございます。

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