マスクで「サ行」の聞き取りが困難に? 耳の疑問に医師が回答

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2021年04月12日 11:40  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
 マスクの着用により、「声が聞き取りにくい」と悩む人が増えています。現在発売中の『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』(朝日新聞出版)では、聞こえに関するよくある疑問について、耳鼻咽喉科の専門家に聞きました。

【図】難聴・耳鳴り治療の選択の流れはこちら

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疑問1 「聞きにくい」のは年のせいだけとはかぎらない?

 ことばの聞き取りが悪くなるのは、耳の聞こえの悪化だけでなく、脳も関係していることがあります。耳から入ってきた音を聞き分け、その音が持つ意味を理解するのは脳です。音が電気信号として脳に伝わり、脳が音を情報として処理して、ことばを聞き取っています。そのため、加齢などで脳が劣化してしまうと、音をことばとして理解することが難しくなります。

 難聴には加齢性難聴以外にも、遺伝性難聴や急に生じる突発性難聴、慢性的に生じる騒音性難聴、外耳道炎や急性中耳炎など一時的な症状による難聴もあります。耳垢(あか)が過剰にたまったことによる耳垢栓塞(じこうそくせん)もありますが、脳の病気による難聴もまれにあるため、急に聞こえが悪くなったら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

疑問2 ある日突然、病気などで耳が聞こえなくなることもある?

 突然、耳が聞こえなくなる典型的な病気といえば、突発性難聴とメニエール病です。いずれも内耳の異常によるもので、片耳だけが急に聞こえにくくなります。治療開始が早いほど回復の可能性も高まるため、急激な聞こえの低下を自覚したら、早急に受診しましょう。

 このほか、痛みのない中耳炎(滲出性<しんしゅつせい>中耳炎)や、耳垢がたまってしまったことによる難聴(耳垢栓塞)もあります。高齢者は耳垢栓塞を放置しておくと、難聴の放置と同様、認知症のリスクを高めるなど、加齢性難聴を悪化させてしまう可能性もあります。

疑問3 人によって難聴の進み方が違うのはなぜ?

 難聴の進み具合は、疾患によって異なりますが、加齢性難聴では個人差が大きく、遺伝子タイプによって異なると考えられています。一般的に約5年単位で悪化していく傾向があり、一度悪くなり始めると悪化のスピードは上がりやすくなります。

 また高齢になるにつれ、変化のスピードは上がり、80〜90代になると、1年単位で大きな変化がみられる人もいます。聞こえの悪化が早まっていると感じたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

疑問4 長時間イヤホンを使っていると難聴になる?

 イヤホンで携帯音楽プレーヤーから音楽などを聴取する場合、適度な音量で1日1時間を限度にすることができれば、おおむね難聴リスクを避けることができるでしょう。

 耳にとって適度で安全な音量とは、イヤホンを装着して音楽を聴いていても、外側から呼びかけられたときに、自分の声が大きくならずに応じられる程度の音量です。応じる声が大きくなって聞き返すほどでは音量が大きすぎると覚えておきましょう。

 日常生活における難聴リスクのある騒音といえば、走行中の電車内や飛行中の飛行機内のエンジン音なども騒音レベルで測定するとそれなりに高いといえます。走行中の電車内は約80dB、飛行中の飛行機内は70〜80dBとされています。WHOの基準で、難聴リスクを避けるには、80dBの騒音は1週間に40時間までとされています。

 そのため、通勤や通学でそうした乗り物を連日、長時間利用するような場合、難聴リスクを避けるためには耳栓の利用も有効です。欧米では、難聴予防の観点で飛行機など騒音環境での耳栓利用も一般的になってきています。

疑問5 一対一の会話は聞き取れるのに数人の会話だと聞きにくいのはなぜ?

 私たちが通常、会話する場合、相手の一言一句すべてのことばを聞き取って理解しているわけではありません。多少聞き取れない部分があっても、全体の会話のなかでことばを予測しながら会話をしています。

 難聴の人の場合、聞きもらしてしまう音が多いため、ことばとして理解しにくくなります。それでも、相手の口の動きが見える一対一の会話では、ゆっくり、はっきりと話してもらうことで、聞き取れない音があっても予測しながらことばとして理解ができます。

 しかし、複数人の会話では、それぞれの人の声の音量の違いや周囲の雑音の影響などで音を聞き取れない場面が多く、発音される向きによって口の動きも見えにくいため、ことばの予想もしにくく、会話が聞き取りにくくなります。

 さらに、相手がマスクをしている場合は、マスクで相手の口の動きが見えず、音もこもってことばがぼやっとして聞き取りづらくなります。とくに高音域のサ行の摩擦音の聞こえが弱くなり、聞き取りがより困難になります。

【監修】
新田清一(しんでん・せいいち)医師
済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科主任診療科長/聴覚センター長
鈴木大介(すずき・だいすけ)さん
済生会宇都宮病院耳鼻咽喉科言語聴覚士

(文/石川美香子)
※『「よく聞こえない」ときの耳の本 2021年版』から

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