大麻の次にくるのは“フェンタニル” 米国では社会問題化 日本の半グレが「試験的密輸」

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2021年04月13日 16:30  AERA dot.

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写真イメージです(GettyImages)
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 覚醒剤や大麻などの違法薬物がらみの犯罪が後を絶たない。そんななか、米国で問題となっている合成ドラッグが、日本でも広がりを見せている。名称は「フェンタニル」。日本ではあまり聞き慣れない薬だが、ヘロインより強力で依存性が高く、過剰摂取による死亡者も多い。日本では、「半グレ」が新たな資金源として目をつけている。

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「フェンタニルは安いので一般人でも手に入る。実際に街を歩けば売人が話しかけてくる」

 フェンタニルの依存者が急増している米国での様子について、筆者の知人で米国ジョージア州アトランタに住むジャーナリストの男性がそう話した。

 知人の住む地域は治安が良く、日系企業などが多く進出していることでも知られているが、そこですらフェンタニルは出回っているのだ。

「あぶって吸うのが一般的だけど、静脈注射をしている人も多く見かける。フェンタニルを単体で使うとあまりに効果が強くて死に至ることもあるので、コカインやヘロイン、合成アヘンを混ぜて成分を薄めて売っているようだ」

 フェンタニルは、ケシの実を合成させて作られる薬物で、モルヒネのように、ガンなどの病気での慢性の痛みや手術後の痛みの緩和などに使われる。それら鎮痛効果のある麻薬性化合物の総称がオピオイド系薬物と言われている。

 本来の使用方法であれば、依存体質になるなどの危険性は薄れるが、違法薬物として出回れば話は別だ。

 フェンタニルは、オピオイド系のなかでも強力な鎮痛剤として指定されている。日本薬学会によると、薬理作用はモルヒネと同じだが、鎮痛作用は約200倍も強く、毒性も強いという。

 米国では、オピオイド系の過剰摂取による死亡者数も多い。過去の数字だが、米国の疾病管理予防センターの発表では、17年には薬物の過剰摂取で7万人以上が死亡し、そのうちオピオイド系の死亡割合が約7割だった。

 有名人では、16年にミュージシャンのプリンスが、フェンタニルの過剰摂取で死亡、19年には大リーグ投手のタイラー・スキャッグスが遠征先のテキサスで嘔吐(おうと)物を詰まらせて窒息死。その後の解剖で体内からフェンタニルなどが検出された。

 米国では、トランプ大統領(当時)が17年にオピオイド危機として、「公衆衛生上の非常事態宣言」を出す事態に。しかし、その効果については微妙なところだろう。

 直近でも、ケンタッキー州で母親が買ったフェンタニルを子どもが誤飲し、死亡したとして、母親が逮捕されたとCNNが今年3月22日に報じている。

 フェンタニルの問題は米国だけにとどまらない。ユーロポール(欧州警察機構)も数年前から問題視し、ネット上の闇サイト「ダークウェブ」を使った違法薬物取引などの取り締まりを始めた。20年8月にはフェンタニルなどのオピオイド系の薬物や大量のコカイン、ヘロインなど500キロを押収、逮捕者も米国やドイツ、オランダなど世界各国に点在している。

 そして、日本にも、この薬物の名前が出始めている。

 筆者が「フェンタニル」を耳にしたのは、今年に入り、都内を拠点としているある”半グレ”の男に、別の薬物についての取材をしている時だった。

 この半グレの男はフェンタニルを、「試験的に密輸している」と話した。

 男によると、薬物の値段設定は、覚醒剤が1グラム4万円、コカインは同2万円なのに対し、フェンタニルは同1万円という。効き目が強力な割には、他と比べて安い印象だ。

 その理由について、男はこう説明する。

「まだどんな薬物か知られていないので、仕入れ値も安い。だから値段は安く設定している」

 今後、この薬物が広がりをみせるかどうかについてはこう語った。

「大麻の次にくる(はやる)と思う。ただ、まだ怖い。どんな混ざりモノになっているかわからないから、もし人が死んだりしたら当局も取り締まりに動くだろうし」

 当然、フェンタニルは日本でも麻薬指定されており、発覚すれば麻薬及び向精神薬取締法違反である。

 筆者はこの情報をもとに、日本で麻薬を取り締まる厚生労働省麻薬取締部、通称「マトリ」の幹部に接触。現状を説明し、話を聞くことができた。

 マトリ幹部は筆者の取材に対し、

「マトリとして当然認識はしているが、残念ながら実態の把握までには至っていない。健康被害が出て社会問題化するようなら動かざるを得ないが、現状では大麻事案と覚醒剤の大型密輸事件で人員を割けない」

 と非公式だが会話のなかで明らかにした。

 米国で流行している違法薬物は日本でもそのうち出回る可能性は高い。

 現在、日本で若者を中心に、大麻がものすごい勢いで広がっている。

 20年の犯罪白書によると、少年の薬物非行のなかで大麻の検挙人数は14年から6年連続で増加。驚くことに20年は前年比41%増という数字になっている。

 大麻が、さらに依存性の高い薬物への入り口になりやすい「ゲートウェードラッグ」になっている。

 違法薬物のなかで、頂点と言われているのはヘロインで、別名”悪魔の女王“と呼ばれている。それより強い薬物とされるフェンタニルが“デザイナーズドラッグ”という軽い呼び名で扱われており、その犯罪性や依存性、危険性などの深刻さが隠されてしまいがちだ。

 米国で大麻がゲートウェードラッグだったのは過去の話で、ここ数年は鎮痛剤になっている。そのうち日本でも米国と同じように、鎮静剤が大麻にとってかわる日がくるのかもしれない。そうならないことを願いたい。
(花田庚彦)

※週刊朝日オンライン限定記事

このニュースに関するつぶやき

  • 何を今更。結構前から海外じゃフェンタニルで大騒ぎしてたっての。去年、一昨年辺りから日本でも出回ってんの見かけた。フェンタニルに限らずオピオイドは良くねえ。
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  • その安い麻薬が蔓延して酷いことになってるのはロシアだと思ったがなぁ。そういうのが蔓延して日本人がエライ目に遭っても構わないって思う半グレでしょ?
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