がん患者に「かわいそう」と言わないで。乳がんになってわかった“傷つく言葉”

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2021年04月12日 16:01  女子SPA!

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写真『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)
『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)
 乳がんと宣告され、手術を乗り越え、「がんは自分の一部」だと受け入れていくまでの“闘病後記”を描いたコミックエッセイ『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(原作:藍原育子、漫画:内野こめこ/KADOKAWA)。

 前回、原作者であるフリーライターの藍原育子さんに、告知後の混乱とそのために必要な“予行練習”について伺いました。今回は、がん患者への寄り添い方についてのお話です。

◆「かわいそう」という感想ではなく共感を

――手術のため入院した藍原さんに、同じ乳がんの患者から「かわいそう」と言われ、傷つくシーンが印象的でした。「かわいそうの呪い」だと。

藍原:「かわいそう」っていうのは、今でも受け入れがたい言葉です。「かわいそうって言ってくれてありがとう。嬉しい」とは、やっぱり思えません。
 がんを公表してから病気の相談をされることが増え、話を聞き、「なんで、こんなにいい人がこんな病気に。かわいそう」と思うことは確かにあるんです。でも、その言葉は心にしまっておいたほうがいい。私は言葉にうるさいのかもしれませんが、「かわいそう」は哀れみの言葉だと思うんです。

――確かに、「かわいそう」だと感じているのは言っている本人です。

藍原:患者にかける言葉に感想はいらないと思うんです。感想が患者のプラスになることって、ほとんどなくて、むしろ大事なのは共感。感想と共感はセットになりやすいんですが、あえて離して、感想は言わずに共感する。そこを心がけると、無意識に傷つけることは少なくなるように思います。

◆がん患者を傷つけるかもしれない言葉とは

――本には心の専門家である大西秀樹先生との対談コラムが収録されていて、そこでは「かわいそう」のほかにも、「患者を傷つける(可能性がある)言葉」が紹介されています。

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「がん患者を傷つける(可能性がある)NG言葉」

・取れたからいいじゃない(乳がん)
・治った人はたくさんいる
・かわいそう
・初期でよかったね
・どうして気づかなかったの
・そこの病院で(先生で)大丈夫?
・もっといい病院に
 行ったほうがいいんじゃない?
・絶対に治るよ
・くよくよしてると
 治るものも治らないよ

※『がんの記事を書いてきた私が乳がんに!? 育児があるのにがんもきた』(KADOKAWA)より抜粋
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藍原:そのNG言葉のところの反響がすごくて、「反省した」と言う方もいて逆に申し訳ないんですが……あくまでも「傷つける(可能性がある)言葉」なんですね。ただ、本で紹介した9つの言葉は、ほぼ私が言われたことで、ほとんどの人が無意識で言っている。
 傷つけると思わずに出ている言葉で、言っている本人はそんなつもりはないので、言われた側は何も言えないんです。言われっぱなし。さらっと「かわいそう」って言われると、モヤモヤした気持ちをどこにもっていけばいいのかわからなくなっちゃうんです。

――悪気があれば、言い返すなり、絶縁するなりできますけどね。

藍原:過去に言ってしまったことを反省する必要はなくて、この先、少し気にしておいてもらいたいなと思うんです。私だけではなく、同じようにこうした無意識の言葉に傷ついている方は多いので。頭の片隅に染み込ませておいてもらえれば、「かわいそう」は出てこないと思うので。もちろん、その方に必要な一言だとしたら伝えればいいと思いますが、感想はいらないというのが、私の意見です。あなたの感想を聞きたいわけではないんです。

◆患者にかける言葉は、物足りないぐらいでいい

――本には、友達に「どうせなら、胸を大きくしちゃえ」と言われて、心ほぐれるシーンもありますよね。

藍原:この言葉自体は決していい言葉ではないし、むしろNG言葉の筆頭だろうと思います。ただ、彼女はダンス友達で、以前から二人で「グラマラスなほうがダンス衣装は似合う」という話をよくしていたんですね。その前段があっての会話で。彼女は、がんになったと告げたとき、「かわいそう」「大変だね」など一切なく、これだけを言ったんです。彼女と私の関係性だから励ましの言葉になった。彼女じゃなかったら許さなかったと思います。難しいんですが、患者にかける言葉の何がNGなのかって、その人によるし、関係性によるというのもあります。

――相手との関係性を前提にしても、どんな言葉をかけたらいいのか迷います。

藍原:患者にかける言葉は、物足りないぐらいでいいと思うんです。言葉をかける側って、「私はあなたのことを考えてるよ」というやさしさから、言葉を重ねようとする。でも、患者は別に過剰な言葉は求めてないんじゃないでしょうか。「そうかそうか」「うんうん」だけでいい。もし、続きの言葉が必要になったら、本人からアクセスしてくると思います。
 病気の知識がなくても、聞くことはできますから、「何もできないけどさ、話なら聞けるよ」くらいでいいと思います。

◆「つらい」と言えない人のつらさ

――いっぽうで、藍原さん自身は長い間、がんであることを隠し、「つらい」という気持ちを周囲に出せないでいました。それは、「かわいそう」だと憐(あわ)れまれたくなかったから?

藍原:それもありますが……がん患者に限らず、世の中には「助けて」「つらい」「手を貸して欲しい」と、言える人と言えない人がいると思うんですね。
 言える人はまだ少しましかなと思うんです。リアルの友人関係や家族に「つらい」「どうにかして」と吐き出せる人、「#乳がん」などを使ってSNSで誰かとつながれる人、相手は誰にせよ外に出せる人はまずその時点で一歩前に進めている。でも、どうしてもそこにつながれない人がいるわけです。

――藍原さんは「言えない人」だった。

藍原:そうですね。この本を書きながらなぜ、言えなかったんだろうと考えてみたんですけど、多分、自分で解決するべきだと考えていたんだと思います。これは自分の問題で、自分が解決するべきだと。がんになってるのは私だけじゃない。がんもわりと初期で、さほど進行していないようだし、全摘手術も自分が望んだこと。それで私がつらいなんて言ったら、「世の中にはもっとつらい人がいる」「あなたなんか、大したことない」って言われるんじゃないかって。今となっては、誰が言うんだよと思うんですけど。結構、言えない人の気持ちってそうなんじゃないかなと思います。

――つらすぎます……。

藍原:もともと、あまり人に自分の心の内を晒せない性格というのもありますが、言えないまま、どんどん閉じ込められていきました。自分の中に不安や恐怖や怒りや絶望が溜まって、どんどんどんどん心のバランスを崩してしまった。そういう人はまず、自分の気持ちを言葉にすることが第一歩。それはどんな形でもいいんですけど、言葉にすると次が見えてきて、どこかにつながれる……のですが、もともと言えない人にとって、それにはとてもパワーがいる。

◆つらさを最初に言語化できた意外な場所

――藍原さんが言葉にできた第一歩は?

藍原:占いです。

――手術後、体調不良があり、そのうえ再発の不安に襲われていたときですね。

藍原:当時、結構頻繁(ひんぱん)に診察に通っていて、私の行っていた病院は平均3時間待ちで、4時間になるときもあったんですね。それだけ待って、医師に話を聞いてもらえるのはたったの5分。「変わりありませんか?」「ないです」でおしまい。
 この不安な気持ちを、一体どこに言えばいいの? 仕事仲間はもちろん、家族や友達に話すこともできない。医者ともつながれない。当時、閉じていた私は患者会で交流しようとも思えなかった。もう、どこもないじゃないか! って思っていたときに行ったのが占いでした。

――占い師には話せた。

藍原:占い師を前に泣きながら堰(せき)を切ったように言葉が出てきて。そこで一回、言語化できたことで、つらさの正体みたいなものが、ぼんやりながら見えてきたんですね。

――正直言えば、本を拝見しながら「騙されないで!」と思ってしまいました。

藍原:私は占いを肯定も否定もしませんが、ただ、ちょっと高すぎ(笑)。痛い出費でした。でも多分、あのときに占いに行ってなければ言葉にできなかった。自分で望んだ手術で、自分で望んだ治療をして、家族もそばにいてくれるのに、つらいなんて思ってんじゃないよって自分を押し込めたけれど、どうやら、思ってる以上に私はつらいみたいだぞ、と気づくことができた。もちろん、占いをすすめているわけではありませんけどね。

――整骨院で気持ちがほぐれるシーンもありましたね。

藍原:その整骨院は乳がん患者が多いところだったんです。「旦那が何もしてくれない」「病院が4時間待ちだった」って話をすると、「あなたみたいな人多いのよ」って言ってもらえた。
 私は自分から何も言っていないくせに、身近な人に勝手に期待していて、家族が助けてくれるべきとか、友達ならもっとサポートしてくれてもいいのに思っていたんですね。特に夫には、「もっと察して」「わかってよ」、以心伝心みたいなのがあるでしょって。勝手なんですが、そこに共感してもらえて、私だけじゃないと思えたことで、気持ちが楽になったんだと思います。

――やっぱり、共感なんですね。

藍原:言葉にできたのが占いで、共感してもらえたのが整骨院。その後、精神腫瘍科を受診するんですが、ふりかえると、全部つながっていったんだと思います。

◆知ってもらいたい、心の専門家「精神腫瘍科」の存在

――「精神腫瘍科」はがん患者の心のケアをする診療科ですよね。その存在はこの本で初めて知りました。

藍原:精神腫瘍科は今、ほとんどのがん拠点病院にあります。ただ、あまり存在が知られていないんですね。コラムで対談させていただいた大西秀樹先生は、埼玉医科大学国際医療センター包括的がんセンターの精神腫瘍科の教授で、大西先生のところでは、他の課で心のサポートが必要な患者さんがいると紹介してくれるらしいですが、そこまでやってくれる病院ばかりではないですし。

――専門科ができるほど、たくさんの人ががんという病気を抱え、つらい思いをしているということですよね。

藍原:がんになると、うつ病になる人も多いです。通院自体がしんどくなって、がん治療から離れてしまう人もいます。目に見えないところで苦しんでる人は本当にたくさんいて、精神腫瘍科のことは広く知られるといいなと思います。自分のかかっている病院になくても、他の病院の精神腫瘍科にかかることもできます。告知後すぐ、治療方針が決まる前にかかることもできるそうです。

――心の専門家に頼るのも大切ですし、とにかく、「つらい」って、SOSは出していい。

藍原:誰にSOSを発信するのかは、人によって違うと思いますが、とにかくためないことが大事。
 ただ、そういうとき、「あなたのつらさなんて大したことない」って言う人がけっこういるんですね。でも、絶対にその言葉は言わないでと思います。元気そうにしている人が元気だとは限らない、明るそうにしている人が明るいとは限らないですから。

――「あなたなんかより」は、つらさを我慢させる圧力になります。

藍原:コロナ禍の今、このフレーズはよく聞かれますよね。SNSでも、すぐに「医療従事者はもっと大変」「もっと大変な人がいるのに」と言う人がいる。でも、そんな言葉、目にも耳にも入れる必要はありません。確かに医師や看護師は大変な苦労をされていると思います。だけど、あなたのやっていることも大変で、みんなそれぞれ大変なんです。

――「つらいっこ比べ」をして、救われる人は誰もいません。

藍原:人それぞれ、事情や抱えているものは違います。この人、ひょっとしたらつらいかもしれない。そういう想像力をみんなが持つと、社会が……というと話が大きくなり過ぎるかもしれませんが、変わるんじゃないかなと思いますね。

<藍原育子 取材・文/鈴木靖子>

【藍原育子】
編集者・ライター。出版社に勤務後、04年よりフリーランスに。10年に長女を出産。13年に乳がんを患い、右胸の全摘手術を行なう。インプラントによる再建、5年間のホルモン治療を経て、現在経過観察中。近年は医療系の記事を中心に執筆活動を行ない、がん保険契約者向け冊子などの企画・執筆も手掛ける。Twitter:@aihara_ikuko

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  • 去年1月、用があり、知人である女性に電話した。数年ぶりだったので、「お元気そうで」と言ったが、末期癌で自宅療養をしていたのを後で知った。ちょうど1年前のGWに亡くなった。
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  • 言葉を掛けられて傷付くって人は他人に癌であることを告白しなくて良いと思う。ハッキリ言って告白される方もどう反応して良いか分からないし困ってしまう。配慮はお互い様では。 https://mixi.at/a6Ecidb
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